メディカルKit Rを比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- 東京海上日動あんしん生命
- 名称:
- メディカルKit R
- 加入年齢:
- 0~85歳
- 保障期間:
- 終身
- 保障内容:
- 入院・手術等で給付金
- 特徴:
- 使わなかった保険料が戻ってくる
メディカルKit R(メディカルキットアール)は、東京海上日動あんしん生命が2013年1月から募集・販売している保険です。今では珍しくありませんが、保険料が戻ってくるタイプの保険の先駆けです。販売開始から10年以上が経過しましたが、保障内容を改訂しつつ現在も販売を継続しています。
また、東京海上日動あんしん生命にはメディカルKit NEOという医療保険もありますが、そちらとは微妙に保障内容が異なるため注意が必要です。それでは以下で保障内容・保険料・評判等を解説し、他社の医療保険と比較していきます。
保障内容
この保険は入院給付金・手術給付金・放射線治療給付金・保険料払込免除・健康還付特則が主契約となり、他の保障はオプション(特約)で付加できます。入院給付金は入院時に入院日数に応じて受け取れ、手術・放射線治療金は手術・放射線治療をすると受け取れます。
また、病気やケガで身体障害状態になると保険料の払い込みが免除されます。特定疾病保険料払込免除特則を付けると、三大疾病になった時にも保険料の支払いが免除されます。この保険の最大の特徴である健康還付特則は、所定の年齢まで生存していると支払った保険料分の健康還付給付金が受け取れるという保障です。所定の年齢は契約したときの年齢が0~40歳なら60歳か70歳から選択でき、41~50歳なら70歳になります。
保険料免除特則以外に10以上の特約が用意されています。その中で主契約の保障を上乗せする特約は3つあり、入院一時給付金特約を付けると、主契約の入院給付金とは別に入院一時金が入院すると受け取れます。3大疾病入院支払日数無制限特約を付けると、三大疾病での入院は給付日数が無制限(他の病気は60日まで)となります。手術給付金追加払特約を付けると、手術給付金が上乗せされます。
その他に通院特約・先進医療特約・がんの特約(4つ)・特定治療支援特約・女性疾病特約・重度5疾病障害重度介護特約・特定損傷特約・死亡特約があります。通院特約は入院後に通院すると通院日数に応じて給付金が受け取れ、先進医療特約は先進医療を受けると2000万円を限度に給付金が受け取れます。
4つのがん関連の特約のうち、がん診断特約は上皮内新生物ないしは悪性新生物と診断されると一時金が受け取れます。悪性新生物初回診断特約は上皮内新生物は保障の対象外で、悪性新生物と診断された場合に限り一時金が受け取れます。抗がん剤治療特約は抗がん剤治療を受けた月ごとに給付金が受け取れ、がん特定治療保障特約はがん治療で患者申出療養・自由診療を受けると1億円を限度に費用が保障されます。
特定治療支援特約は生活習慣病の治療をすると一時金が受け取れ、女性疾病特約は女性特有の疾病で入院すると給付金が上乗せされます。5疾病(三大疾病+肝硬変・慢性腎不全)で就業不能・要介護状態・障害状態になると、給付金が毎月受け取れる重度5疾病・障害・重度介護保障特約もあります。死亡時に一時金が受け取れる死亡保障特約、不慮の事故で骨折・脱臼すると一時金が受け取れる特定損傷一時金特約も付けられます。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は性別・年齢・各給付金額・特約の有無で変動します。年齢は若いほど保険料が安くなり、入院給付金額を5000円から上げるほど保険料は高くなります。さらに付加する特約が多くなるほど保険料が高くなり、各特約で受け取る一時金の額が高くなるほど保険料も高くなります。
次に保険料は他社より安いのか高いのか、下図で他社の医療保険と一覧表で比較しました。基本的に入院給付金は1万円(診断一時金なら10万円)で、保険料は一部の保険を除いて終身払いで比較しました。
この保険の保険料は他社と比較して高く、平均額の2倍で最安値圏の保険の3倍近い額です。とはいえ同じ保険料が戻ってくる楽天保険の戻るんですと比べると似たような額で、40歳なら東京海上の方が安いため保険料は妥当か少し安いともいえます。
しかし、保険料が戻ってくるにしても、30歳で毎月6550円、40歳で毎月8240円の保険料は結構な負担感があります。さらに健康還付給付金を受け取った後に保障を継続するには、同じ額の保険料を支払い続ける必要があります。メリットを記述した後に、この点についてデメリットの箇所で記述していきます。
メリット
この保険のメリットは、まずは支払った保険料が戻ってくる(健康還付給付金が受け取れる)点が挙げられます。60歳ないしは70歳で健康還付給付金を受け取れば、契約から健康還付給付金を受け取るまでは実質無料で保障があったことになります。
仮に保険料を支払っている間に入院給付金等を受け取っても、それを差し引いた額の健康還付給付金が受け取れるため実質無料という点は変わりません。健康還付給付金ではなく他社の健康祝金という形式だと、3~5年間は入院給付金を受け取らないと祝い金が受け取れ、入院給付金を受け取ると祝い金は受け取れないことがあります。
さらに他社の保険料が戻ってくるタイプの保険では、保険料払込免除特約が付けられないことがあります。この保険では特定疾病保険料払込免除特則を付ければ、初めて悪性新生物と診断された時、心疾患・脳血管疾患で手術・入院をすると以後の保険料の支払いが免除されます。
その他の特約のラインナップが充実している点もメリットです。多くの特約は他社にもありますが、がん特定治療保障特約は特筆すべき保障です。この特約を付けると、治療費が全額自己負担となる患者申出療養・自由診療の治療費が1億円まで保障されます。他社には先進医療と患者申出療養を2000万円まで保障する保険が多い中で、自由診療までカバーして金額が1億円と大きいです。
三大疾病と生活習慣病(肝硬変・慢性腎不全・糖尿病)になると一時金が受け取れる特定治療支援特約、5疾病・介護・障害状態で就業不能になると月額5~15万円を毎月受け取れる重度5疾病障害介護保障特約も、他社では付加できないことが多い特約です。
デメリット・弱点・落とし穴
この保険のデメリットには、まずは対面申込である点が挙げられます。東京海上日動あんしん生命にはネットから申し込める保険もありますが、この保険はネットではなく資料請求から、対面ないしは郵送?の煩わしさがあります。他の保険や勧誘を受けて余計な出費が増える可能性もあります。
また、メリットで既述した健康還付給付金にもデメリットが2つあります。その1つは健康還付給付金に含まれるのは主契約部分の保険料だけという点です。特約部分の保険料は戻ってこないため、特約を数多く付ければ支払った保険料の合計額と健康還付給付金の差額が大きくなります。
もう1つは健康還付給付金を受け取った後も保障を継続するには保険料を支払い続ける点です。健康還付給付金を受け取った時点で解約すれば保障は実質無料ですが、その後は保険料を支払い続けるか他社の保険に加入する必要があります。
この保険に30歳男性(入院日額5000円)で保険料は月額2890円で、60歳時に138万円の健康還付給付金が受け取れます。しかし、死亡する85歳まで保障を継続するなら60~85歳までの25年間で、86.7万円(2890円×12ヶ月×25年)を支払います。ネオファースト生命で30歳から85歳まで加入すると、63.2万円(959円×12月×55年)で済みます。ちなみにメットライフ生命のリターンボーナスつき終身医療保険だと、保障は保険料無しで継続されます。
また、いくつかの保障は僅かに他社と比べて劣るのも見逃せません。入院給付金の限度日数を無制限化するのは三大疾病入院支払日数無制限特約で、他社では八大疾病まで入院日数を無制限化する保険があります。さらに抗がん剤治療以外は一時金で、治療を受けた月ごとに給付金が受け取れるといった保障はありません。
また、保険料払込免除特約は上皮内新生物が保障の対象外で、心疾患・脳血管疾患は手術か20日以上の入院が条件となります。他社では手術か1日以上の入院を条件とする保険があります。所定の手術に該当せず1週間の入院で退院すると保険料は免除されません。
評判・苦情
東京海上あんしん生命の2023年の決算資料によると、個人向け保険の新契約数は36.4万件で前年度の41.5万件から約13%の減少と不調でした。この保険が含まれる入院保障の保険の保有契約高も前年度から微減しているため、申込数・契約数等からすると評判は少し悪いです。
契約数でいうと保険市場の医療保険の申込数ランキング2024でも、メディカルKit Rは25の保険の中で8位でした。メディカルKit NEOの12位より順位は上ですが、何とも中途半端な順位です。価格.comの医療保険の資料請求ランキングでは、27の保険の中で27位と最下位(同率最下位の他の保険あり)です。価格.comでは楽天生命の戻るんですよりも順位は下で、この保険は保険料を抑えたい人からの人気は無いと考えられます。
また、生命保険協会の苦情数のデータでは、東京海上日動あんしん生命全体に寄せられた苦情数は8215件(2023年度上半期実績)でした。総顧客数の384万件で割った苦情率は0.2%で、契約者1000人のうち2件の苦情が発生している計算です。他社の苦情率は0.1~0.3%台が多いため、苦情面で考えると評判は普通です。
さらに調査会社のJ.D.パワーの「2024年 生命保険契約満足度調査(保険代理店部門)」では、東京海上日動あんしん生命は17社中4位と上位でした。ダイレクト部門では8社中6位まで順位を下げますが、メディカルKit Rは基本は対面か郵送での契約となるため対面での満足度の高さのみ気にすれば良いでしょう。
また、「オリコン顧客満足度 医療保険ランキング2024」では東京海上日動あんしん生命は24社中9位と中間の順位でした。この調査の評価項目は加入手続き・商品内容・保険料・アフターフォロー・受取額と支払スピードですが、商品内容が6位のため比較的評価されています。加入手続きの10位、保険料の9位も健闘していました。その一方でアフターフォロー・受取額とスピードは10位以下と契約者からの不満が見て取れます。
個別の口コミではポジティブな意見がある一方で、「メール等で質問に対応して欲しい」「年齢が上昇すると保険料が高い」「担当者間での情報共有がされてない」等の意見がありました。アフターフォローは10位以下だけあって、対応に不満が見られますが、保険金の支払いスピードへの不満はあまり見られません。
東京海上日動あんしん生命への評判は普通そうですが、メディカルKit R自体への専門家からの評価は低いです。30人の専門家(ファイナンシャルプランナー)が調査対象の「FPが選んだオリコン終身型医療保険 ランキング2024」では、この保険はランキング外でした。最後にランキングに出た2021年でも、16つの保険の中で12位と微妙な順位でした。
以上のデータから考えると東京海上日動あんしん生命の評判は普通か少し良さそうですが、メディカルKitRの評判は少し悪そうです。あんしん生命の評判については苦情面でも各社の顧客満足度調査でも平均以上で、特別に悪いことはないでしょう。保険自体の評判については契約数が減少しており、各社での資料請求の数もトップクラスではありません。健康還付給付金があるわりに保険料重視の人からあまり人気が無いのも、デメリットが見透かされている可能性を考えさせられます。
総合評価・おすすめか?
結論としては、メディカルKitRは微妙な保険です。保障面でメリットもあり健康還付給付金も魅力かもしれませんが、それよりも注意点が多いのが気がかりです。しっかりと注意点とデメリットを把握した上で納得したなら、改めて検討した方が良いでしょう。
他社の保険であれば、総合的に保障が充実した保険が欲しい人なら、アフラック・チューリッヒあたりの医療保険を検討すべきでしょう。保険料を重視するなら、メットライフ生命・ネオファースト生命あたりの医療保険も候補になります。