入院パスポートを比較・評価

損保ジャパン 入院パスポート
オススメ度:
2
保険会社:
損保ジャパン
名称:
入院パスポート
加入年齢:
18~89歳
保障期間:
1年間
保障内容:
入院・手術等で給付金
特徴:
スマホでピタッと充実保険

入院パスポートは損保ジャパンが2021年6月から募集・販売している保険です。スマホでピタッと充実保険と謳っており、公式HPの他にチラシ・パンフレットの2次元コードから5分で加入が可能となっています。保険金の請求も書類を画像にして送信すれば最短30分で受け取れるのをウリにしています。

また、損保ジャパンは損害保険会社ですが、医療保険は第三分野の保険のため損害保険会社でも販売できます。それでは以下で保障内容・保険料・評判等を解説し、他社の医療保険と比較していきます。

保障内容

この保険には「これだけで安心タイプ」と「組み合わせて安心タイプ」があり、前者は他社の医療保険に加入していない人向け、後者は既に他社の医療保険に加入している人向けです。さて、これだけ安心タイプの基本補償は入院治療費要保険金・入院準備保険金・入院時選べるサポート特約の3つです。

入院治療費用保険金の補償内容の前に、病院での治療費と診療報酬点数の仕組みを理解しておく必要があります。通常、病院で治療を受けて診療報酬点数が1万点の場合、1点あたり10円のため10万円が治療費となります。保険証を持っていれば、公的医療保険により治療費10万円のうち3割が自己負担となり約3.3万円を窓口で支払うことになります。

その上で入院治療費用保険金は入院した際に、診療報酬点数に1~3円を掛けた額が受け取れます。1型を選ぶと1円、2型なら2円、3型なら3円となります。前述の例でいえば、3.3万円の自己負担のうち1型なら1.1万円が保険金として受け取れ、2型なら2.2万円、3型なら自己負担の全額である3.3万円が保険金として受け取れます。さらに入院中の食事療養費と生活療養負担額も保険金に合算されます。

入院パスポートの保障内容(出典:損保ジャパン 入院パスポート電子パンフレット2021年7月版)

入院準備保険金は入院をし場合または入院の予定が確定した時点で5万円が保険金として受け取れます。入院時選べるサポート特約は入院開始日から退院日以降30日目までに負担したサポート費用が、10万円を限度に受け取れます。サポート費用にはダスキン等の買い物代行・洗濯代行・家事代行の費用に加え、家族駆けつけ費用・ペット預入費用・出張理容サービスの費用等が該当します。

また、オプションとして入院時室料差額特約と先進医療・患者申出療養費用特約が付加できます。入院時室料差額特約を付けると、入院中に個室等を理容した場合の差額ベッド代が1日あたり1万円ないしは2万円を限度に補償されます。先進医療・患者申出療養費用特約は先進医療・患者申出療養をすると、自己負担となる技術料が限度額なしで補償されます。

組み合わせて安心タイプは、入院治療費用保険金に1日あたりの自己負担額が設定できます。今加入している保険が入院日額1万円なら、自己負担額を1万円に設定すれば入院治療費用保険金から1万円が差し引かれた額が保険金として受け取れます。

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保険料を他社と比較

この保険の保険料は年齢・タイプの選択・1~3型の選択・オプションの有無で変動します。基本的に年齢が高くなるほど保険料は高くなり、「これだけで安心タイプ」と「組み合わせて安心タイプ」では前者の方が保険料が高くなります。1型と3型では3型の方が保険料は高く、オプションを付けるほど保険料は高くなります。

入院パスポートの保険料一覧(出典:損保ジャパン 入院パスポート電子パンフレット2021年7月版)

次に保険料は他社より安いのか高いのか、下図で他社の医療保険と一覧表で比較しました。基本的に入院給付金は1万円(診断一時金なら10万円)で、保険料は一部の保険を除いて終身払いで比較しました。

終身医療保険の20歳と30歳と40歳の保険料の比較一覧表(アクサ生命・JA共済・メットライフ・ソニー損保・大同生命・チューリッヒ・ネオファースト・第一生命・楽天生命・フコクしんらい生命・SBI生命・メディケア・損保ジャパン・イオンアリアンツ・アフラック・アクサのネット完結・オリックス生命・なないろ生命・FWD生命・マニュライフ生命・はなさく生命・明治安田生命・au・ライフネット生命・日本生命・富国生命・東京海上日動あんしん生命・太陽生命・全労済(こくみん共済Cop)・SOMPOひまわり生命・コープ共済・三井住友海上あいおい生命・大樹生命・住友生命・ニッセイウェルス生命)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この保険の保険料は他社と比較して安い部類に入ります。この保険より安い保険にはメットライフ・SBI損保がありますが、その差は少額なため保険料は最安値圏にあるのは間違いありません。しかし、この保険料の安さには落とし穴があります。その点についてはデメリットの箇所で後述するとして、その前にメリットについて記述していきます。

メリット

この保険のメリットは、まずは過不足の無い給付金が受け取れる点にあります。他社の一般的な医療保険は給付金を受け取っても不足するケースも十分過ぎるケースもあります。前者であれば保険があるにも関わらず貯金の持ち出しが発生し、後者であれば保険料が無駄(補償が過大だった)ことになります。

この保険なら治療費に加えて入院準備保険金とサポート費用で、ほぼ全ての入院に関する支出を賄うことが可能です。サポート費用にはダスキンの買い物代行・家事と介護代行等に加えて、病院への家族の駆けつけ費用、ペットシッターサービスの費用、家族のための配食サービス、さらに自宅の改修費用まで含まれます。

さらに利用するかどうかは別として、差額ベッド代をカバーできる入院時室料差額特約もあります。先進医療・患者申出療養特約は先進医療・患者申出療養の技術料が無制限で補償されます。それも大半の他社の保険では先進医療・患者申出療養特約は限度額2000万円のところ、この保険は限度額が無制限と大盤振る舞いです。

また、組み合わせて安心タイプがあるのもメリットです。他社の医療保険に加入中の人は他社の保険を生かしたままで、この保険の補償内容も享受できます。前述したように保険料は安めのため、他社の保険と両立させることも不可能ではありません。

組み合わせ安心タイプの仕組み(出典:損保ジャパン 入院パスポート電子パンフレット2021年7月版)

デメリット・弱点・落とし穴

この保険のデメリットには、まずは保険期間が1年である点が挙げられます。保険料比較の箇所で既述した保険料の安さの裏には、保険期間1年という落とし穴があるのです。保険期間1年の保険は更新が毎年あり、保険料が年齢に応じて毎年上昇します。保険料は30歳では月額2290円という安さでも、45歳以上から上昇し50歳以降は加速度的に上昇します。60歳で6530円、69歳で13560円まで上昇します。

入院パスポートの保険料一覧(出典:損保ジャパン 入院パスポート電子パンフレット2021年7月版)

契約できる年齢は69歳までですが、更新は89歳まで可能です。しかし、このペースで保険料が上昇していけば80歳になる頃には保険料は2万円台に突入します。年金生活だと維持するのが難しい保険料で、定年退職後に再就職したとしても80歳以降も働くのは厳しいでしょう。

さらに保障面では入院のみが補償される点もデメリットです。入院には日帰り入院も含まれますが、日帰り入院にも該当しない外来手術は補償されず、退院後に薬剤治療で通院しても治療費は補償されません。将来的には今以上に外来が増加すると考えると、あまり意味を成さない保険になる可能性があります。

その他に、先進医療特約・患者申出療養は補償されても自由診療が補償外となっています。他社の中では自由診療なら給付金が倍になったり、東京海上あんしん生命のように自由診療は1億円まで保障する保険があります。先進医療・患者申出療養と同様に、自由診療も自己負担が数百万円になるケースもあります。

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評判・苦情

損保ジャパンの2023年の決算資料によると、保険会社における売上を示す正味収入保険料は全体としては微減したものの、大半の契約が自動車保険で減少の主因は火災保険です。この保険を含む第三分野の部分は全体の中では僅かな金額ですが、それでも前年度から3.9%増でした。そのため契約数等からすると評判は悪くない可能性があります。

しかし、契約数でいうと保険市場の医療保険の申込数ランキング2024では、入院パスポートは26の保険の中で26位でした。価格.comの医療保険の資料請求ランキングでも、27の保険の中で25位と下位に沈んでいます。インターネットを軸に検討する人や保険料を抑えたい人からは人気が無いようです。

また、日本損害保険協会の苦情数のデータでは、損保ジャパン全体に寄せられた苦情数は9406件(2024年度第一四半期実績)でした。最も苦情数が多いのは契約の管理に関する苦情で、次いで保険金に関する苦情でした。前者は契約の変更・解約手続きの方法が分かりにくかったり手続きが完了するまで時間がかかるといった苦情が含まれます。後者は保険金の手続きの誤りや遅延といった苦情が含まれます。

損保ジャパンに寄せられた苦情・不満内容の概要(出典:損保ジャパン公式HP「2024年度第二四半期苦情受付件数の内訳」)

苦情以外では、「オリコン顧客満足度 医療保険ランキング2024」では損保ジャパンは24社中24位以下でした。この調査の評価項目は加入手続き・商品内容・保険料・アフターフォロー・受取額と支払スピードですが、どの項目でも評価は低いようで不安のある結果でした。

個別の口コミではポジティブな意見がある一方で、「給付金で必要となる書類が分かりにくい」「公式HPの保障内容が分かりにくい」「保険料のわりに保障内容が薄い」「代理店と保険会社の連携がとれてない」等の意見がありました。

以上のデータから考えると損保ジャパンの評判は普通そうですが、入院パスポートの評判は少し悪そうです。申込や資料請求の数は一応は一定数あるようですが、ランキングでは下位に沈んでおり多くの人から選ばれてない保険といえます。全体の数字で「その他の保険」が伸びているのも、この保険以外の保険が要因である可能性もありそうです。

総合評価・おすすめか?

結論としては、入院パスポートは微妙な保険です。保障内容は評価できる点もありますが、いかんせん保険料に不安を抱えています。50歳・60歳までの期間限定の保険なら一応は検討の余地がありますが、それでも入院の保障だけでいいのかという疑問符が付きます。

他社の保険も検討したい人で総合的に保障が充実した保険が欲しいなら、アフラック・チューリッヒあたりの医療保険を検討すべきでしょう。この保険以外で保険料を重視するなら、メットライフ・ネオファースト生命あたりの医療保険も候補になります。