新ながいきくんを比較・評価

- オススメ度:
- 保険会社:
- かんぽ生命
- 名称:
- 新ながいきくん
- 加入年齢:
- 15~85歳
- 保障期間:
- 終身
- 保障内容:
- 死亡で保険金
- 特徴:
- ずっとあなたの支えになる
新ながいきくんはかんぽ生命が募集・販売している保険です。販売開始から10年以上の年数が経過していますが、2017年には保険料率の改定、低解約返戻金型の登場や医療特約の付加などの変更がありました。
また、この保険には定額型・ばらんす型2倍・ばらんす型5倍・おたのしみ型があります。今回は保障内容が似ている定額型・ばらんす型2倍・ばらんす型5倍について1ページにまとめて記述していきます。それでは以下で保障内容・保険料・評判等を解説し、他社の終身保険と比較していきます。
保障内容
この保険には保障内容が異なる型が複数ありますが、その中で最もシンプルなのが定額型です。定額型は保険料を支払い死亡・高度障害となると死亡保険金が受け取れますが、死亡保険金の額は契約時から死亡するまで一定額です。ばらんす型2倍は基本的な仕組みは同じですが、保険料を支払っている最中(保険料払込期間中)か否かで死亡保険金の額が異なります。
ばらんす型2倍の死亡保険金の額は、保険料払込期間中は保険料払込完了後の2倍になります。イメージとしては保険料を支払っている現役時のみ死亡保険金は大きめで、退職後は死亡保険金は半額になるといった具合です。ばらんす型5倍だと保険料払込期間前後で5倍の差があります。おたのしみ型は他のタイプと異なり、生存保険金を受け取る度に死亡保険金が減る仕組みになっています。

また、どの型でも死亡する前に解約すると解約返戻金が受け取れます。解約返戻金の額は解約する時期によって異なり、最高でも支払った保険料総額と同額程度になります。さらに低解約返戻金型にすると、保険料が少し安くなる代わりに、保険料を支払い終える前に解約すると解約返戻金の額は保険料総額の70%程度になります。
その他に特約として、災害特約・医療特約その日からプラス・先進医療特約があります。災害特約は不慮の事故等で死亡すると死亡保険金が上乗せされ、身体障害状態になると傷害保険金が受け取れます。医療特約その日からプラスはケガ・病気で入院・手術・放射線治療をすると保険金が受け取れます。先進医療特約は先進医療を受けた時に最高300万円の保険金が受け取れます。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は、保障タイプ(型)・性別・年齢・保険金額・特約の有無等で変動します。保障タイプは同じ死亡保険金の額・保険料払込期間なら、おたのしみ型の保険料が最も高く、次いで定額型の保険料が高いです。ばらんす型2倍・ばらんす型5倍は保険料が安めで、ばらんす型5倍の保険料は定額型の半額以下です。また、契約時の年齢が上昇するほど保険料が上昇し、付ける特約を増やすほどに保険料は上昇します。
次に保険料は他社より安いのか高いのか、下図で返戻率にして他社の終身保険と一覧表で比較しました。基本的に保険金額は1000万、保険料払込期間は65歳で30歳・40歳・50歳で契約した場合の返戻率を比較しました。

この保険の返戻率を他社と比較すると、どの保障タイプでも他社よりも低いのが分かります。返戻率が100%を超えるのが定額型(かつ低解約返戻金型)のみで、それも30歳で契約したケースのみです。定額型でも30歳未満なら返戻率は100%超ですが、それ以上の年齢なら100%を下回りそうです。定額型以外のタイプは返戻率が100%を下回っていますが、これは保険料払込完了後の死亡保険金が減額された段階で死亡した場合の返戻率だからです。
もちろん保険料払込期間中に死亡すれば返戻率は上昇しますが、それは他社も同じです。また、短期間のみの死亡保障なら定期保険(+終身保険)の組み合わせと比べる必要があるでしょう。この保険としては返戻率・保険料以外でメリットが欲しいところです。続いてメリットを記述していきます。
メリット
この保険のメリットは、まずは複数の保障タイプが選択できる点が挙げられます。他社の大半の終身保険が選択の余地が無い中で、この保険なら現役時と退職後といった具合に死亡保険金に差が付けられます。ばらんす型5倍は定期保険に近いものの、定期保険と異なり完全に死亡保障が消滅しないのもポイントです。
また、医療保障の特約(その日からプラス)があるのもメリットです。医療保障の特約も他社では付けられないケースが多く、付けられるだけでメリットといえます。さらに医療保障はケガのみ保障するタイプと、病気・ケガの両方を保障するタイプがあります。後者の方がベターなものの特約分の保険料が少し高いため、前者だけでも付ける価値はあります。高齢になると転倒しただけで骨折して入院というケースも多いからです。

それも入院保障は入院日数に応じて受け取れ、入院日数が1日でも5日分の保険金が上乗せされ6日分の入院保険金が受け取れます。昨今の入院日数短期化+通院治療の時流に乗った保障です。手術保障も従来は外来での手術は保障の対象外だったのが現在は対象となり手術保険金が受け取れます。

ちなみに、かんぽ生命は郵便局と併設されているケースが多いため、他社の保険会社と比べて圧倒的に契約までに直接相談しやすいです。居住地が都市部ではなくとも郵便局はあるため、すぐに地元の郵便局で相談できるのは人によってはメリットでしょう。
デメリット・弱点・落とし穴
この保険のデメリットには、まずは返戻率が他社よりも低い点が挙げられます。定額型は30歳で契約(65歳払込完了)してギリギリで返戻率が100%を超えますが、その他の型は30歳で契約しても返戻率は100%を超えません。その他の型で返戻率100%を超えるには、保険料を支払っている最中に死亡して死亡保険金を受け取るしかありません。
前述の保険料の比較では、この保険は低解約返戻金型での保険料でしたが、通常の解約返戻金型にすると返戻率は一段と下落します。また、低解約返戻金型を選んだ場合、通常よりも解約返戻金の額は抑制されており、保険料払込期間中での解約は保険料総額の70%程度になる点に注意が必要です。
メリットで既述した医療特約も本家の医療保険と比べると見劣りします。あるのは入院・手術・放射線治療の保障だけで、退院後の通院治療(抗がん剤による治療等)に対する保障がありません。先進医療特約が付けられるのも悪くはありませんが、保障される額が300万円までで通常の医療保険の2000万円の保障より見劣りします。さらに保険料は30歳・基準保険金額300万円で8010円と非常に高いです。

基準保険金額300万円というと手厚い保障に見えますが、大した保障ではありません。入院保険金は1日あたり基準保険金額の1.5/1000のため、入院1日につき4500円(=300万円÷1000×1.5)です。手術保険金は入院日額の20倍のため9万円(外来手術なら4.5万円)です。これなら終身保険に医療特約を付けずに他社の医療保険に加入した方が、はるかに安い保険料で手厚い保障が得られます。
また、店舗数が多いため店頭で契約しやすい一方で、ネットで申込・契約は完結できず最低でも書類のやり取りが必要となります。スタンダードな流れとしては、まずは資料請求して店頭またはオンラインまたは自宅で担当者と相談して、その後に書類を記入して保険引受の判断があり契約となります。一昔前のスタイルが今でも続いているため、保険を検討し始めてから契約までに相応の時間と手間を要するでしょう。
評判・苦情
かんぽ生命の2024年の決算資料によると、個人向け保険の新契約数は62.8万件で前年度の31.4万件から倍増していました。前年度も前々年度からほぼ倍増しており、ここ数年は好調なのが分かります。その中で新ながいきくん(終身保険)の新契約数も好調で、定額型は1.5万件から2.5万件に増加、倍型は2.5万件から4.7万件に増加していました。申込数・新契約数からすると評判は良さそうです。

さらに倍型が新契約数の半数以上を占めている点も見逃せません。多くの人が2倍か5倍型を選択して、定期保険に近い終身保険として契約していると考えられます。また、返戻率を考えれば低解約返戻金型の方が得ですが、解約を見込んでいるのか通常の解約返戻金がある方を選んでいるようです。
また、生命保険協会の苦情数のデータでは、かんぽ生命全体に寄せられた苦情数は1.8万件(2024年度上半期実績)でした。総顧客数の818万件で割った苦情率は0.22%で、契約者1000人のうち2.2件の苦情が発生している計算です。他社の苦情率は0.1~0.3%台が多いため、苦情面で考えると評判は普通です。
さらに調査会社のJ.D.パワーの「2024年 生命保険契約満足度調査(保険会社営業職員部門)」では、かんぽ生命は14社中8位と中間の順位でした。保険代理店部門では順位を下げて17社中13位ですが、営業職員部門と同様に平均に近い数字です。かつてのようにかんぽ生命がダントツで万年最下位という状況ではなく、不正営業等が改善され悪評は少しは減ってきているようです。この調査は手続き・顧客対応・商品提供・保険料が評価項目です。


ただし、「オリコン顧客満足度 死亡保険ランキング2025」ではかんぽ生命は27社中18位と下位に沈んでいます。この調査の評価項目は加入手続き・商品内容・保険料・アフターフォロー・です。個別項目でのランキングでは全ての項目で10位以下でした。とはいえ、こちらも万年最下位からは脱出しているため改善傾向にあるのは間違いありません。
個別の口コミではポジティブな意見がある一方で、「担当者が転勤しても連絡がない」「メールではなく電話での受け答え・連絡が多い」「医療特約の保障内容が他社に劣る」「手続きがスマホ・タブレットのため高齢者は手間取る」等の意見がありました。手続き・保障内容・アフターフォローと満遍なく不満が見られました。
また、オリコンでの新ながいきくん自体の専門家からの評価は低いです。30人の専門家(ファイナンシャルプランナー)が調査対象の「FPが選んだオリコン終身型生命保険 ランキング2025」では、新ながいきくんはランク外でした。この保険がランクインしたのは2018年が最後で、その時の順位も最下位と散々な結果でした。

以上のデータから考えると、かんぽ生命の評判は普通か少し悪そうですが、新ながいきくんの評判は悪くはなさそうです。かんぽ生命の評判についてはJDパワーの調査では普通に近く、オリコンでも下位とはいえ最下位ではありません。そのため全体でみれば評判は普通か悪くても少しだけという程度でしょう。新ながいきくん自体の評判は新契約数が好調なため悪くなさそうですが、営業担当者が奮闘して数字を上げているだけという可能性も否定はできません。現に専門家からの評価が低くなっており不安感は否めません。
総合評価・おすすめか?
結論としては、新ながいきくんはイマイチな保険です。他社と比べて保険料・返戻率は低く、保障面でも物足りなさがあるからです。ただ、現役時だけ保障が手厚い終身保険が欲しい人なら、一応は検討の余地があるかもしれません。それでも定期保険と終身保険を組み合わせるケース、収入保障保険と終身保険を組み合わせるケースと保障内容・保険料等を比較した方が良いでしょう。
この保険以外で他社の保険も検討したい人は、返戻率を重視するならオリックス生命や住友生命が候補になります。保障も重視するならソニー生命やSOMPOひまわり生命あたりの終身保険も検討すると良いでしょう。