なないろがん治療保険極を比較・評価

- オススメ度:
- 保険会社:
- なないろ生命
- 名称:
- なないろがん治療保険極(きわみ)
- 加入年齢:
- 0~80歳
- 保障期間:
- 終身
- 保障内容:
- がん治療等で給付金
- 特徴:
- ムダなく治療もあきらめない保険
なないろがん治療保険極は、なないろ生命が2022年5月から募集・販売しているがん保険です。2021年から販売していたがん治療保険をバージョンアップした保険で、自由診療・先進医療・患者申出療養の保障を新設し、保険料も改定して下げました。
なないろ生命にはがん一時金保険もありますが、この保険とは保障内容等は異なるため注意が必要です。それでは以下で保障内容・保険料・評判等を解説し、他社のがん保険と比較していきます。
保障内容
この保険は基本保障(主契約)が1型と2型に分かれ、型によって給付金が受け取れる治療方法が異なります。1型だと抗がん剤・ホルモン剤・自由診療の抗がん剤とホルモン剤の治療をすると給付金が受け取れます。これらに加えて2型だと手術・入院・緩和ケアでも給付金が受け取れます。

この保険の給付金は、他社のように治療を受けた月に定額で受け取る形式ではありません。がん治療サポート給付金の額は、治療を受けた月の診療報酬点数×3円が月額の支払限度額内で受け取れます。診療報酬点数×3円というのは窓口で自己負担となる3割に相当する額で、つまり窓口で負担した額が給付金として受け取れます。月額の支払限度額は10~30万円まで選択でき、10万円でも高額療養費制度(メリットの箇所で後述)を利用する前提なら十分です。
自由診療の抗がん剤で治療すると薬剤費は3割負担ではなくなるため、この保険では1ヶ月の支払限度額の2倍の額が受け取れます。限度額を10万円にした場合は20万円が受け取れます。さらに治療費とは別に見舞金として1ヶ月の支払限度額の5%が、がん治療見舞金として受け取れます。支払限度額が10万円なら5000円が受け取れます。
オプションには保険料払込免除特約・がん診断一時金・がん先進医療患者申出療養特約・がん差額ベッド給付金があります。保険料払込免除は、初めて上皮内新生物を含むがんと診断されると保険料が免除されます。がん診断一時金は上皮内新生物を含むがんと診断されると、20~500万円を無制限(年1回が限度)で受け取れます。
がん先進医療・患者申出療養特約は給付金と見舞金で構成されています。給付金は先進医療か患者申出療養でかかった技術料と同額を2000万円まで受け取れます。見舞金は技術用の10%相当額が受け取れ、交通費や家族の宿泊費等に充てられます。がん差額ベッド給付金は差額ベッド代が発生すると、その額と同額が1日あたり1万円か3万円を上限に受け取れます。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は性別・年齢・1型か2型か給付金の額・特約の有無によって変動します。2型・治療サポート給付金10万円・保険料払込免除あり・先進医療患者申出療養ありだと、30歳男性の保険料は月額961円となります。40歳男性でも月額1371円、50歳でも月額2267円です。給付金の額を20万円にしても保険料は倍にならず、例えば40歳なら30万円にすると保険料は2715円で倍になります。
次に保険料は他社より安いのか高いのか、下図で他社のがん保険と一覧表で比較しました。基本的に入院給付金は1万円(診断一時金なら100万円)で、保険料は一部の保険を除いて終身払いで比較しました。

この保険の保険料を他社と比較すると、既述の条件では明らかに安く平均額も大きく下回る額です。30歳では平均額の2700円の3分の1に近い額です。ただ、他社の一部の保険のように診断一時金100万円を付けると、保険料は30歳で2961円で40歳で4431円となります。こうなると他社とほぼほぼ同じ額で平均額に近くなります。
また、この保険の保険料が非常に安いのは間違いありませんが、30歳男性で保険料が1000円どころかワンコインで加入できる保険もあります。それがコープ団体保険のがん保険で、この保険と比べても保険料は半額になります。コープにもデメリット・注意点はありますが、この保険の保険料は最安値とはなっていません。
メリット
この保険のメリットは、まずは全ての保障に上皮内新生物が含まれている点が挙げられます。他社では東京海上あんしん生命のように、保険料免除特約に上皮内新生物が含まれていない保険があります。その他にも他社には治療給付金や診断一時金で上皮内新生物だと受け取りは1回限り、先進医療でも除外される保険があります。
そして、この保険の最大のメリットは、給付金が診療報酬点数に応じて受け取れる点でしょう。治療の実費が保障されるため無駄な給付金がなく、前述した非常に安い保険料を実現しています。給付金が最低額の月10万円だと不安を感じるかもしれませんが、高額な治療費になった場合に公的健康保険の加入者であれば高額療養費制度が利用できます。

この制度を利用すれば69歳以下なら、年収770万円以下なら概ね1ヶ月の治療費が10万円以内に収まります。もしも年収が770~1160万円なら治療費は概ね20万円以内に収まるため、給付金は10万円ではなく20万円に設定する必要があります。しかし、前述したように給付金を20万円にしても保険料が倍になるわけではありません。
がん先進医療と患者申出療養がセットになっているのもメリットです。他社のように患者申出療養でも月に数十万円が受け取れるのではなく、治療サポート給付金と同様に実額が保障されます。それも先進医療と一括りのため限度額が通算2000万円までと高めに設定されています。用途が自由な見舞金でも数十万円が受け取れ、入院費用や交通費等に充てられます。
さらに他社には無い保障である差額ベッド給付金があるのも見逃せません。入院した病院によっては2~4人部屋になることが多いのですが、多くの人が個室を希望します。1日あたり1~2万円が相場のため入院日数が1週間だとしても結構な額になるため心強い特約といえます。
デメリット・弱点・落とし穴
この保険のデメリットには、まずは自由診療だと支払限度額の2倍の給付金になる点が挙げられます。高額療養費制度を見越して給付金の上限を10万円にすると、自由診療の抗がん剤で受け取れるのは20万円だけです。自己負担3割にならない自由診療では新薬・未承認薬などで負担額が1ヶ月に数百万円になるケースがあります。こういったケースに20万円では不安があります。
さらに患者申出療養にしても通算2000万円まで保障されますが、東京海上あんしん生命だと通算1億円まで保障されます。2000万円でも十分かもしれませんが、新薬が1ヶ月あたり200万円なら投薬は1年も継続できません。2000万円までの保障自体はメリットですが、他社を見ると物足りなさを感じるのも事実です。
また、診療報酬点数に応じた給付金となるため、がん治療見舞金が非常に小額である点も見逃せません。給付金限度を10万円にすると、見舞金は僅か5000円です。この5000円で治療費以外の入院に係る諸費用をカバーするのは不可能でしょう。交通費だけで消えてしまう可能性すらあります。
ちなみに、用意されている特約が4つと選択肢が乏しいのもデメリットかもしれません。他社には特約で従来の日単位・回数単位で給付金が受け取れる入院/通院給付金・手術給付金が用意されています。乳がんでの再建術や抗がん剤による抜け毛といった外見をケアする特約、がん遺伝子検査やがん罹患後のストレス疾病(うつ病等)を保障する特約もあります。
評判・苦情
なないろ生命の2023年の決算資料によると、個人向け保険の全体の新契約数は20万件で前年度の5.6万件から4倍になり好調でした。この保険が含まれるであろう入院保障の保険の保有契約高も大幅増でした。契約数等からすると評判は良さそうです。
契約数でいうと価格.comのがん保険の申込数ランキング2024では、なないろがん治療保険極は27の保険の中で18位と下位でした。なないろがん一時金保険の21位よりは順位が上ですが、保険料を可能な限り抑えたい人達の中では不人気なようです。価格.comで上位なのは安い保険料で一時金が受け取れる保険のため止むを得ない感もありますが、同じように実額補償のSBI損保の保険が8位なだけに、それ以外にも理由がありそうです。
生命保険協会の苦情数のデータでは、なないろ生命全体に寄せられた苦情数は310件(2023年度上半期実績)でした。総顧客数の41万件で割った苦情率は0.07%で、契約者1000人のうち0.7件の苦情が発生している計算です。他社の苦情率は0.1~0.3%台が多い中では苦情数は少なく、苦情面で考えると評判は悪くありません。
また、調査会社のJ.D.パワーの「2024年 生命保険契約満足度調査(保険代理店チャネル)」では、なないろ生命は17社中9位と中位に位置しています。手続き・顧客対応・商品提供・保険料が評価項目ですが、とりあえず平均よりは上の評価だったと考えられます。この調査は数千人の利用者を対象にした調査のため数件の口コミより信頼できます。

なないろ生命への評判は悪くなさそうですが、なないろがん治療保険極自体への評価は平凡です。「FPが選んだオリコン終身型がん保険 ランキング2024」では、この保険は9つの中で5位だからです。保険料では3位に入っていますが、それ以外の項目(保障の独自性・商品内容)では3位以下です。保険料比較の箇所で既述の通り保険料の安さは専門家からの太鼓判があります。

以上のデータから考えるとなないろ生命の評判も、なないろがん治療保険極の評判も普通そうです。なないろ生命の評判は苦情数や各種調査で特別に良くも悪くもないため、普通と考えるのが無難でしょう。がん治療保険極については、価格.comの契約数が多くありませんが、FPからは一定の評価は得ています。評判は特別に良くはないが悪くもないと考えるのが妥当です。
総合評価・おすすめか?
結論としては、なないろがん治療保険極は微妙な保険です。保険料の安さは大いに評価できますが、いかんせんデメリットが見逃せません。既述のデメリットを把握した上で保険料を抑えた保険に加入したいのなら、検討しても良いかもしれません。
他社の保険も検討してみたい人は、充実した保障を求めるならアフラック・チューリッヒ・メットライフあたりが候補になります。保険料を抑えるならコープの団体がん保険あたりを検討する必要があります。