ガン保険Sセレクトを比較・評価

三井住友海上あいおい生命
オススメ度:
1
保険会社:
三井住友海上あいおい生命
名称:
ガン保険Sセレクト
加入年齢:
0~85歳
保障期間:
終身
保障内容:
入院等で給付金
特徴:
早期のガンから手厚くサポート

ガン保険Sセレクト(スマートセレクト)は、三井住友海上あいおい生命が2022年11月から募集・販売しているがん保険です。2018年から販売していたガン保険スマートをリニューアルした保険で、主契約に診断一時金を選べたり保険料払込免除に上皮内新生物が含まれる等の改良がされました。

ただ、後述するように根本的な保障内容は変わっておらず、現在主流となっている他社のがん保険と比べると少し古い感があります。それでは以下で保障内容・保険料・評判等を解説し、他社のがん保険と比較していきます。

保障内容

この保険はガン診断給付型とガン入院給付型があり、どちらかを選択する必要があります。どちらの型を選択するかによって選べるオプション(特約)が変わります。ガン入院給付型なら全ての特約を選択できますが、ガン診断給付型だとガン診断給付特約(重複するため)・ガン退院療養給付特約・ガン死亡保障特約が付けられません。

ガン保険Sセレクトの主契約と特約の組み合わせ(出典:ガン保険Sセレクト 商品パンフレット 2022年11月版)

ガン診断給付型は、初めてガンと診断されるか初めてのガンから1年経過後にガンと診断されると、ガン診断給付金として50~200万円が受け取れます。2回目の診断給付金は再発した場合でも転移した場合でも受け取れ、受け取り回数は無制限となっています。

ガン入院給付型は、ガンの治療のために入院すると日数に応じて入院給付金が受け取れます。日帰り入院~5日目までの入院は一律5日分となるため、入院給付金を5000円に設定すると2.5万円が受け取れます。また、手術をすると手術給付金として入院給付金の20倍(入院給付金5000円なら10万円)が受け取れます。

ガン保険Sセレクトの主契約の保障内容(出典:ガン保険Sセレクト 商品パンフレット 2022年11月版)

自分で選択するオプション(特約)にはガン保険料払込免除特約・ガン先進医療特約・抗がん剤治療給付特約・ガン治療通院給付特約・ガン診断給付特約・ガン退院療養給付特約・ガン死亡保障特約があります。ガン保険料払込免除特約はガンと診断されると保険料の支払いが不要になる特約で、ガン先進医療特約は先進医療の技術料が2000万円まで保障される特約です。

抗がん剤治療給付特約は抗がん剤を受けた月、ガン治療通院給付特約は通院した日数に応じて給付金が受け取れます。ガン診断給付特約はガンと診断確定された時、ガン退院療養給付特約は20日以上の入院後に退院した時に、各々1回だけ給付金が受け取れます。ガン死亡保障特約はがんで死亡・高度障害となると一時金が受け取れます。

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保険料を他社と比較

この保険の保険料は性別・年齢・選んだ型・給付金の額・選んだオプションによって変動します。30歳男性で入院給付型で入院/通院給付金1万円・一時金100万円・抗がん剤10万円・保険料免除と先進医療ありで、毎月の保険料は4564円となります。40歳男性だと月額6745円、50歳男性だと10917円に上昇します。

一方で診断給付型で一時金100万円・抗がん剤10万円・通院給付金1万円・保険料免除と先進医療抗ありで、30歳男性の保険料は月額3134円まで下がります。さらに通院給付金1万円を削れば、保険料は月額2244円まで下げられます。

次に保険料は他社より安いのか高いのか、下図で他社のがん保険と一覧表で比較しました。基本的に治療給付金は月10万円(診断一時金のみなら100万円)で、保険料は一部の保険を除いて終身払いで比較しました。

がん保険の30歳と40歳と50歳の保険料の比較一覧表(アフラック・アクサ生命・アクサのネット完結・FWD生命・オリックス生命・SOMPOひまわり生命・チューリッヒ・東京海上あんしん生命・なないろ生命・ネオファースト生命・はなさく生命・三井住友海上あいおい生命・メットライフ生命・メディケア生命・楽天生命・コープ団体保険・JA共済・共栄火災・SBI損保・セコム損保・明治安田生命・ソニー生命)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この保険の保険料は入院給付型だと他社と比較して高めです。例えば30歳男性であれば平均額の2700円よりも2000円近く高く、40歳・50歳でも同様に平均額より高いです。ただし、前述した診断給付型の保険料だと平均額を下回り、同じような保障内容であるなないろ生命等よりも安くなります。

とはいえ、診断給付型にしても他社には一段と保険料が安い保険があります。特に保険料が1000円台や1000円を切る保険とは大きな差があります。この保険からすると保険料以外の面でメリットが欲しいところです。

メリット

この保険のメリットは、まずは全ての保障で上皮内新生物が対象である点が挙げられます。他社の保険には診断一時金では上皮内新生物は1回限り、保険料払込免除では上皮内新生物は対象外であるケースがあります。悪性新生物ではなく上皮内新生物も超初期のがんであるため、全ての保障で対象となっているのは分かりやすく心強いでしょう。

保障内容では診断給付型と入院給付型を選択できるのもメリットです。新設された診断給付型は入院の日数や治療の回数に関係なく受け取れるため、当面の治療費にも家族の生活費にも充てられます。診断給付型と抗がん剤特約を組み合わせれば、長期に及ぶ可能性がある通院による抗がん剤治療にも対応できます。

診断給付型と抗がん剤特約での給付金の受け取り例(出典:ガン保険Sセレクト 商品パンフレット 2022年11月版)

入院給付型は従来型の医療保険に近く、入院日数に応じて給付金が受け取れ、手術をすれば手術給付金を受け取れます。一般的なケースでは診断給付型の方が受け取れる金額は大きくなりますが、入院が長期化し1年内に再入院する等のケースでは受け取り額が逆転する可能性があります。昨今はがんの入院短期化と通院治療が主流となっていますが、白血病等の血液がんでは未だ数ヶ月の入院や、複数の入院が必要となるケースがあります。

特約の多くは他社にもあるもので目新しさはありません。唯一、挙げるとすればガン死亡保障特約でしょうか。他社では死亡保障が付けられない保険があり、死亡保障には他の終身保険なり定期保険に加入する必要があります。この保険なら1つの保険で済みます。

デメリット・弱点・落とし穴

この保険のデメリットには、まずは保障に古さがある点が挙げられます。この保険で保障されるのは診断確定・入院通院・手術・抗がん剤・先進医療で、その他の治療では給付金は受け取れません。放射線治療・緩和療法・免疫療法等は通院給付金や診断給付金を充てざるを得ません。2022年リニューアルなのに、効果的な抗がん剤を選択するためのがん遺伝子検査(がんゲノムプロファイリング検査)も対象外です。

標準治療として行われるがん遺伝子検査について(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん医療における遺伝子検査」)

がん遺伝子検査は手術・診断目的で採取したがん組織の遺伝子を検査し、がん遺伝子の変異を明らかにして治療に活かす治療方法です。この検査でがんの特徴や自分の体質にあった抗がん剤で治療ができ、効果が乏しい抗がん剤での治療を回避できます。

さらに患者申出診療や自由診療の保障が無いのも大きなデメリットです。これらの治療は新薬・未承認薬等を用いた治療のため、公的医療保険により窓口での自己負担が3割となりません。新薬・未承認薬は平気で1ヶ月の治療費が100万円を超えるケースがあります。診断給付金が1ヶ月で消えて入院・通院給付金ではカバーし切れません。

また、他社には女性特有の子宮がん等で一時金・給付金が上乗せされる特約、乳がんの乳房再建術で一時金が受け取れる特約があります。抗がん剤による抜け毛等の外見までケアする特約もあります。この保険には既述したような独自性のある保障や特約が無いのが分かります。

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評判・苦情

三井住友海上あいおい生命の2023年の決算資料によると、全体の個人向け保険の新契約数は20.9万件で前年度の22.8万件から8%近く減りました。この保険が含まれるであろう入院保障の保険の保有契約高も微増に留まっています。他社には新契約数が伸びている保険会社もあるため、契約数からすると評判は良くありません。

契約数でいえば、価格.comのがん保険の申込数ランキング2024でも、ガン保険Sセレクトは27の保険の中で申込数は15位でした。この保険でも保障内容の選択次第では保険料を相当に下げられますが、それ以外の面で回避されている可能性が高いです。

生命保険協会の苦情数のデータでは、三井住友海上あいおい生命全体に寄せられた苦情数は1152件(2023年度上半期実績)でした。総顧客数の403万件で割った苦情率は0.02%で、契約者1000人のうち0.2件の苦情が発生している計算です。他社の苦情率は0.1~0.3%台が多い中では苦情数は少なく、苦情面で考えると評判は良いです。

苦情面では不安は無さそうですが、J.D.パワーの保険金を請求する際の満足度を示す「2024年 生命保険金請求対応満足度調査」では、三井住友海上あいおい生命は27社中17位と下位でした。平均値を下回る結果で、保険に加入して実際に保険金を受け取った人からの評判は悪く、受け取るまでに何らかのストレスがありそうです。

JDパワー 2024年生命保険金請求対応満足度調査(出典:JDパワー公式HP)

オリコン顧客満足度 がん保険ランキング2024でも、三井住友海上あいおい生命は18社中11位以下でした。評価項目である加入手続き・商品内容・保険料・アフターフォローで業界平均を上回っています。個別の口コミではポジティブな意見がある一方で、「担当者の説明が分かりにくい」「書類を再送させられた」「加入手続きが面倒」「アフターフォローが乏しい」等の不満・意見がありました。担当者・手続きへの不満が多い感があります。

三井住友海上あいおい生命への評判もさることながら、ガン保険Sセレクト自体への評価も低めです。「FPが選んだオリコン終身型がん保険 ランキング2024」では、ガン保険Sセレクトは10の保険の中で8位です。この調査は30人の専門家(ファイナンシャルプランナー)が回答した調査のため、専門家からの評価は低いことになります。保障の独自性の項目では9位で、デメリットの箇所で既述した内容と合致します。

ガン保険Sセレクトのランキング結果(出典:オリコン公式HP「おすすめのがん保険商品ランキング2024」)

以上のデータから考えると、三井住友海上あいおい生命の評判は少し悪そうで、ガン保険Sセレクトの評判に至っては悪そうです。三井住友海上あいおい生命については、契約数が伸び悩んでおり各種調査でも特別に良くありません。とはいえ各種調査では最下位ではないため少し悪いかも程度に考えるのが妥当でしょう。ガン保険Sセレクトは申込数も専門家からの評価も低く良いといえる要素はありません。

総合評価・おすすめか?

結論としては、ガン保険Sセレクトはイマイチな保険です。随所に現在の主流とはそぐわない保障内容があり、メリットもかき消しています。診断給付型なら他社に保険料が安く現在の主流にあった特約がある保険があります。もしも旧来型の日単位の給付金が欲しい人だけ検討すべき保険といえそうです。

他社の保険で充実した保障を追求するなら、アフラック・チューリッヒ・メットライフあたりのがん保険を検討すべきでしょう。この保険よりも保険料を抑えるならコープの団体がん保険を検討する必要がありますが、その場合には現役時のみ保障があればOKという前提が必要です。