共栄火災 がん保険を比較・評価
- オススメ度：
- 保険会社：
- 共栄火災
- 名称：
- がん保険
- 加入年齢：
- 5～70歳
- 保障期間：
- 70歳まで
- 保障内容：
- がん治療等で給付金
- 特徴：
- がんの治療を手厚くサポート
共栄火災は損害保険会社ですが、がん保険を10年以上前から募集・販売しています。共栄火災は関東・関西では知名度が低いかもしれませんが、農協や中小企業を顧客にして北海道・東北・北陸・九州で一定のシェアを持っています。
がん保険の保障内容は長らく同じでしたが、2021年7月に大幅リニューアルして最近のがん治療に沿った内容になりました。それでは以下で保障内容・保険料・評判等を解説し、他社のがん保険と比較していきます。
保障内容
この保険は一般的な契約タイプCAKと女性向けの契約タイプCBKがあります。CAKだとがん診断時・入院時・手術時・退院時・通院時・死亡時に加えて、特定の治療法を受けた時にも給付金が受け取れます。特定の治療法は放射線治療・抗がん剤治療・先進医療・患者申出療養が該当します。
まず初めてがんと診断されると、入院の有無に関わらずがん診断保険金が受け取れます。がん診断保険金は1回限りで消滅しますが、再発・転移等で再びがん（悪性新生物に限る）と診断されると、悪性新生物診断保険金が受け取れます。がんと診断されて入院・手術となると、入院日数に応じて入院給付金が受け取れます。手術は手術の種類に応じて10～40万円の手術保険金が受け取れ、胃全摘出・膀胱全摘出等の特定の手術だと特定手術保険金も受け取れます。
がんで20日以上の入院をして退院すると退院後療養保険金が受け取れ、治療のために通院すると通院保険金が受け取れます。通院保険金は入院前の通院でも日数に応じて保険金が受け取れます。さらに、治療したが死亡した場合には遺族は葬祭費用保険金を受け取れます。
これらの保険金の受け取りとは別に、放射線治療を1回する度に放射線治療保険金が受け取れ、抗がん剤治療をした月ごとに抗がん剤治療保険金が受け取れます。さらに先進医療・患者申出療養で治療すると技術料と同額が2000万円まで受け取れます。先進医療だと一時金として5万円が受け取れ、遠方の病院への交通費・宿泊費等に充てられます。
女性向けの契約タイプCBKだと、共栄火災が定める所定の女性特定手術をすると女性特定手術保険金が受け取れます。女性特定手術には乳房切除術・子宮全摘除術・両側卵巣全摘除術が該当します。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は年齢・契約タイプ・初年度か継続年度かによって変動します。この保険は1年更新で保険料は5歳刻みで上昇していきます。さらに契約初年度よりも翌年以降の継続年度の方が保険料は高くなります。
また、保険料は月払いにするか一時払いにするかで異なります。契約初年度の30～34歳の月払いの保険料は1010円で、年間で合計12120円になります。一時払いにすると10940円のため1180円安くなり、実質1ヶ月分の保険料が浮きます。他の年齢層でも一時払いにすることで実質1ヶ月分の保険料分が安くなります。
次に保険料は他社より安いのか高いのか、下図で他社のがん保険と一覧表で比較しました。基本的に治療給付金は月10万円（診断一時金なら100万円）で、保険料は一部の保険を除いて終身払いで比較しました。
この保険の保険料は契約タイプCAKの初年度なら他社と比較して安いです。30歳でいうと平均額の2600円の半額で、40歳・50歳でも平均額を下回る金額です。ただ、継続年度だと30歳は変わらず平均よりも安いのですが、40歳は平均額に近く、50歳だと平均額を超える額になっています。
さらに他社の保険は契約した時から保険料は変わりませんが、この保険は5年おきに保険料が上昇してしまいます。コープ団体保険・SBI損保等も同じ仕組みですが、何歳まで加入するかで支払う保険料の合計額が変わります。結果的には、この保険よりも加入時の保険料が高い保険の方が安く済む可能性があります。
メリット
この保険のメリットは、まずは保険期間が1年で保険料が安い点が挙げられます。特に定年前までや子供が成人するまで保障があれば良い、つまり働いている間にがんになった場合に備えたい人に適しています。仮に30歳で加入して子供が成人する50歳まで加入すると、この保険の保険料は合計で約45万円です。アフラックの月額3949円の保険に20年加入した場合は、保険料の合計が約95万円のため共栄火災の方が安く済みます。
保障内容が多岐に渡るのもメリットでしょう。がんの診断・入院・手術・退院・通院に加えて、放射線治療・抗がん剤治療をすると別途で給付金が受け取れます。他社では手術・放射線治療・抗がん剤治療が一括りになっており、手術と抗がん剤治療を同じ月にすると給付金が1回分だけという保険があります。この保険なら複数の治療をすれば、治療をした分だけ給付金が受け取れます。
また、がん先進医療と患者申出療養がセットになっているのもメリットです。他社では患者申出療養で給付金が倍になるだけの保険があります。この保険のように先進医療と一括りで2000万円限度だと、自己負担が3割にならない高額な治療費に耐えられます。患者申出療養で未承認薬・適応外薬を服薬すると、薬剤によっては自己負担が月100万円近くになることがあります
契約タイプCBKに付いている女性特定手術保険金も見逃せません。はなさく生命等の女性特約では給付金が受け取れるのは1回限りですが、この保険なら再発すれば再び給付金が受け取れます。金額も入院給付金が倍といった程度ではなく100万円であるのもポイントです。
デメリット・弱点・落とし穴
この保険のデメリットには、まずは70歳で保障が終了する点が挙げられます。この保険に加入できるのは70歳までで、保険期間は1年のため71歳になると加入できません。70代になりがんになる可能性が一段と高まる時期に保障が無くなってしまいす。保険料も60歳以降は月額1万円を超えるため、定年後に保険の負担は相当に大きくなります。
また、各保険金に細かい注意点があるのもデメリットです。がん診断保険金には上皮内新生物も含まれるようですが、2回目以降に受け取れる悪性新生物診断保険金は上皮内新生物が含まれません。手術給付金は術式によって10～40万円の幅があり、退院後療養保険金は20日以上の入院をした場合に限られます。厚労省の平成29年患者調査では、がんでの平均在院日数は16.1日のため、この保険金を大半の人が受け取れません。
その他に放射線治療は60日に1回のため他社のように毎月受け取れない、葬祭費用保険金は葬式の実費が保障されるため100万円以下のケースもあります。抗がん剤治療保険金にホルモン剤治療が含まれていないようである点も見逃せません。
さらに先進医療・患者申出療養なら2000万円まで保障されますが、自由診療向けの保障がありません。患者申出療養と同様に自由診療だと治療費の全てが自己負担となります。国立がん研究センター「未承認・適応外の医薬品について」によると、未承認薬だと全体の80％が1ヶ月あたりの費用が100万円を超えます。この保険だと患者申出療養に該当する新薬なら十分な保障がありますが、自由診療だと診断保険金等で対応するしかありません。
また、細かい点でいうと、保険料払込免除がない、緩和ケアだと通院保険金が受け取れない、女性特定手術保険金は乳房以外は全摘除術とハードルが高めという注意点もあります。ちなみに加入者向けのサービスがありますが、24時間対応の健康相談があるぐらいです。損害保険会社のため生命保険会社ほどのサービスはありません。
評判・苦情
共栄火災の2023年の決算資料によると、全体の正味収入保険料は1728億円で前年度から1.6％増でした。その中でがん保険を「その他」は343億円で3.5%増で同じように横ばいに近いです。業績からすると評判は普通か少し悪いです。ただ、同社のアンケート調査で保険加入時の対応については「満足」が約半数を占めています。
その一方で、同社の苦情数は2023年度は合計7942件でした。その中で多かったのは保険金請求の処理遅延・手続きに関する苦情で、次いで保険証券が届かない（記載に誤りアリ）という苦情でした。保険金が来るのが遅いというのは、がん保険でも結構致命的な苦情といえます。
その他に調査会社のJ.D.パワーの「2024年 生命保険契約満足度調査」、オリコンの「オリコン顧客満足度 がん保険ランキング2024」では共栄火災は調査の対象外でした。がん保険についても「FPが選んだオリコン終身型がん保険 ランキング2024」ではランキング外で、サンプル数が不足している可能性が高そうです。
以上のデータから考えると、共栄火災の評判もがん保険の評判も普通か少し悪そうです。ただし、契約数や苦情数のみでの推測となるため意外と評判が良いという可能性もあります。主力となっている自動車保険・火災保険での評判は芳しくないため、その可能性は低そうではありますが。。。
総合評価・おすすめか？
結論としては、共栄火災がん保険は微妙な保険です。期間限定で安い保険料で幅広い保障が欲しい人は検討しても良いかもしれませんが、既述した細かいデメリットには十二分に注意が必要です。保険料の安さは相応のデメリットによる対価、ということを忘れてはいけません。
その一方で総合的に保障が充実した保険が欲しいなら、アフラック・チューリッヒ・メットライフあたりのがん保険を検討すべきでしょう。この保険よりも保険料を抑えるなら、コープの団体がん保険あたりを検討する必要があります。
