東京海上 MARINE PASSPORTを比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- 東京海上日動
- 名称:
- MARINE PASSPORT
- 申込:
- インターネット
- 航空遅延:
- 補償あり
- オリコン:
- 5位 / 10社中
- 特徴:
- インターネット専用のリスク細分型海外旅行保険
東京海上のMARINE PASSPORT(マリンパスポート)は、2021年6月に販売を開始した海外旅行保険です。同社には店頭・書類で申込む海外旅行保険もありますが、この保険の方が保険料は安く従来の海外旅行保険と同じように東京海上のサポートが受けられます。
ただし、保険料が安いため従来の海外旅行保険にあった補償が削減されています。以下で補償内容・保険料・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社の海外旅行保険と比較していきます。
補償内容・特約
この保険はエコノミー・スタンダード・デラックスの3つのプランがあります。エコノミープランは旅行中に病気・ケガをした時の治療費が受け取れる治療救援費用補償の他、病気で死亡した際の疾病死亡保険金があります。ホテルの備品を壊したり自転車で他人をケガさせた場合に、その損害賠償額が補償される賠償責任もあります。もちろんスーツケースが破損したりスマホが壊れた場合に、その修理費等が受け取れる携行品損害の補償も入っています。
スタンダードプランになると、治療救援費用と携行品損害の上限額が上乗せされ、さらに傷害死亡・傷害後遺障害保険金が追加されます。病気ではなくケガで死亡・後遺障害となっても保険金が受け取れるようになります。デラックスプランになると治療救援費用の上限額が一段と上乗せされ、航空機寄託手荷物と航空機遅延の補償が追加されます。
航空機寄託手荷物の補償は航空会社に預けた荷物が戻って来ない時に、代替品の購入費用として3万円まで受け取れる補償です。スーツケースそのものの他に、中に入っていた衣服・日用品・美容グッズ等の購入費になります。航空機遅延の補償は、搭乗予定の飛行機が遅延・欠航となった場合に、宿泊費・交通費・食事代として4.5万円まで受け取れる補償です。
その他に5つの海外サポートがあります。病気・ケガの治療費を東京海上が病院へ直接支払うことで、その場での自己負担(仮払い)が不要となるキャッシュレスメディカルサービス、パスポート紛失・電話での通訳・ホテル航空券の手配をしてくれるトラベルプロテクト、スーツケースの修理費を業者に直接支払ってくれるスーツケース修理サービスなどがあります。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は被保険者数・保険期間・契約タイプ・年齢・旅行先によって決まります。被保険者数は1人なら個人プラン、2人以上ならグループプランとなり人数が多いほど保険料は高くなります。保険期間(旅行日数)は長くなるほど保険料は高くなり、最長31日まで設定できます。契約タイプはデラックスプランが最も高く、スタンダードが中間、エコノミーが最も安いです。
年齢は17歳以下・18~29歳・30~49歳・50~59歳・60~69歳・70歳以上で異なります。18~29歳が最も安く、17歳以下と30~49歳は若干高くなります。50歳以降は年齢の上昇と共に保険料も上昇します。旅行先は治安・政情が加味されており、この保険では北米・ヨーロッパ・オセアニアの保険料は同額です。それがアジアだと少し安くなり、中南米・アフリカだと北米の1.5倍の保険料になります。
次に保険料が他社より安いのか否か確認していきます。保険料は被保険者1人・死亡後遺障害が1000万円・保険期間5日間・航空機遅延補償ありという条件にしました。旅行先はアメリカ(ハワイ含む)・ヨーロッパ(イタリア・フランス)・韓国・メキシコ・南アフリカでシミュレーションして、保険料を一覧表で比較しました。
MARINE PASSPORTのスタンダードプランの保険料は、他社と比較すると安い部類に入ります。最安値ではありませんが、安さでは3~4番手には入っています。ただし、旅行先がメキシコ・南アフリカだと保険料には相対的な割高感があり、他のネット系の保険よりは代理店型に近い金額になります。
また、スタンダードプランではなく航空機寄託手荷物と航空機遅延の補償があるデラックスプランにすると、保険料は2~300円ほど高くなります。それでも保険料は安めではありますが、保険料の安さでは他社よりも一歩遅れた水準となります。
以上を踏まえると、MARINE PASSPORTの保険料は安めですが、条件次第では安さは薄まるといえます。代理店型と比べると安い方だとしても、条件次第ではネット型の中では高い方にもなります。保険料では大きなアドバンテージがありませんが、それ以外の面でメリットがあるのか続いて記述していきます。
メリット
この保険のメリットは、まずは申込・手続きがネットで完結できる点が挙げられます。従来の海外旅行保険のように店頭に行ったり書類を記入する手間が不要です。保険金の請求もWebページ(マイページ)から手続きができます。
保険料も他社よりは安めで、同じ東京海上の海外旅行保険よりも安いです。エコノミープランにすると保険料はスタンダードより30%ほど安くなるため、一段と保険料を削れます。安い保険料で東京海上のサービスが利用できると考えれば悪くないでしょう。デラックスプランの航空機寄託手荷物保険金の3万円と航空機遅延保険金の4.5万円もメリットで、ジェイアイ傷害たびほの補償額の各1万円より大きいです。
海外でのサポートサービスをLINEで利用できる「たびコンパス」というサービスもメリットです。たびコンパスはLINE公式アカウントで、LINEで海外から東京海上のサポートデスクに相談・連絡できます。GPSを利用して最寄の提携病院を検索したり、テキスト・音声の翻訳や渡航先のお役立ち情報もあります。
さらにテキスト&音声翻訳・カメラde翻訳・持ち物リスト・渡航先のお役立ち情報が利用できます。テキスト&音声翻訳は17ヶ国の言語を翻訳でき、ホテルや空港で会話に困った場合に役立ちます。カメラde翻訳はレストランのメニューや空港の看板を理解するのに役立ちます。渡航先のお役立ち情報は30ヶ国の飲み水の安全性など、信頼性のある現地情報が確認できます。
デメリット・注意点
この保険のデメリットには、まずは前述したように旅行先次第で保険料が高い点が挙げられます。アメリカ・ヨーロッパでは他社との保険料の差が数百円だったのが、アフリカ・中南米だと差が1000円以上に広がります。他社にはあるリピーター割引などの割引もありません。
プラン選択にしても、デラックスプランのみ航空機寄託手荷物保険金と航空機遅延保険金が付けられるのもデメリットです。他社にはスタンダードなプランに航空機寄託手荷物保険金と航空機遅延保険金が付いている保険もあります。損保ジャパンOFF・たびとも等は航空機寄託手荷物保険金が付いており、航空機遅延保険金はオプションです。航空機遅延を付けても、この保険よりも保険料が安いです。
エコノミープランも補償の自由度は他社よりも低いです。たびほは治療救援費用と緊急歯科治療費用以外は自由に補償を選択できます。そのためクレジットカードの海外旅行保険の補完や上乗せが、補償の重複が少なく保険料を抑えてできます。
また、補償面では同社の従来の海外旅行保険にあった、応急治療救援費用・旅行変更費用保険金がありません。応急治療救援費用は持病が悪化した場合の治療費が補償されるため、糖尿病などの持病がある人に向いています。旅行変更費用保険金は旅行を諸事情でキャンセル・中止・途中帰国となった場合に補償されます。
さらにキャッシュレス・メディカルサービスはメリットではありますが、提携病院が少ないというデメリットがあります。ヨーロッパではスイス・ポルトガル・ギリシャ・オランダ・オーストリアには無く、フィンランド・スウェーデン等の北欧諸国にもありません。アメリカ本土でもサンフランシコ・オーランド・ボストンには提携病院がありません。
たびコンパスもメリットではありますが、翻訳機能はGoogle翻訳を筆頭に他に優秀なアプリはいくつもあります。Google翻訳なら17ヶ国語どころか100ヶ国語以上に対応しており、カメラでの翻訳も可能です。現地の情報にしてもインターネットで現地に住んでいる人からの情報がいくらでも得られます。
評判・苦情
東京海上の2022年度(2022年4月~2023年3月)の決算資料によると、保険会社における収入を示す正味収入保険料は前年度の2.28兆円から2.38兆円になり4.2%増でした。その中で海外旅行保険を含む傷害保険は1868億円で前年度から11%増でした。他社では横ばいのケースがあるため、契約数・業績からすると評判は良いです。
ただし、価格.comの新規契約数ランキング2023ではMARINE PASSPORTは9社中7位と低迷しています。保険料の一括見積もりする保険料重視の人からの評価は低いといえます。これは保険料比較で既述した内容と合致しており、信憑性が高まる結果といえます。
日本損害保険協会の苦情数のデータでは、東京海上全体に寄せられた苦情数は約3.6万件(2022年度累計)ありました。業績が下の損保ジャパンとほぼ同数のため苦情数自体は多くはありません。苦情の中身は「保険金お支払い関係」が最多で、担当者からの連絡遅れ・説明不足、保険金の支払い可否について不満が見えます。
次にオリコンの海外旅行保険 総合ランキング2020(実際に海外旅行保険を適用した3254人が調査対象)ですが、東京海上は10社中5位でした。この調査の評価項目は加入手続き・保険プラン・担当者の対応・サポート体制・支払い手続きと対応の5つです。この保険は2021年発売のため評価には含まれていませんが、一応は参考になります。
個別のクチコミでは「保険金を受けるまで時間がかかった」「補償が自由に選択できず希望するプランが無い」「保険料が高い」等のネガティブな意見がありました。ネガティブな意見については、概ねデメリットの箇所で既述した内容となっています。
以上のデータから考えると東京海上の評判は良さそうですが、MARINE PASSPORTの評判は少し悪そうです。オリコンの満足度は参考程度ですが、この保険のベースが従来の海外旅行保険と考えれば無視はできません。価格.comで新規契約数が他社に劣るのが証左ともいえます。
総合評価・おすすめか?
結論としては、MARINE PASSPORTはイマイチな保険です。メリットもあるにはありますが、他社より保険料が圧倒的に安いわけでもなく、補償内容・評判が取り立てて良いわけでもありません。いずれも中途半端で決定的な要素が無いため、この保険を検討しているなら他社の保険も検討した方が賢明でしょう。
とにかく保険料を削減したいなら、エイチエス損保やau損保が候補になります。総合的な良さならソニー損保やジェイアイ傷害火災保険あたりを検討しても良いかもしれません。