チューリッヒ 海外旅行保険を比較・評価

チューリッヒ保険
オススメ度:
2
保険会社:
チューリッヒ保険
名称:
チューリッヒの海外旅行傷害保険
申込:
インターネット
航空遅延:
補償あり
オリコン:
9位以下 / 10社中
特徴:
思いがけない旅行中のケガ・トラブルに

チューリッヒは自動車保険のイメージが強いのですが、海外旅行保険も募集・販売しています。2023年2月にはJALが代理店となってチューリッヒが提供する「JAL海外旅行保険」が販売開始しましたが、中身はチューリッヒが販売している海外旅行保険と同じものです。

それでは以下で補償内容・保険料・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社の海外旅行保険と比較していきます。

補償内容・特約

この保険はリーズナブルプラン・スタンダードプラン・プレミアムプランの3つのプランがあります。どのプランにも傷害死亡・傷害後遺障害・治療救援費用・賠償責任の補償はあります。旅行中にケガで死亡・後遺障害となったり、病気・ケガをして病院で治療した場合に保険金が受け取れます。さらに他人にケガをさせたり他人の物を壊して、治療費を支払ったり物を弁償した場合にも保険金が受け取れます。

チューリッヒの海外旅行保険の各プランの補償内容と保険料(出典:チューリッヒ公式HP「保険プランの選択」)

さらに航空機遅延と航空機寄託手荷物遅延の補償も付いています。航空機遅延は搭乗予定の飛行機が6時間以上の遅延をしたり欠航となった場合を指し、宿泊費・食費として2万円の保険金が受け取れます。航空機寄託手荷物遅延は航空会社に預けたスーツケースが現地に着かなかった場合を指し、旅行中の衣類・生活必需品として10万円まで保険金が受け取れます。

スタンダードプランにすると傷害死亡・治療救援費用の上限額が上昇し、携行品損害の補償が付きます。旅行に持って行ったスマホなどが壊れた場合に、その修理費・再購入費として5万円まで保険金が受け取れます。プレミアムプランにすると治療救援費用・携行品損害の上限額が上昇し、病気によって死亡すると受け取れる疾病死亡保険金が付いてきます。

その他にオプションで「旅行中の事故による緊急費用の補償」が付けられます。旅行中に予期せぬ事故で必要となった費用が補償されます。例えば、帰国直前にパスポートが入ったカバンを盗難された場合、再発行のために延泊する必要があります。その際の宿泊費・食費・通信費・交通費等が保険金で受け取れます。

その他に海外でのトラブル・事故・病気ケガについて、電話で24時間365日いつでも相談できる日本語対応窓口があります。治療費の立て替え(仮払い)が不要となるキャッシュレスメディカルサービス、スーツケース破損時に自己負担なしで引き取りから修理・お届けまでしてくれるスーツケース修理・お届けサービスもあります。

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保険料を他社と比較

この保険の保険料は被保険者数・保険期間・契約タイプによって決まります。被保険者数は1~5人まで選択でき、人数が多いほど保険料は高くなります。保険期間(旅行日数)は長くなるほど保険料は高くなり、最長30日まで設定できます。契約プランはリーズナルプランが最も安く、スタンダードプランが中間、プレミアムプランが最も高いです。

次に保険料が他社より安いのか否か確認していきます。保険料は被保険者1人・死亡後遺障害が1000万円・保険期間5日間・航空機遅延補償ありという条件にしました。旅行先はアメリカ(ハワイ含む)・ヨーロッパ(イタリア・フランス)・韓国・メキシコ・南アフリカでシミュレーションして、保険料を一覧表で比較しました。

被保険者1人・死亡後遺障害が1000万円・保険期間5日間・航空機遅延補償ありの海外旅行保険の保険料の比較一覧表(三井住友海上・ジェイアイ傷害火災・損保ジャパン・エイチエス損保・AIG損保・au損保・東京海上日動火災・SBI損保・共栄火災海上・あいおいニッセイ同和・大同火災・ドコモ保険・ソニー損保・日新火災・楽天損保・Chubb損保・チューリッヒ保険・ソフトバンク保険)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

チューリッヒの海外旅行保険の保険料は、他社と比較すると平均に近い中間に位置する金額です。代理店型の保険よりは安いものの、ネット型の保険よりは総じて高いです。ただし、旅行先が中南米・アフリカだとau損保・損保ジャパン・エイチエス損保に次ぐ保険料の安さです。他社のように旅行先によって保険料が変動しないのが良い結果を生んだようです。

以上を踏まえると、チューリッヒの海外旅行保険の保険料は旅行先によっては安いといえます。ただ、安いとはいえ他社にはチューリッヒより安い保険があり、最安値というわけではありません。保険料では大きなアドバンテージがありませんが、それ以外の面でメリットがあるのか続いて記述していきます。

メリット

この保険のメリットは、まずは申込・手続きがネットで完結できる点が挙げられます。従来の海外旅行保険のように代理店の店頭に行って書類を記入する手間は無く、出発直前に空港で自動販売機(自動引受機)で加入する慌しさがありません。

旅行先によって保険料が変動しないのもメリットでしょう。他社では旅行先によって保険料が変動し、複数の国に渡航する場合には保険料が想像以上に上昇する可能性があります。その点、この保険は複数の国が旅行先でも保険料は同額で済みます。

補償面では航空機寄託手荷物遅延の補償額が10万円で、他社よりも高めなのもポイントです。他社ではジェイアイ傷害火災たびほのように、補償はあるものの補償額が僅か1万円だけというケースもあります。旅行中の事故による緊急費用の補償は他社ではオプションでも付けられないことがあり、補償額も5万円で1~2日の延泊なら足りそうなのも良いです。

他社と似た内容ですが、海外サポートがあるのも一応はメリットです。特に病院にチューリッヒが治療費を直接支払い、自分は窓口で治療費を支払わずに済むキャッシュレスメディカルサービスは便利です。支払いにクレジットカードが使えることもありますが、治療費が数百万円となると限度額に到達する可能性があります。そういった心配をケガ・病気の最中にしなくて済みます。

デメリット・注意点

この保険のデメリットには、まずは旅行先がキューバだと加入できない点が挙げられます。他社では見かけない制限です。キューバへの渡航は海外旅行保険の加入が義務付けられ、加入証明書(付保証明書)の提示を入国審査で求められることもあります。海外旅行保険が必要な国なのに、なぜか旅行先がキューバだと加入できません。

また、申込・加入についてはネットから申込できますが、保険金の請求は書類となる点もデメリットです。申込・加入では書類の手間を省けるのに、いざ保険金を受け取る際には書類が必要となります。他社では、たびほ・たびとも等ではWeb請求が可能となっています。

チューリッヒの保険金請求書(出典:チューリッヒ保険公式HP)

補償面にしても、プレミアムプランでも治療救援費用は5000万円まで、携行品損害が10万円までと物足りない感もあります。他社には治療救援費用は無制限、携行品損害は50~10万円まで上限額を上げられる保険があります。他社ではオプションで選択できる旅行変更費用保険金(出発前に諸事情で旅行中止を補償)、応急治療救援費用(持病の悪化による治療を補償)もありません。

さらにキャッシュレス・メディカルサービスはメリットではありますが、提携病院が少ないというデメリットがあります。北米・アジア・ヨーロッパは他社と比べて見劣りしませんが、中南米は4ヶ国のみでメキシコ・チリ・パナマ等には提携病院がありません。さらにアフリカには提携病院は1つもありません。

キャッシュレスメディカルサービスがある国数の比較表(三井住友海上・ジェイアイ傷害火災・損保ジャパン・エイチエス損保・AIG損保・au損保・東京海上日動火災・SBI損保・共栄火災海上・あいおいニッセイ同和・大同火災・ドコモ保険・ソニー損保・日新火災・楽天損保・Chubb損保・チューリッヒ保険・ソフトバンク保険)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

評判・苦情

チューリッヒ保険の2022年度(2022年4月~2023年3月)の決算資料によると、保険会社における収入を示す正味収入保険料は前年度の447億円から536億円になり19%増と好調でした。その中で海外旅行保険を含む傷害保険も275億円で前年度から11%増でした。他社では横ばいのケースがあるため、契約数・業績からすると評判は良いです。

また、チューリッヒ全体に寄せられた苦情数は5.7万件(2022年度累計)ありました。数が非常に多いのは苦情に満たないお客様の声(意見・要望等)も含まれているからでしょう。苦情の中身は「契約・募集行為」が最多で、新規の申込・契約時に説明不足だったり、手続きが分かりにくいといった不満が見えます。

チューリッヒの2022年度の苦情の内訳(出典:チューリッヒ保険ディスクロジャー2023「Business Report 2023」)

次にオリコンの海外旅行保険 総合ランキング2020(実際に海外旅行保険を適用した3254人が調査対象)ですが、チューリッヒは10社中9位以下でした。この調査の評価項目は加入手続き・保険プラン・担当者の対応・サポート体制・支払い手続きと対応の5つです。個別項目のランキングでも8位以上に入っておらず、満足度が低く不安があります。

個別のクチコミでは「為替レートが悪い」というネガティブな意見がありました。おそらく現地で損害を受けた時の為替レートよりも、日本帰国時には円高になっていた影響だと考えられます。現地で300ドルの損害があって、その時に1ドル=100円なら3万円の損害ですが、帰国時に1ドル=90円なら300ドルの損害は2.7万円の損害になります。

以上のデータから考えると、チューリッヒの海外旅行保険の評判は少し悪そうです。契約数は伸びているものの、オリコンの満足度ランキングで9位以下だからです。苦情数も苦情未満の意見も含めてとはいえ多めで、少なくとも不安が軽減されるものではありません。

総合評価・おすすめか?

結論としては、チューリッヒの海外旅行保険はイマイチな保険です。メリットもあるにはありますが、補償内容も保険料もサービス面も中途半端です。せめて評判だけでも良ければ、担当者の対応等への期待がある保険として勧められそうですが、それもできそうにありません。

この保険を検討している人は他社の保険も検討した方が賢明でしょう。とにかく保険料を削減したいなら、エイチエス損保やau損保が候補になります。総合的な良さならソニー損保やジェイアイ傷害火災保険あたりを検討しても良いかもしれません。