JA共済 クルマスターを比較・評価

JA共済 自動車共済クルマスター
オススメ度:
1
保険会社:
JA共済
名称:
自動車共済クルマスター
免許の色:
割引あり
走行距離:
割引なし
オリコン:
対象外 / 16社中
特徴:
保障もサービスも安心・充実

JA共済は主に農業従事者・農家が利用していますが、出資金を支払えば准組合員になれ共済に加入できます。出資金は地域によりますが、1,000~10,000円と小額です。さらに出資金には金利が付き、JAを脱退すれば出資金は返金されます。

自動車共済クルマスターは2008年に4種類あった自動車共済を統一する形で登場し、2022年現在まで販売が継続されています。それでは以下で補償内容・保険料(掛け金)・メリット・デメリット・評判等を解説し他社の自動車保険と比較していきます。

補償内容・特約

この共済では対人賠償・対物賠償・対物超過修理費用保障が自動付帯(自動セット)となり、ロードサービスも付きます。人身傷害保険・傷害定額給付保険といった自分と同乗者のケガの補償、さらに、もらい事故のための弁護士費用特約、他人の物を壊した時のための日常生活賠償責任特約等も付加するか自分で決めます。

JA共済 クルマスターの補償内容(出典:JA共済公式HP 「自動車共済 クルマスター」)

傷害定額給付保険は聞き慣れないかもしれませんが、イメージとしては搭乗者保険に近いです。人身傷害は事故でケガをした場合に事故・ケガの程度により受け取れる金額が決まります。傷害定額給付は死亡・後遺障害・入院5日以上・入院4日以内に分かれ、あらかじめ決まった額が受け取れます。

死亡時は100~1000万円の範囲を自分で決め、5日以上の入院で10万円、4日以内の入院で1万円となります。金額に不足感があれば入院時の補償が2倍になる倍額型も選択できます。いずれにせよ人身傷害だけでは不安な人だけ検討すればいい補償です。

JA共済で特徴的なのは季節農業用自動車保障特約の存在です。この特約を付加すると植付機・収穫機・農業用薬剤散布車で事故を起こしても、自動車共済の対人・対物保障に加えて、自損事故特則・被害者救済費用特約等々が適用されます。自損事故でも補償されるため、これらの農業用自動車で農作業をしている人には価値のある特約といえます。

ちなみに2020年の改定で自動車共済でも日常生活賠償責任保険が付加できるようになりました。子供が他人の物を壊した場合に加えて、自転車事故で他人をケガさせた場合も補償されます。火災保険等に特約として付いてない人は付加しても良いかもしれません。

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保険料を他社と比較

この共済の掛け金(保険料)は年齢・免許証の色・使用目的で計算され、新車割引・ASV割引(自動ブレーキ割引)が適用されれば一段と掛け金は下がります。さらにJA共済オリジナルの割引として自賠責共済セット割引・農業用貨物車割引があります。前者は自賠責をJAで加入すると掛け金が7%オフになる割引です。後者は自家用軽貨物車(いわゆる軽トラ)等の農業用貨物車で契約すると掛け金が10%オフになる割引です。

それでは具体的に掛け金は何円で他社より安いのか否か確認していきます。まず初めて自動車保険に加入するケースですが、保険料はノンフリート等級が6等級で計算されます。6等級からスタートして無事故なら等級が上昇して保険料が下落します。6等級・トヨタのヤリス・人身傷害3000万円・車両保険なし・走行距離9000キロ未満等の同条件で、23歳のみブルー免許で30歳・40歳はゴールド免許でシミュレーションして、保険料を一覧表で比較しました。

6等級で初めて加入する人の23歳・30歳・40歳の保険料の比較一覧表(ソニー損保・アクサダイレクト・三井ダイレクト・チューリッヒ・イーデザイン損保・セゾン自動車火災・SBI損保・東京海上日動火災・損保ジャパン・三井住友海上・共栄火災海上・セコム損保・JA共済・全労済・楽天損保・あいおいニッセイ同和・au損保)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

JA共済の自動車共済の年間の掛け金は、30歳・40歳だと他社と比べて中間か少し高い部類に入ります。ただ、23歳(ブルー免許)だと状況が異なります。掛け金はSBI損保・アクサ・チューリッヒに次いで安くなっており、保険料の安さをウリにした他のダイレクト型の自動車保険よりも安いです。

次に他社の自動車保険から乗り換える場合ですが、初めて加入する場合と異なり乗り換え前のノンフリート等級が引き継がれます。30歳は23歳の新社会人から無事故だと仮定して13等級、40歳・50歳は最も高い20等級で保険料を比較しました。車種はトヨタヤリスで免許証の色は全てゴールドでシミュレーションして、保険料を一覧表で比較しました。

13等級か20等級で他社からの乗り換えで加入する人の30歳・40歳・50歳の保険料の比較一覧表(ソニー損保・アクサダイレクト・三井ダイレクト・チューリッヒ・イーデザイン損保・セゾン自動車火災・SBI損保・東京海上日動火災・損保ジャパン・三井住友海上・共栄火災海上・セコム損保・JA共済・全労済・楽天損保・あいおいニッセイ同和・au損保)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この場合のJA共済の掛け金を他社と比べると、相対的には安くも高くもない水準になっていました。とはいえ40・50歳の掛け金に目を向けると、イーデザイン損保・アクサ・ソニー損保等より安い点は意外です。

以上を踏まえると、保険料は初めて自動車保険に加入する20代の人には安いといえます。さすがにSBI損保を逆転するのは難しいでしょうが、自賠責割引・農業用貨物車割引を駆使すればチューリッヒ・アクサよりも安い保険料になります。その一方で乗り換えを検討している人には保険料面ではイマイチです。

メリット

この共済のメリットは、初めて加入する20代・ブルー免許だと掛け金が他社より安い点が挙げられます。前述したように自賠責割引・農業用貨物車割引が適用されれば一段と安くなり、さらに年間走行距離が長い人だと結果的に他社より一段と安くなります。クルマスターは年間走行距離が1万キロでも2万キロでも保険料は同じです。しかし、JA共済より安いチューリッヒ・アクサ・SBI損保は年間走行距離が長いと保険料が上昇します。

JA共済 クルマスターの割引項目(出典:自動車共済 クルマスター リーフレット2022.4月版)

先ほどの保険料の比較図では統計で平均値であった年間走行距離9000キロを採用しましたが、1万キロ、2万キロ以上となれば少なくともチューリッヒやアクサよりは安くなります。また、年間走行距離で割引される自動車保険は、年間走行距離が予想を超えると手続きや追加費用が発生します。こういった心配がJA共済にはありません。

組合員になる時に支払う出資金に配当金があるのもメリットです。配当が支払われない年があるという注意付ですが、基本的には出資金に対して毎年1~3%分の配当金が受け取れます。1%だとすると1万円なら100円ですが、100万円なら1万円が受け取れます。地域によって差はありますが、多くのJAでは出資金は最大300万円か500万円となっています。仮に500万円なら毎年5万円が受け取れるため、自動車共済で支払った掛け金が配当金で丸々戻ってきます。

ちなみにJAの組合員になるとJAの各サービスが利用できます。JAは地域毎に差がありますが、JAで野菜を買うとポイントが貯まったり、組合員向けの自然と触れ合うイベント(果物狩りなど)があったりします。子供が自然と触れ合う機会にしたり、新鮮な野菜・果物が手に入れられると考えると、人によってはメリットかもしれません。

JA共済の組合員の特典(出典:JA西三河 組合員の募集リーフレット)

デメリット・注意点

この共済のデメリットには、まずは他社よりも掛け金が高い点が挙げられます。掛け金が初加入で20代(ブルー免許)を除いて、どういう状況でもJA共済よりも安い他社の自動車保険があり、各種割引を駆使しても最安値の自動車保険を逆転できません。そもそも農業従事者向けの割引は准組合員は農業を始めない限りは利用できません。

さらに出資金はメリットもデメリットもあります。各地のJAは基本的に独立採算で、准組合員になるのは居住地(地元)のJAで選べません。各地のJAで経営状況は異なり、配当金が1%以下だったり配当金が増資に回されることがあります。組合員となるJAの経営状況・出資金と配当について確認しても、昨今の日本の農業情勢は厳しいため今後も維持できるか不安はあります。

JA八戸の出資配当金(出典:JA八戸 令和2年度出資配当金について ご通知)

また、補償面では農業従事者向けの補償はオリジナリティがありますが、准組合員には無関係です。准組合員が利用できる特約は他社にもあるものばかりで目新しさはありません。さらに他社では通報・連絡機能を備えたドライブレコーダーや、衝撃検知センサーとアプリの連動等をしています。この保険ではアプリはあれど、ITによる事故対応のスピード化は実施されていません。

評判・苦情

JA共済の2021年度(2021年4月~2022年3月)の決算資料によると、損保分野の短期共済の契約件数は1832万件から1847万件に増加し堅調でした。ただ、その中で自動車共済は817万件から813万件に微減しており少し不調です。他社では保険料ベースですが、数%伸びているケースが多いため契約数からすると評判は良くありません。

次に苦情数のデータですが、JA共済全体に寄せられた苦情数は5043件(2021年度累計)です。苦情の中で最も多い3562件を占めたのが共済金の支払いに関する苦情です。自動車事故の処理にかかる経過連絡がない等が含まれます。JA共済への苦情は他の損保会社と異なり生命共済等も含むため、5043件が絶対値として多いか少ないかは判断できません。

JA共済に寄せられた声の内訳(出典:JA共済連の現状2022・JA共済ディスクロージャー誌)

また、2021年にJA共済が実施した7.6万人を対象としたアンケート調査では、事故対応全般の満足度は満足と答えた人が73.3%で、やや満足と答えた人が22.4%でした。合計すると満足した人が95.7%で、不満がある人は4.3%となり上々の結果です。とはいえ他社も自主調査では満足した人が90%後半で差はありません。

自主調査で満足度が低めなのは「事故解決の経過報告」の94.6%と、「事故解決までの時間」の94.8&でした。このあたりは苦情の内訳とも整合性が取れているため信憑性があります。

これらのデータはJA共済が発表した数字のため客観的なデータが欲しいところですが、1.3万人を調査対象としたオリコンの「自動車保険 総合ランキング2022」、J.D.パワーの「2021年 自動車保険契約満足度調査」ではJA共済は調査対象外となっています。

以上のデータから考えると、JA共済の評判は未知数な面があるものの、総合的には普通か少し悪い可能性があります。JA共済が発表したデータからは普通と考えられますが、それほど新契約が伸びていない点からすると評判が悪い可能性が示唆されています。特に事故解決までの経過報告がまばらであったり、事故解決までの日数が他社より長い点に注意が必要でしょう。

総合評価・おすすめか?

結論としては、JA共済の自動車共済はイマイチな保険です。農業従事者といった一部の人は検討の余地はありますが、それでも保険料面・補償面からはオススメし難いです。評判面でも未知数な面があり、実際に加入して(+事故での対応を見て)みないと分からないでしょう。

そのためJA共済以外の保険も検討した方が賢明です。保険料の安さならチューリッヒ・アクサ・SBI損保等が候補になります。事故対応等も考慮するなら保険料は高いものの顧客満足度の高いソニー損保、保険料は安めでバランスの良いセゾン自動車火災(おとなの自動車保険)も候補になります。保険料度外視なら最大手で顧客満足度も高めの東京海上のトータルアシストも検討しても良いかもしれません。