共栄火災海上 KAPくるまるを比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- 共栄火災海上
- 名称:
- KAPくるまる
- 免許の色:
- 割引あり
- 走行距離:
- 割引なし
- オリコン:
- 14位 / 16社中
- 特徴:
- おおきな安心でくるまれる
共栄火災海上は農協や中小企業を中心に顧客を持つ保険会社で、JA・農林中金・信金中央金庫が出資している関係もあり、農林水産業の活発な北海道・東北・北陸・九州で高いシェアを占めています。その関係で北海道放送の筆頭株主であったり、福岡でマラソン大会を特別協賛したりしています。
自動車保険は2009年に「KAPくるまる」という名称で大幅リニューアルして、2022年現在まで継続して販売をしています。それでは以下で補償内容・保険料・メリット・デメリット・評判等を解説し他社の自動車保険と比較していきます。
補償内容・特約
KAPくるまるでは対人賠償・対物賠償・人身傷害・無保険車傷害・対物超過が自動付帯(自動セット)となり、その他の補償は任意で付加できます。その他の補償には車両保険の他、弁護士費用等補償・搭乗者傷害・車内携行品補償などがあります。
基本補償だけでも十分ですが、特約を付加することでケガの補償・車の補償・その他の補償を拡充できます。ケガ関連では搭乗者傷害保険に加えて「くにまるペットくん」という特約があります。この特約を付加すると、事故でペットがケガをすると最高5万円、死亡すると葬儀費用として10万円と墓地代で3万円が補償されます。
車の補償は事故での代車費用を補償する特約、車内の物が壊れた場合の携行品補償の特約、地震・津波等で自動車が全損した時に補償される特約などがあります。その他の補償では、もらい事故で保険会社に出番が無い時に活躍する弁護士特約、子供が他人の物を壊した場合の個人賠償責任補償特約、自転車事故での怪我を補償する自転車特約等があります。
上述の特約のうち代車費用補償特約を付加すると、ALSOK現場急行サービスが利用できます。ALSOKの対応員が現場の安全確保や事故車の保全・写真撮影等をしてくれます。さらに代車特約に加えて車両保険・車内携行品特約を付加すると「KAPくるまるワイド」の対象となります。ロードサービスのサービス費用の限度額が2万円から5万円にアップし、宿泊費用も1万円から3万円にアップします。さらに法律相談「ほっとアドバイザー」も利用できます。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は年齢・免許証の色・使用目的で計算されますが、年間走行距離は無関係です。そのため年間走行距離が長い人ほど保険料にお得感(メリットの箇所で後述)があります。さらに保険料は新車割引・ASV割引(自動ブレーキ割引)等があり、20等級を継続する等で適用される長期優良契約割引(3%割引)もあります。
それでは具体的に保険料は何円で他社より安いのか否か確認していきます。まず初めて自動車保険に加入するケースですが、保険料はノンフリート等級が6等級で計算されます。6等級からスタートして無事故なら等級が上昇して保険料が下落します。6等級・トヨタのヤリス・人身傷害3000万円・車両保険なし・走行距離9000キロ未満等の同条件で、23歳のみブルー免許で30歳・40歳はゴールド免許でシミュレーションして、保険料を一覧表で比較しました。
共栄火災海上の自動車保険の年間保険料は、他社と比較して最も高いです。特に23歳(ブルー免許)では1社だけ10万円を超え、保険料の高さでは際立っています。他の30歳・40歳でも最安値圏の保険との絶対額の額は小さくなるものの、他社の数倍近い保険料です。特に同じ代理店型の保険と比較しても3万円以上高くなっています。
次に他社の自動車保険から乗り換える場合ですが、初めて加入する場合と異なり乗り換え前のノンフリート等級が引き継がれます。30歳は23歳の新社会人から無事故だと仮定して13等級、40歳・50歳は最も高い20等級で保険料を比較しました。車種はトヨタヤリスで免許証の色は全てゴールドでシミュレーションして、保険料を一覧表で比較しました。
この場合の共栄火災海上の保険料を他社と比べると、初めて加入する時よりはマシですが、相変わらず他社よりも高い保険料なのは変わりません。特に30歳ではワーストの高さです。ただ、40歳・50歳といった年齢が上昇するとソニー損保・あいおいニッセイ・東京海上よりも安くなるのは悪くはありません。
以上を踏まえると、初めて自動車保険に加入する人にも乗り換えする人にも保険料が高い保険といえます。特に初めて加入する人には保険料面での利点は完全にありません。乗り換えでも保険料は高いのは同様のため、この高い保険料に見合うメリットがあるのか確認する必要があります。
メリット
この保険のメリットは走行距離による割引が無く、長距離を走行する人に有利な点が挙げられます。30歳・走行距離9000キロで乗り換えだと、共栄火災海上とソニー損保の保険料の差額は10000円です。それが走行距離を16000キロ未満にすると差額は2000円に縮まります。また、走行距離で割引されないため、予定走行距離を超えても手続き・差額の支払いが不要です。
さらに保険料面では「ちょうき安泰」という仕組みもメリットです。ちょうき安泰で3年契約にすると、3年間は事故を起こしても保険料が上昇しません。他社で1年契約にして事故を起こすと、翌年の保険料は1.5~2倍に膨らむケースがあります。ちょうき安泰を使うと事故の翌年、1年目の事故なら翌々年まで保険料は変わりません。3年間は更新手続きも不要で手間を省けます。
補償面でいえば、いくつかの他社の自動車保険には無いペットの補償、ALSOK現場サポートもメリットでしょう。代車特約・車内携行品特約を付加すると拡充されるロードサービスも、他社では特約を付加しても追加メリットが無い点からすればメリットかもしれません。
ちなみに2022年からは他社と同じように自動運転中の事故はノーカウント事故(等級が下がらない)となった他、個人賠償責任特約と代車費用特約が拡充されました。前者は配偶者や子供の住宅が含まれるようになり、1人暮らしの子供がアパートで水漏れで階下に損害を与えても補償されるようになりました。後者はタイヤ単独損害でも代車費用が補償されるようになりました。細かい改定ですが、補償が拡充されているのは良い点です。
デメリット・注意点
この保険のデメリットには、まずは保険料が高い点が挙げられます。特に初めて加入する人の保険料は、既述したように目も当てられないほどの高さです。走行距離が長い人に有利といっても、アクサダイレクトで走行距離が15000~20000キロにすれば共栄火災より保険料は2万円以上安くなります。また、この走行距離が長いと有利なのは他の代理店型の自動車保険も同じで共栄火災だけではありません。
ちょうき安泰もベースとなる保険料が高いため、そもそも高い保険料を3年間も支払うと考えるとメリットには感じないでしょう。事故で保険料が変わらないといっても3年目に事故を起こせば、次の3年間の保険料は一段と高くなります。事故を起こしても良いのは1年目か2年目だけという意味不明な状態になります。
さらにロードサービスはALSOK現場急行サービスも、他社では何かしらの特約を付加せずとも標準サービスで利用できます。2つの特約を付加するとサービスが拡充されますが、そもそも高い保険料であるため適用されるハードルが高い感があります。ちょうき安泰を利用するだけ、ないしは標準サービスにしてもいいぐらいです。
また、他社の代理店型の自動車保険は次々とドラレコサービスを展開している中、この保険ではIT化の気配を感じません。他社ではドラレコで衝突検知と自動連絡、安全運転分だけ保険料割引等があります。保険料からすれば、ドラレコも標準サービスに組み込んでもらいたいぐらいです。
評判・苦情
共栄火災海上の2021年度(2021年4月~2022年3月)の決算資料によると、保険会社の収入を示す正味収入保険料は前年度の1669億円から1701億円に1.9%ほど増加していました。その中の自動車保険は624億円から633億円に1.3%ほど増加していました。他社の多くも増加しているため、契約状況からすると評判は普通です。
次に日本損害保険協会の苦情数のデータですが、共栄火災海上全体に寄せられた苦情数は8415件(2020年度累計)です。自動車保険で同規模のシェアであるアクサの3.6万件よりは少ないのですが、セゾンの1985件よりは多めです。直近の四半期の苦情では、2176件のうち保険金に関する苦情が60%と最も高い比率を占めていました。他社も保険金に関する苦情が多いです。苦情面からすると評判は普通か少し良くないかもしれません。
次に1.3万人を調査対象としたオリコンの自動車保険 総合ランキング2022ですが、共栄火災海上は16社中14位と下位に沈んでいます。この調査では手続き・商品内容・保険料・事故対応・ロードサービスが評価項目ですが、いずれの項目でも平均点をクリアしていません。
その中でも平均点からの乖離が大きいのは保険料とロードサービスです。保険料は前述の保険料の比較からも明らかですが、契約者からしても保険料が高いのが周知されており、大きな不満となっているのが分かります。さらにロードサービスも低評価で、ここまで低いとサービス内容だけではなく現場対応が悪い、ないしは駆けつけるまでの時間が長い等が考えられます。
その一方で調査会社のJ.D.パワーの「2021年 自動車保険契約満足度調査(代理店系保険会社)」では、共栄火災海上は8社中1位とトップに輝いています。この調査も4748人が調査対象のフェアなものですが、オリコンと相反する結果となりました。この調査では「顧客対応」「保険証券」の2項目で最高評価を得て、共栄火災が1位となったようです。
以上のデータから考えると、共栄火災海上の評判は良い可能性もありますが、比較的悪い可能性の方が高そうです。JDパワーで高評価といっても牽引役は顧客対応と保険証券です。オリコンでは全ての項目で低評価のため、JDパワーの調査では他の項目が少し良い程度でも1位になる可能性はあります。自動車保険で最終的に重要なのは、事故対応・保険金が支払われるかであり、それに見合った保険料が提供されるかです。そう考えれば顧客対応・保険証券で高評価でも大した意味は無いでしょう。
総合評価・おすすめか?
結論としては、共栄火災海上の自動車保険はイマイチな保険です。保険料が高いのに見合ったメリットが見出せないからです。せめて他の代理店型のように保険料は高めの分だけ事故対応が良いといった特徴が欲しかったところです。
そのため共栄火災海上に自動車保険を検討している人は、他社の自動車保険も検討した方が良いでしょう。保険料の安さを突き詰めるならチューリッヒ・セコム損保が候補になります。保険料は高いものの顧客満足度の高いソニー損保、保険料は安めでバランスの良いセゾン自動車火災(おとなの自動車保険)も検討しても良いかもしれません。同じ代理店型なら東京海上か損保ジャパンが候補になります。