ソニー損保の新ネット火災保険を比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- ソニー損保
- 名称:
- 新ネット火災保険
- 基本補償:
- 火災
- サービス:
- カギ・水回りの補修
- オリコン:
- 1位 / 12社中
- 特徴:
- 安心を、もっと安く
ソニー損保の新ネット火災保険は、2018年10月から販売を開始した火災保険です。当時はダイレクト型では国内初の地震上乗せ特約がセットできる保険でしたが、現在はダイレクト型の他社も追随しており、大手の代理店型の火災保険だと地震補償の上乗せは珍しくありません。
ただ、ソニー損保も建物の築年数を細分化して保険料を安くしたり、個人賠償補償の補償内容を拡充したりと細かい改定・改善をしています。それでは以下で保険料に加えて補償内容・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社の火災保険と比較していきます。
補償内容・特約
この保険は火災(落雷含む)のみが基本補償で、風災(雪災含む)・水災・盗難・水濡れは自分で選べる補償になっています。建物と家財で災害を選択できるため、建物は火災・風災・水災の補償を付けて、家財は火災・水災の補償のみにする(風災で家財が壊れないと判断する)という手もあります。
火災の補償の他に費用の補償が自動セットになっています。火災後の残骸の撤去費用となる残存物片付け費用の補償、地震で火災が発生した場合に受け取れる地震火災費用の補償、水道管凍結時の修理費用となる水道管修理費用の補償、火災後に損害の拡大を防止するために必要な費用(消火器の購入費等)となる損害防止費用の補償がセットになっています。
その他の補償(特約)は自分で付加するか選択します。自宅の火災で隣家に損害が出た場合の類焼損害・失火見舞費用補償特約、自宅の家財が不慮の事故で損壊した場合の破損・汚損損害等補償特約、災害時に通常の保険金とは別に受け取れ生活費等に充てられる臨時費用保険金補償特約、自転車事故で加害者となったり子供が他人の物を壊した場合に役に立つ個人賠償責任補償特約があります。さらに地震保険の補償が100%になる地震上乗せ特約があります。
また、水まわり・カギの緊急かけつけサービスも付いています。トイレ・キッチン・浴室の詰まりの応急処置や、鍵の紛失・盗難時に玄関の開錠をしてくれます。窓ガラスが割れた場合にガラスの撤去や清掃もしてくれます。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は東京都・戸建て(木造新築)・90平米で、保険金額を建物1500万円・家財1000万円に設定すると、5年一括払いで185,900円となります。同じ条件で居住地を大阪にすると、保険料は5年一括払いで220,753円に急上昇します。マンションで70平米・建物1000万円・家財1000万円だと、東京は45,523円で大阪は51,675円になります。
次に保険料が他社より安いのか否か確認していきます。戸建ての条件は木造新築・90平米・建物1500万円・家財1000万円、マンションの条件はコンクリート造・70平米・建物1000万円・家財1000万円としました。この条件で破損汚損は補償外・地震保険なし(地震保険の保険料は各社同じのため)で、5年一括払いでシミュレーションしました。さらに関東(東京都杉並区)と関西(大阪市城東区)に分けて保険料を一覧表で比較しました。
この保険の保険料を他社と比較すると、戸建てだと圧倒的に高い部類に入ります。関東と関西での保険料の差も大きく、他社なら1~2万円の差であるところが、この保険だと4万円の差があります。関西圏に住む人は保険料を一層高く感じるでしょう。その一方でマンションの保険料は、他社と比べて平均か少し安い部類に入ります。マンションなら関東・関西での差も小さいです。
以上を踏まえると、新ネット火災保険の保険料は戸建てだと高くマンションなら普通といえます。戸建てについては代理店型の火災保険よりも保険料が高く、ダイレクト型だから保険料が安いとはいえません。あくまで保険料は補償内容を削って安くする保険といえそうです。
ただ、マンションだと全体的には安い部類に入り、さらに同じく補償が選択できるSBI損保よりも保険料は安く、セゾン自動車火災とも数千円の差であるのは悪くありません。とはいえ最安値圏にある楽天損保等と比べると保険料が高くなっており、その分だけメリットがあるのか確認が必要でしょう。
メリット
この保険のメリットは、まずは補償内容を自分で細かく選択できる点が挙げられます。どの補償が必要かは建物の形態(戸建てかマンション)に加えて、居住地・家族構成・地域の治安等にも左右されます。マンションなら水災の可能性は低く、戸建てでも高台にあったり海・河川から離れていれば水災の可能性は低めです。子供がいない、ないしは子供が大きければ破損・汚損の補償を外すのも手ですし、地域の治安が良ければ盗難の補償を外すのも手です。
建物と家財で災害を選択できるため、風災は建物のみ補償、水濡れも建物のみ補償といったカスタマイズも可能です。風災で家財までは壊れない、水濡れで濡れても多少の家財なら大丈夫(家電は壊れてもソファは濡れても大丈夫)といった考え方もあります。建物や建物の付属品が盗難されないと考えれば、盗難を家財だけに絞るのも1つの手です。
下図はソニー損保のリサーチレポート「戸建て派vsマンション派の火災保険実態調査」ですが、この調査によると火災保険の加入時の検討度は低く、補償内容をリスクに応じて十分に吟味していない可能性が示唆されています。住宅購入にあたっては引っ越し・家具の新調等の作業に加えて、各種手続き等もあるため当然の結果かもしれません。
同調査では戸建て・マンションの人は共に約8割の人が不動産会社・金融機関・代理店経由で火災保険に加入しており、それが検討度・適正度の低さに繋がっていると考えられます。この保険を含むダイレクト型の火災保険の加入は少なく、そこまで住宅購入者の手が回っていない可能性が高いです。火災保険の満期を迎えて火災保険を見直す人は、適切な補償内容による保険料の削減が見込めそうです。
その他に地震上乗せ特約があるのもメリットです。地震保険は火災保険金の最大50%までの補償となりますが、この特約を付加すると地震でも100%の補償が受けられます。他社でも同様の特約があることが多くなってきましたが、同様の特約が無い火災保険もあるためメリットといえます。
デメリット・注意点
この保険のデメリットには、まずは保険料が高い点が挙げられます。特に戸建てだと保険料は高く、ワーストに近い金額です。補償内容を多少削っても他社の火災保険より高い可能性があり、それなら補償が広い分だけ他社の方が良いといえます。例えば、この保険で火災・風災・水災のみの補償にした場合の保険料と、他社で全ての災害が補償される場合の保険料が同額なら、後者の方が安心感があるのは間違いないでしょう。
さらに保険料を安くするにしても、選択できる補償には限界があります。風災は雹災・雪災とセットで、水濡れは物体の飛来・騒擾とセットです。雪が降らない地域なら雪災を外したいところですが、雪災単体では外せません。物体の飛来の心配が無い人でも水濡れとセットのため物体の飛来単体では外せません。費用の補償もSBI損保のように個別で費用補償を外せません。
また、特約は一通り揃ってはいるものの不足感もあります。他社の多くの火災保険にある弁護士費用特約(事故時に弁護士に相談できる)、バルコニー等修繕費用補償特約(バルコニーが破損すると補償される)が見当たりません。その他にライフライン停止時仮すまい特約や特定機械設備水災補償特約等の特徴的な特約が他社には存在します。
ライフライン停止時仮すまい特約は自宅に損害が無くても避難した場合(電線が切れて停電状態が続いた場合など)に、ホテル等の宿泊費が補償されます。特定機械設備水災補償特約は蓄電池・EV充電器等が水災で故障した場合に補償されます。
カギ・水回り等の応急処置サービスも最低限だけ揃っている感があります。他社には電気ガス設備トラブル・蜂の巣の駆除・PCの不正アクセス時のデータ復旧サービスといったサービスもあります。ホテルやクリーニングが優待料金になるソニー損保クラブオフサービスも、他社の類似のサービスと同等レベルで特筆すべき内容ではありません。
評判・苦情
ソニー損保の2021年度(2021年4月~2022年3月)の決算資料によると、保険会社の収入を示す正味収入保険料は前年度の1296億円から1395億円になり7.6%増と好調でした。その中でも火災保険は47億円で前年度から60%増と絶好調です。他社では横ばい・大幅減になったケースもあるため、契約数からすると火災保険の評判は良いです。
価格.com経由の契約数ランキングでも新ネット火災保険は総合順位1位です。戸建て部門でも1位、マンション部門でも2位(1位は楽天損保)と上位で、多くの人から選ばれているのが分かります。マンションでは保険料の安い楽天損保に一歩遅れを取りましたが、多くの人から選ばれているという意味でも評判は良さそうです。
次に日本損害保険協会の苦情数のデータですが、ソニー損保全体に寄せられた苦情数は408件(2021年度累計)でした。売上規模の近い日新火災よりも苦情は多めです。要望も加えた苦情の中身は「商品内容や契約条件」と「変更手続き・解約手続き」に関するものが多くなっていました。CM/広告内容の分かりにくさ、保険金の対応遅れ等にも不満がありそうです。
次にオリコンの火災保険 総合ランキング2023(実際にサービスを利用した約8600人が調査対象)ですが、ソニー損保は12社中1位とトップでした。住居別部門結果でも戸建て・マンションで共に1位でした。価格コムは新規契約数の順位のため1位を楽天損保に譲りましたが、顧客満足度でいえばマンションでもトップの満足度を得ているようです。
この調査の評価項目は加入手続き・商品内容・保険料・サービス体制ですが、加入手続き・商品内容・保険料・サービス体制の個別項目でも1位でした。ソニー損保は4年連続で1位となっており、実際の利用者からは非常に高い評価・評判を得ているのは間違いないようです。ちなみにJCSI(日本版顧客満足度指数)でもソニー損保は損保分野で1位でした。
その一方で個別のクチコミでは「ネットのみ対応で紙の資料がない」「サポートセンターの説明が担当者によって差異がある」「ネットの内容が分かりにくく操作も面倒」というネガティブな意見もありました。HPの操作性や手続き完了までの煩雑さに問題がありそうです。
以上のデータから考えるとソニー損保の評判は良さそうで、火災保険の評判も同様に良さそうです。気がかりなのは各手続きについてでしょうか。インターネットでも手続きが面倒だったり操作性が良くないと感じる人がいるようです。また、保険料は評判面では高い評価を得ていましたが、前述した保険料比較では明らかに保険料は高いため矛盾しています。他社と比較せず補償を削って保険料が安くなった気がしている人が多いのかもしれません。
総合評価・おすすめか?
結論としては、ソニー損保の新ネット火災保険は総合的には悪くない保険です。補償内容を選択でき、評判が非常に良いからです。ただし、補償内容は平凡で保険料も高めという点を考慮すると、他社の安い保険や保障内容が充実した保険にするのも手です。評判面を過信せず、本当に自分に合った保険なのか判断・確認するのが重要です。
この保険と異なり保険料の安さを追求したい人は、戸建てなら都道府県民共済・日新火災等が候補になります。マンションなら楽天損保・ジェイアイ傷害火災あたりも検討しても良いでしょう。保険料より補償内容・評判等も重視するならソニー損保以外に東京海上日動が候補になります。