チューリッヒ少短 犬のがん保険を比較・評価

チューリッヒ少額短期保険 犬のがん保険
オススメ度:
2
保険会社:
チューリッヒ少額短期保険
名称:
チューリッヒ 犬のがん保険
補償割合:
100%
保険金請求:
郵送
オリコン:
対象外 / 12社中
特徴:
愛犬の暮らしを大切にしたいあなたへ

犬のがん保険はチューリッヒ少額短期保険が募集・販売しているペット保険です。チューリッヒ少額短期保険は、チューリッヒ保険が2018年にライフサポートジャパン少額短期保険を買収して誕生しました。ペット保険の「犬のがん保険」は2022年7月から販売を開始しました。

当初は「犬のがん保険(骨折・脱臼プラス)」という名称でしたが、2023年2月から「犬のがん保険」に変更されました。名称の変更後も骨折と脱臼は補償の対象になっています。それでは以下で補償内容・保険料・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社のペット保険と比較していきます。

補償内容・特約

この保険は名称の通り、犬(満11歳未満)のみが加入でき猫や他の動物は加入できません。補償される病気・ケガはがん・良性腫瘍・骨折・脱臼に限られ、他の病気やケガは補償されません。具体的には病気なら皮膚病・外耳炎・胃腸炎等、ケガなら誤飲・ヤケド等は補償されません。さらに脱臼の補償も外せるため、補償をがん・良性腫瘍・骨折のみに絞れます。

チューリッヒ犬のがん保険の補償内容(出典:チューリッヒ少額短期保険 公式HP)

がん・良性腫瘍・骨折・脱臼の治療については、通院・入院・手術の費用の100%が補償されます。通院・入院・手術に1日(1回)あたりの限度額や、年間○回までという回数制限も存在しません。ただし、年間限度額は100万円までで、100万円を超えた分は補償されません。さらに保険期間を通じて保険金は通算300万円までのため、1歳で骨折して100万円、7歳で脱臼して100万円、14歳でがんで100万円を受け取ると、それ以降は保険金は受け取れません。

その他に診断書等費用保険金があります。契約者がチューリッヒ少短に保険金を請求する際に、獣医師に診断書等を書いてもらった場合には、その費用が1万円まで補償されます。

その他に付けられる特約は無く、契約者向けのサービスには散歩アプリ「one dog」があるだけです。このアプリで散歩の記録やワクチン接種状況等の記録・通知が利用できます。また、新規契約者向けにキャンペーンが時折あり、以前のキャンペーンでは抽選で最大111名にパナソニックのペットカメラが当たるという内容でした。

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保険料を他社と比較

この保険の保険料は脱臼ありなし・犬のサイズ・年齢によって決まります。脱臼の補償ありだと保険料は月額800~1500円(年間9600~18000円)ほど高くなります。犬のサイズは小型犬・中型犬が安く、大型犬になると2倍以上の金額になります。

チューリッヒ犬のがん保険の保険料一覧表(出典:チューリッヒ少額短期保険のペット保険「犬のがん保険」商品パンフレット 2023年2月版)

この保険の保険料で特徴的なのは、小型犬と中型犬が同じ金額、保険料が上昇するのは3歳ごと、12歳以上は保険料が上昇せず一定額という三点です。中型犬が有利であり、保険料の負担がペットが年齢を重ねても急激に上昇せず負担は抑えられる仕組みになっています。

次に保険料が他社より安いのか否か確認していきます。ペットの年齢は0歳・5歳・8歳時で比較し、品種は犬はトイプードル、猫はスコティッシュ・フォールドとしました。各社の保険料は70%補償のプランの金額で、保険料は月払いよりも安くなる年払いの金額で一覧表で比較しました。さらに犬で0~14歳まで14年間契約した場合の合計保険料も比較しました。

ペット保険の犬猫の0歳・5歳・8歳時・0~14歳・平均値の保険料の比較一覧表(アニコム損保・アクサダイレクト・アイペット・ペットメディカルサポート・ペット&ファミリー・日本ペット・FPC・あいおいニッセイ同和損保・SBIいきいき少短・SBIプリズム少短・au損保・楽天損保・チューリッヒ少短・イーペット少短・イオン少短・リトルファミリー少短)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この保険の保険料は他社と比較すると年齢により高安が分かれます。犬は0歳・5歳では相対的に安い保険料ですが、8歳では平均程度になります。補償内容を絞っている分だけ安くて当然なのですが、そのわりには最安値ではありません。

さらに0~14歳(14年間)まで加入した場合の合計保険料は68.6万円で、安いものの最安値ではありません。この保険よりも合計保険料が安く、がん・良性腫瘍・骨折・脱臼以外の通院入院手術を補償する保険が他社にはあります。

以上を踏まえると、犬のがん保険の保険料は安いものの少し不満が残る金額です。補償が100%ということもあってか、補償内容を削ったわりには他社を圧倒する安さではありません。この点をどう考えるか、続いてメリット・デメリットと記述していきます。

メリット

この保険のメリットは、まずは1日・1回あたりの限度日数や年間の日数制限が無い点が挙げられます。他社には入院は1日1万円・手術は1回14万円までと細かく決められている保険があります。そういった制限が無いため、この保険なら数日の入院で治療費が数十万円になっても十分な補償が受けられます。

補償はがん・良性腫瘍・骨折・脱臼に絞られますが、それでも高額治療には十分な備えになります。アニコム損保の家庭どうぶつ白書2022によると、トイプードルの他犬種に比べ罹りやすい疾患ランキングで1位は糖尿病で、2位は骨折(前肢)です。それも糖尿病と骨折の年間診療費の平均額が20万円超と突出しています。

トイプードルの他犬種に比べ罹りやすい疾患ランキング(出典:アニコム損保 家庭どうぶつ白書2022)

糖尿病は飼い主が与える食事や散歩等の運動でコントロールして予防もできますが、突発的な事故等での骨折は予期せぬケガで予防が難しいでしょう。その意味では病気・ケガが絞られていても、十分に高額治療への備えになります。

補償面でいえば診断書等費用保険金があるのもメリットです。他社には治療費の補償のみで、診断書等は費用が発生しても補償されないケースがあるからです。金額こそ1回あたり1万円と少額ですが、地味に良い点だといえるでしょう。

また、保険料は最安値ではありませんが、中型犬に有利な点は見逃せません。他社の保険では中型犬だと小型犬よりも月額で数千円(年額で数万円)は高くなりますが、この保険なら中型犬でも保険料は小型犬と同じです。中型犬で保険料が高いためにペット保険に二の足を踏んでいる人には朗報かもしれません。

デメリット・注意点

この保険のデメリットには、まずは補償される病気が限定される点が挙げられます。どの病気になるかは飼い主にも分からず、補償されない病気になる可能性も十分にあるからです。例えば皮膚炎は犬に多い病気の1つですが、治療費は年間で数万円かかるケースがあるものの、この保険では補償されません。

前述のトイプードルでは他犬種より罹りやすい病気で骨折が2位(アニコム損保 家庭どうぶつ白書2022より)でしたが、犬種によって異なる点に注意が必要です。チワワだと1位は弁膜症で年間診療費の平均値は13.5万円で、ミニチュア・ダックスフンドだと1位は椎間板ヘルニアで年間診療費の平均値は10.3万円です。柴犬だと1位はアトピー性皮膚炎で年間診療費の平均値は7.3万円で、犬種によってバラつきがあります。

チワワの他犬種に比べ罹りやすい疾患ランキング(出典:アニコム損保 家庭どうぶつ白書2022)

さらに決定的なデメリットとしては、免責金額3万円の存在が挙げられます。100%補償と謳っていますが、治療費から免責金額の3万円が差し引かれた額が保険金となります。治療費が50万円等なら3万円を支払っても保険があって良かったと感じるでしょうが、治療費が15万円なら有り難味が薄れる人もいるでしょう。

また、治療費が10万円なら他社の70%補償の保険と保険金は同額になります。この保険だと10万円から免責金額を差し引いた7万円が保険金となり、70%補償の保険(免責金額なし)でも10万円の70%の7万円が受け取れます。加えて、この保険だと3万円以下の治療は補償外ですが、他社の保険なら数千円から補償されます。病気によっては長期の通院治療となる点を踏まえると、この免責金額は大きなデメリットといえるでしょう。

サービス面では、他社のようなペットの健康について無料相談できるサービスがありません。保険金請求もマイページからの申請後、診療明細書などの書類の送付が必要となります。アニコム・アイペットのように窓口精算はできません。

ちなみにチューリッヒ少額短期保険は少額短期保険業者である点もデメリットです。少額短期保険業者は契約者保護機構に加入しておらず、経営破綻すると供託金が契約者等で分配するだけです。経営破綻すると最悪の場合は保険金が受け取れない可能性があります。その点、チューリッヒ少短は世界で展開するチューリッヒグループが付いているため過度な心配はいりませんが、一応は留意しておいた方が良いでしょう。

評判・苦情

チューリッヒ少額短期保険の2021年度(2021年4月~2022年3月)の決算資料によると、保険会社の収入を示す正味収入保険料は前年度の0.9億円から1.9億円と倍になり絶好調でした。この数字は2022年7月販売開始のペット保険は含まれていませんが、他社には横ばい・微増のケースもあるため業績からすると評判は悪くはありません。

ただし、直近の3年度を見ると純利益がマイナス(純損失)となっているのが気がかりです。損失額は年々縮小傾向にあるとはいえ、もしも縮小が止まるようなら将来的に保険料の値上げ・補償内容の改悪の可能性があります。リリースから間もないペット保険が対象になるかは分かりませんが。。。

チューリッヒ少短の直近の3事業年度における主要な業務の状況を示す指標(出典:2021年度ディスクロージャー誌「チューリッヒ少額短期保険株式会社の現状2022(2021年度決算))

その他に価格.com経由の新規契約数ランキングやオリコンのペット保険 総合ランキング2022(実際に保険を適用した4506人が調査対象)でも確認したいところですが、この保険は調査の対象外でした。まだ販売開始から十分な年数が経過していないのが原因でしょう。

以上のデータから考えると犬のがん保険の評判は未知数です。とりあえず今後の契約数が伸びてくるかが焦点でしょう。チューリッヒは2023年5月には埼玉で開催されたジャズフェスティバルに協賛しドッグランを設置する等、保険の知名度向上と周知を進めています。その一方で業績面では純利益がマイナス1.9億円のため、今後も無事に販売を継続できるのかは気がかりです。

総合評価・おすすめか?

結論としては、犬のがん保険は総合的には微妙な保険です。この保険の特性上、全ての人に適したペット保険ではないのは確かです。犬種によってはトイプードルやポメラニアンのように骨折が多いため、犬種によっては使い道がある保険かもしれません。

そうでなければ他社の保険も検討した方が賢明でしょう。保険料の安さでいえば、FPCやリトルファミリー少短のペット保険等があります。通院補償ナシならアニコムのぷちプラン・アイペットのライトプランという手もあります。補償内容・評判等も重視するならSBIいきいき少短・ペットメディカルサポート等のペット保険が検討候補になります。