どうぶつ健保しにあを比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- アニコム損害保険
- 名称:
- どうぶつ健保しにあ
- 補償割合:
- 50% or 70%
- 保険金請求:
- 窓口精算
- オリコン:
- 3位 / 12社中
- 特徴:
- ペット保険シェアNo.1!
どうぶつ健保しにあはペットの長寿化を背景に、アニコム損保が2019年6月から販売を開始したペット保険です。他社のペット保険は加入できても11歳か12歳が限度ですが、この保険には上限はありません。8歳以上なら何歳でも加入できます。
注意すべきは同社のスタンダードなどうぶつ健保ふぁみりぃとは、補償内容・保険金請求等で細かい違いがある点です。年齢以外では同じ保険だと勘違いすると、痛い目を見る可能性があります。それでは以下で、補償内容・保険料・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社のペット保険と比較していきます。
補償内容・特約
この保険は治療費の70%が補償される70%プランと、治療費の50%が補償される50%プランがあります。どちらのプランも通院治療は補償されず入院・手術が補償されます。両者の違いは1日・1回あたりの支払限度額と支払限度日数にあります。70%プランは入院1日あたり14000円(年間20日まで)、手術1回あたり14万円(年間2回まで)となります。
その一方で50%プランは入院は1日あたり10000円(年間20日まで)、手術は1回あたり10万円(年間2回まで)となります。入院と手術をフルに使うと、70%プランは入院・手術合わせて年間56万円までで、50%プランは入院・手術合わせて年間40万円までとなります。
治療費の補償以外にペット賠償責任特約が付けられます。この特約はペットが他人に噛み付いたり、他人の物を壊した場合に1000万円まで補償されます。事故時には自己負担が3000円あり、保険料は年払いで1500円(年齢によって上昇はしない)となります。
その他に、無料の腸内フローラ測定・無料の健康診断がある「どうぶつ健活」、LINEで獣医師やトレーナーに健康・しつけについて無料相談できる「どうぶつホットライン」等があります。腸内フローラ測定で測定結果が良好(犬は実年齢より1歳半以上若い、猫は腎臓結果がとてもよい)だと、通院治療も補償されるどうぶつ健保ふぁみりぃに移行できます。
保険料を他社と比較
この保険の保険料は犬だと品種によってA~Eクラス(Aが安く、Eが高い)に分かれ、年齢が上昇するほど高くなります。犬のクラス分けはサイズだけではなく特性も加味されます。例えばトイプードルは小型犬ですがBクラスで、甲斐犬は中型犬ですがAクラスです。ミックス犬だと体重が10キロ未満でAクラスで、45キロ以上でEクラスになります。
AクラスとCクラスの差は8歳時点で年間保険料は3000円ほどの差ですが、AクラスとEクラスになると年間保険料は1.5万円以上の差があります。Eクラスの犬を飼っている人は相当な保険料負担になります。その一方で猫だと品種は無関係で年齢だけで保険料が決まります。アクサのように猫でも血統種だと保険料は少し高くなるペット保険もありますが、アニコムでは品種は無関係です。
次に保険料が他社より安いのか否か確認していきます。ペットの年齢は0歳・5歳・8歳時で比較し、品種は犬はトイプードル、猫はスコティッシュ・フォールドとしました。各社の保険料は70%補償のプランの金額で、保険料は月払いよりも安くなる年払いの金額で一覧表で比較しました。さらに犬で0~14歳まで14年間契約した場合の合計保険料も比較しました。
この保険の年間保険料は他社と比較すると安い部類に入ります。犬だと最安値の保険とは数千円の差のため、最安値圏の保険ともいえます。猫だと最安値圏ではなく最安値の保険となっています。ただし、この保険は通院補償がない分だけ保険料が安くなっている点に注意が必要です。
犬で8~14歳(6年間)まで加入した場合の合計保険料でも27万円と非常に安いです。同じアニコムのどうぶつ健保ふぁみりぃだと54万円のため概ね半額で済みます。ただし、FPC等は通院補償がありながら合計保険料が20万円台となっているため、補償内容からすると保険料が安いのは見かけだけともいえます。
以上を踏まえると、どうぶつ健保しにあの保険料は見かけ上は安いのですが、補償面やトータルで考えると安くはありません。見かけの保険料が安いだけに、保険料には落とし穴があるともいえます。この保険料を肯定するだけのメリットがあるのか、続けてメリットを確認していきます。
メリット
この保険のメリットは、まずはペットが高齢でも加入できる点が挙げられます。他社のペット保険は加入できる上限年齢は高くても満12歳までですが、この保険は基本的に上限年齢はありません。13歳で加入して14歳時にがんで入院・手術したなら、1年分の保険料で10万円近い補償が受けられることになります。
保険金を請求する方法が窓口精算なのもメリットです。どうぶつ健康保険証を提示するだけで治療費は自己負担分だけとなり診断書等は不要です。どうぶつ健康保険証を忘れる可能性もありますが、その場合には書類を郵送することで保険金を請求できます。
補償・サービス面でいえば、どうぶつホットライン・どうぶつ健活が特にメリットとなります。ペットも高齢になると体調を崩したり病気になりがちですが、どうぶつホットラインはLINEでペットの病気について相談できます。相手は獣医師のため信頼が置けます。電話ではなくLINEで相談するため、尋ねたいことを言いそびれることもありません。
どうぶつ健活は腸内フローラ測定で病気のなりやすさが判定でき、病気のリスクが高いと無料の健康診断が受けられます。腸内フローラ測定は送付される判定キットで採便して、キットを返送するとネットで測定結果が分かります。結果が悪ければ無料の健康診断が受けられ、結果が良ければ通院補償があるどうぶつ健保ふぁみりぃに翌年から移行できます。昨年度は21.8万人の新規契約者のうち、21.1万人(約96%)が検査を申し込んでいます。
忘れがちですが、アニコム損保は損害保険会社である点もメリットです。損害保険会社は「契約者保護機構」に加入しており、経営破綻しても契約者には契約時の保険金・返還金が支払われます。少額短期保険会社は同機構に加入しておらず、破産するケースも少なくありません。その点、アニコムは上場企業であり経営の透明性もあるため、少額短期保険会社のように急に経営破綻する可能性は低いです。
デメリット・注意点
この保険のデメリットには、まずは保険料が高い点が挙げられます。前述したように通院補償がある他社の保険より保険料は高く、保険料が安いのは見かけだけです。腸内フローラ測定の結果次第では通院補償があるどうぶつ健保ふぁみりぃに移行できますが、当然ながら保険料は高くなります。どうぶつ健保ふぁみりぃには前年度に保険を利用すると保険料が高くなる割増引制度もあり、一段と高い保険料になる可能性もあります。
窓口精算できない病院(どうぶつ健保未対応病院)での治療費は補償されない、という大きなデメリットもあります。かかりつけの動物病院や最寄の動物病院が未対応なら、治療費は全額が自己負担で保険料も無駄になります。2023年現在、窓口精算ができる動物病院は約6700件あります。日本にある動物病院が約12000件(農水省 飼育動物診療施設の開設届出状況より)のため、約半数でのみ利用できる計算です。
どうぶつ健保対応病院は1年間で100件前後は増加しており、自分の最寄の動物病院も早々に対応する可能性はあります。さらにアニコム損保の公式HPには「どうぶつ健保対応推薦フォーム」があり、アニコム契約者なら自分で推薦もできます。しかし、いつ対応するかは分からずペットが急病になる可能性もあります。その際に2時間も3時間もかかる動物病院に保険のために行くのは非現実的でしょう。
1回あたりの支払限度額と年間限度額が低いのもデメリットです。他社には1回あたりの上限がなく、年間限度額も60万円超の保険があります。この保険は限度額の分だけ高額治療に不安があります。例えば70%プランに加入して、3日の入院と手術をして治療費が30万円だったとします。入院補償の4.2万円と手術補償の14万円で計18.2万円となり、残りの約12万円が自己負担となります。7割補償なら自己負担は9万円のはずが3万円ほど負担が大きくなります。
評判・苦情
アニコム損害保険の2021年度(2021年4月~2022年3月)の決算資料によると、保険会社の収入を示す正味収入保険料は前年度の434億円から473億円になり9%増と好調でした。しかし、新規契約件数は前年度の22.9万件から21.8件に減速しています。絶対数が他社より大きいのを差し引いても、契約数からはペット保険の評判は普通か少し悪いといえます。
現に価格.com経由の新規契約数ランキングでは、どうぶつ健保しにあは13社中10位と下位に位置しています。ふぁみりぃが11位、ぷちが12位のためアニコムの中ではマシともいえますが、新規契約数が少ないのは間違いありません。特にネットで一括見積もりをする保険料重視の人からの評判が良くないともいえます。
日本損害保険協会の苦情数のデータですが、アニコム損保全体に寄せられた苦情数は12672件(2022年度累計)でした。同じくペット保険専業のアイペットの3万件より明らかに少ないのは安心感があります。苦情の中身は「契約・募集行為」が5230件と最も多く、商品内容の改善要望・契約時の説明不足や誤り等についての不満が集まっています。
次にオリコンのペット保険 総合ランキング2022(実際に保険を適用した4506人が調査対象)ですが、アニコム損保は12社中3位と上位でした。ペットの種類別部門結果では、小型犬は3位・中型犬は3位・猫は4位と総合順位と大差はありません。
この調査の評価項目は加入手続き・保険プラン・保険料・付帯サービス・保険金ですが、その中で最も評価されたのは保険金です。アニコムは窓口精算が幅広い動物病院で利用できるのが評価されたのでしょう。その一方で保険料は8位と低評価で、付帯サービスもサービスが豊富なわりには5位と中途半端な順位でした。
個別のクチコミでは「回数制限があり使い勝手が悪い」「保険料が高い」「1日・1回の上限金額が低い」「HPが使いにくい」等のネガティブな意見がありました。概ね補償内容・デメリットで既述した内容であり、苦情面と重なる部分も多く誰もが感じる不満な点といえそうです。
以上のデータから考えると、アニコム損保のペット保険の評判は全体的には良さそうですが、補償内容と保険料の評判は少し悪そうです。保険金の請求方法・窓口精算の評判は良く、この保険は半強制的に窓口精算となるため評判通りの恩恵はありそうです。その一方で補償内容と保険料については注意が必要でしょう。
総合評価・おすすめか?
結論としては、どうぶつ健保しにあは総合的にはイマイチな保険です。補償内容は心もとなく保険料も高いからです。唯一、13歳以上のペットを飼っている人だけ検討すべき保険といえそうです。その場合でも加入して保険を利用したら、その年に解約という使い方の方が良いかもしれません。
それ以外の人は他社の保険も検討した方が賢明です。保険料の安いペット保険を探している人は、FPCやリトルファミリー少短のペット保険等を検討した方が良いでしょう。補償内容・評判等も重視するならSBIいきいき少短・ペットメディカルサポート等のペット保険が候補になります。