どうぶつ健保ぷちを比較・評価

アニコム損害保険
オススメ度:
1
保険会社:
アニコム損害保険
名称:
どうぶつ健保ぷち
補償割合:
70%
保険金請求:
書類請求
オリコン:
3位 / 12社中
特徴:
ペット保険シェアNo.1!

どうぶつ健保しにあはアニコム損保が2017年10月から販売を開始したペット保険です。どうぶつ健保ふぁみりぃは保険料が高めで高額治療に不安がありますが、ぷちは保険料を安めに設定してあり、手術の補償が1回あたり50万円までと拡充されています。

その反面、ふぁみりぃと比べると補償・サービスの一部が利用できなくなっています。それでは以下で、補償内容・保険料・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社のペット保険と比較していきます。

補償内容・特約

この保険は治療費の70%が補償される70%プランのみで、通院を除く入院・手術が補償されます。入院は1日あたり14000円までで年間20日までのため、年間で28万円が限度額となります。手術は1回あたり50万円までで年間2回までのため、年間で100万円が限度額となります。

どうぶつ健保ぷちの補償内容とサービス(出典:アニコム損保のペット保険 パンフレット兼重要事項説明書 新規一般契約用 2023年2月改定版)

ぷちは保険料を安くした分だけペット賠償責任特約(ペットが他人を噛んだ場合等を補償)が付加できず、腸内フローラ測定(採便により健康状態を測定)も利用できません。しかし、ペットについて相談できるどうぶつホットラインと、ペット探偵が捜索してくれる迷子捜索サービスは利用できます。

保険金請求についても窓口精算・LINE請求ができず、書類による請求だけとなっています。手術診療なしの場合は動物病院が発行する診療明細書と、アニコム公式HPからダウンロードした保険金請求書を郵送する必要があります。手術診療ありだと診療明細書と保険金請求書に加えて、手術内容証明書(アニコム公式HPからダウンロード可)を動物病院に書いてもらい郵送する必要があります。

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保険料を他社と比較

この保険の保険料は犬は品種によってA~Eクラス(Aが安く、Eが高い)に分かれ、年齢が上昇するほど高くなります。AクラスのチワワとEクラスのフレンチブルドッグでは、年間の保険料は年齢により7000円~1.4万円ほどの差があります。フレンチブルドッグは小型~中型犬なのに最高クラスになるように、サイズだけでなく特性も関係します。

どうぶつ健保ぷちの保険料一覧表(出典:どうぶつ健保ぷち 基本保険料表 2018年12月改定)

その一方で猫は品種は無関係で年齢だけで保険料が決まります。ちなみに、ぷちは犬と猫のみが加入可能で他のペットは加入できません。ふぁみりぃだとハムスター・鳥・リス・ヘビ等々のペットでも加入できます。

次に保険料が他社より安いのか否か確認していきます。ペットの年齢は0歳・5歳・8歳時で比較し、品種は犬はトイプードル、猫はスコティッシュ・フォールドとしました。各社の保険料は70%補償のプランの金額で、保険料は月払いよりも安くなる年払いの金額で一覧表で比較しました。さらに犬で0~14歳まで14年間契約した場合の合計保険料も比較しました。

ペット保険の犬猫の0歳・5歳・8歳時・0~14歳・平均値の保険料の比較一覧表(アニコム損保・アクサダイレクト・アイペット・ペットメディカルサポート・ペット&ファミリー・日本ペット・FPC・あいおいニッセイ同和損保・SBIいきいき少短・SBIプリズム少短・au損保・楽天損保・チューリッヒ少短・イーペット少短・イオン少短・リトルファミリー少短)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この保険の年間保険料は他社と比較すると非常に安く、犬だと保険料は最安値、猫でも5歳での加入は最安値です。保険料が安いのは通院補償が無いからですが、同じく通院補償が無いアイペットうちのこライトよりも安いのは評価できます。

犬で0~14歳まで6年間加入した場合の合計保険料(この保険の場合は8歳以降はしにあの料金で想定)でも、合計39万円で最安値です。保険料の安さを謳っているFPCやPS保険等は合計45~50万円のため、この保険の安さは際立っています。もちろん他社との差額は通院補償の分だと考えられます。

以上を踏まえると、どうぶつ健保ぷちの保険料は非常に安く、保険料面では大きなアドバンテージがあります。焦点は通院補償がある保険との差額であり、5~10万円の差であれば通院補償は不要(通院治療は5~10万円内に収まる?)と考えれば、この保険は保険料からするとナンバー1といえるでしょう。

メリット

この保険のメリットは、まずは保険料が安い点が挙げられます。年間保険料は0~6歳までは1万円台で負担が小さく、7歳時点でも約2万円です。同じアニコムのふぁみりぃでは7歳時点で保険料は6万円に到達し、他社でも3~4万円になることもあります。

保険料が安いわりに1回あたりの手術費用の上限が高いのもメリットです。この保険は経済的な負担を限りなく小さくしながら、50万円(手術1回あたり)の補償がキープできます。治療費が70万円になっても7割の49万円が補償され、自己負担は21万円で済みます。

サービス面でいえば、どうぶつホットライン・ペット捜索サービスもメリットです。どうぶつホットラインはLINEでペットの病気・しつけ等について獣医師・トレーナーに相談できます。電話ではなくLINEで相談するため、電話して口頭で伝えるより説明が簡単です。例えば、「ペットの歩き方が変だ」という相談だと何がどう変なのか口頭で説明する必要がありますが、LINEなら動画で撮影して送るだけで説明できます。

どうぶつホットラインとペット捜索サービスの活用イメージ(出典:アニコム損保のペット保険 どうぶつ健保パンフレット 2019年9月改訂版)

ペット捜索サービスは、アニコムがJLPR(ジャパン・ロスト・ペット・レスキュー)と提携して提供しているサービスです。ペットが迷子になった場合に、失踪場所周辺の地形等の調査をして計画を立てて専従スタッフ(ペット探偵)が捜索します。迷子の発見率は犬で約80%、猫で85%と非常に高く、自分と家族だけで探すよりも確実に発見できる確率が高まります。

忘れがちですが、アニコム損保は損害保険会社である点もメリットです。損害保険会社は契約者保護機構に加入しており、経営破綻しても契約者には契約時の保険金・返還金が支払われます。少額短期保険会社は同機構に加入しておらず、破産するケースも少なくありません。アニコムは損害保険会社かつ上場企業のため、少額短期保険会社のように急に経営破綻する可能性は低いです。

デメリット・注意点

この保険のデメリットには、まずは通院が補償されない点が挙げられます。アニコム損保への保険金請求件数では、約90%が通院で、残り9%が入院、1%が手術です。病気が入院・手術まで至らないケースが大半だとすると、通院補償が無いのは致命的ともいえます。

さらに通院治療なら安いと思われがちですが、通院費も決して安くはありません。PS保険で保険金請求をした人を対象とした調査によると、犬の平均通院日数は2.8日で1日あたりの平均通院費は9000円でした。1回の病気による平均通院費用は2.6万円(猫は2.1万円)となっています。「保険料の比較」の箇所で既述したように、通院補償がある最安の保険と合計保険料は5万円程度の差です。0~14歳の間に病気に2回なれば差は埋まります。

犬全般・小型犬・中型犬・大型犬・猫・全体の平均通院日数・通院費の総額・1日あたりの通院費(出典:「犬・猫の通院・入院・手術費用は、いくらかかるのか?」ペット保険「PS保険」調べ)

保険料の安さも犬の品種によっては高くなる点に注意が必要です。品種によっては小型~中型犬でも最も保険料が高いEクラスになり、保険料が安いというメリットが薄れます。フレンチブルドッグの他に、ブルテリア(ミニチュア・ブルテリア含む)やビアテッド・コリーやバセット・ハウンドもEクラスになります。これらの品種は他社では中型犬に分類され保険料は中間で、この保険のEクラスよりも保険料は安いです。

アニコムの代名詞でもある保険証による窓口精算ができない、という大きなデメリットもあります。診療明細書・保険金請求書・手術内容証明書(手術した場合のみ)を郵送する必要があります。その中でも手術内容証明書は動物病院の獣医師に記入してもらう必要があります。入院・手術後の経過観察の際にお願いできれば良いのですが、それを忘れると書類のために動物病院に行く手間が発生します。

その他に、ペットが他人を噛んだ場合等に補償されるペット賠償責任特約が無い、保険料には多頭割引が無いという点も注意が必要です。前者は自動車保険・火災保険に個人賠償責任特約が付いていれば問題ありませんが、そうでなければ付加した方が安心感はあります。後者は複数のペットを飼っている人には地味に痛い点といえます。

評判・苦情

アニコム損害保険の2021年度(2021年4月~2022年3月)の決算資料によると、保険会社の収入を示す正味収入保険料は前年度の434億円から473億円になり9%増と好調でした。しかし、新規契約件数は前年度の22.9万件から21.8件に減速しています。絶対数が他社より大きいのを差し引いても、契約数からはペット保険の評判は普通か少し悪いといえます。

現に価格.com経由の新規契約数ランキングでは、どうぶつ健保しにあは13社中12位と最下位に近い位置です。しにあが10位、ふぁみりぃが11位のため、アニコムの中でも人気が無い保険といえます。ネットで一括見積もりをする保険料重視の人からしても、通院補償が無いのが響いているのかもしれません。

日本損害保険協会の苦情数のデータですが、アニコム損保全体に寄せられた苦情数は12672件(2022年度累計)でした。同じくペット保険専業のアイペットの3万件より明らかに少ないのは安心感があります。苦情の中身は「契約・募集行為」が5230件と最も多く、商品内容の改善要望・契約時の説明不足や誤り等についての不満が集まっています。

アニコム損保への苦情の内訳(出典:アニコム損保公式HP 2021年度 お寄せいただいたお客様の声の概要)

次にオリコンのペット保険 総合ランキング2022(実際に保険を適用した4506人が調査対象)ですが、アニコム損保は12社中3位と上位でした。ペットの種類別部門結果では、小型犬は3位・中型犬は3位・猫は4位と総合順位と大差はありません。

この調査の評価項目は加入手続き・保険プラン・保険料・付帯サービス・保険金ですが、その中で最も評価されたのは保険金です。窓口精算が評価された形ですが、この保険は窓口請求が利用できないため無意味です。保険料は8位と低評価ですが、ふぁみりぃの保険料の高さが反映された結果と考えられます。

アニコム損保のオリコンペット保険総合ランキング2022の順位と各項目の評判(出典:オリコン公式HP「アニコム損害保険 ペット保険の評判・口コミ」)

個別のクチコミでは「回数制限があり使い勝手が悪い」「保険料が高い」「1日・1回の上限金額が低い」「HPが使いにくい」等のネガティブな意見がありました。この保険では保険料が高い・上限金額が低いという点は一応は改善されていますが、入院が年間20日までと手術は2回までという回数制限は口コミの通りです。

以上のデータから考えると、アニコム損保のペット保険の評判は全体的には良さそうですが、この保険に限っては話は別といえそうです。特に最大の評価を得ている保険金の請求方法(窓口精算)が利用できず、アニコムの中でも新規契約数が少ないのが問題です。加入する側からすると、結局はアニコムらしくない保険、従来の保険を改善し切れていない保険と考えられているのかもしれません。

総合評価・おすすめか?

結論としては、どうぶつ健保ぷちは総合的にはイマイチな保険です。補償内容は心もとなく、どうしてもメリットよりもデメリットの方が目立つからです。これなら保険料に目をつむってスタンダードなどうぶつ健保ふぁみりぃにした方が良いかもしれません。

その一方で保険料の安さを捨てきれない人は、FPCやリトルファミリー少短のペット保険等を検討した方が良いでしょう。補償内容・評判等も重視するならSBIいきいき少短・ペットメディカルサポート等のペット保険が候補になります。