日本生命 スマホ年金を比較・評価

日本生命 ニッセイみらいのカタチ年金保険(スマホ年金)
オススメ度:
4
保険会社:
日本生命
名称:
スマホ年金
加入年齢:
18~55歳
年金期間:
10年・15年
返戻率:
105~140%
特徴:
老後の資金を計画的に準備したい方へ

日本生命はニッセイみらいのカタチ年金保険を、通称スマホ年金として2024年1月から販売を開始しました。従来の年金保険と保障内容・返戻率は同じですが、スマホから見積もりと申込を完結できます。あくまでスマホだけのためPCでは見積もりまでで申込手続きはできません。

また、申込手続きは月~土曜は8時~24時で日曜祝日は8時~23時半までで、毎月25日直前の日曜は利用が停止される点に一応は注意が必要です。それでは以下で保障内容・保険料・返戻率・評判等を解説し、他社の保険と比較していきます。

保障内容

この保険は月払いか年払いで保険料を支払って、年金受取開始年齢になると年金が受け取れます。基本的に年金受取開始年齢まで保険料を支払うことになり、開始年齢は60・65・70歳から選択できます。年金の受取期間は10・15年の二択のため、どれだけ受け取りを遅らせて伸ばしても85歳で年金は終了します。一括で年金も受け取れますが、返戻率が一番低い年金の受け取り方になります。

スマホ年金の仕組み(出典:日本生命公式HP「スマホ年金 プラン設計画面」)

もしも保険料払込期間中に死亡すると死亡保険金が受け取れ、年金受取開始後に死亡した場合には積立金の残額を遺族が受け取れます。死亡ではなく保険料払込期間中に解約した場合には、支払った保険料合計額の60~90%分の解約返戻金が受け取れます。契約から10年が経過していれば90%以上の解約返戻金が受け取れます。

また、個人年金保険料税制適格特約を付加すると、所得税・住民税が軽減されます。1年間の保険料の合計額が8万円以上なら、独身で年収500万円なら所得税で4100円と住民税で2800円が軽減され、年間で6900円の節税になります。年収が上昇しない前提で単純計算で30年で20万7000円の税軽減効果になります。

その他に特約には保険料払込免除特約があります。この特約を付加すると三大疾病・身体障害状態・要介護状態となると保険料の支払いが免除されます。三大疾病でもがん(悪性新生物)なら診断確定、急性心筋梗塞なら手術か60日の労働制限、脳卒中なら手術か60日の後遺症が条件となります。

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保険料・返戻率を他社と比較

この保険の保険料は5000円・10000円・15000円・20000円のどれかを選択でき、契約年齢・保険料払込回数(月払いか年払いか)・年金受取開始年齢・年金受取期間によって異なります。さらに日本生命の毎年の決算で剰余金が発生すると配当金として上乗せされます。そのため若くして契約し年払いで保険料を支払って、年金開始年齢を遅らせて年金受取期間を長くすると返戻率は最大になります。

スマホ年金の25歳のシミュレーション結果(出典:日本生命公式HP「スマホ年金 プラン設計画面」)

上図は25歳契約・保険料6万円(月5000円)・年金受取開始70歳・年金受取期間15年の場合ですが、配当なしでも返戻率は109.4%になります。配当金を含むなら返戻率は147.1%が想定されていますが、配当金は決算によって変動するため令和5年度の決算の配当率を加味した場合の数字となります。

次に返戻率は他社より高いのか低いのか、下図で他社の定額年金保険と一覧表で比較しました。契約年齢は30歳・40歳・50歳に分け年金開始は65歳として、年金受取期間は10年(一部の保険は15年か終身)で比較しました。

定額年金保険の30歳と40歳と50歳の返戻率の比較一覧表(かんぽ生命・太陽生命・第一生命・住友生命・JA共済・明治安田生命・日本生命・大同生命・三井住友海上あいおい生命・フコク生命(富国生命)・アフラック・T&Dフィナンシャル生命)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この保険の返戻率を他社と比較すると、配当金なしなら他社と同程度か少し低いです。しかし、配当金を含んだ返戻率では他社よりも高い数字になります。特に配当金は契約年数が長いほど積み重なるため、30歳・40歳だと他社よりも圧倒的に高い返戻率になります。

とはいえ配当金は日本生命の決算によって左右され、将来的にどうなるかは不透明です。そのあたりを含めて、続いてメリット・デメリットを記述していきます。

メリット

この保険のメリットは、まずはスマートフォンで見積もり・加入が完結する点が挙げられます。日本生命の多くの保険は日本生命の営業職員か代理店か金融機関で契約する必要があります。この保険はスマートフォンから気軽に契約でき、申込などの操作画面の使い勝手も悪くありません。

スマホ年金の・見積もり・申込画面(出典:日本生命プレスリリース「ニッセイみらいのカタチ年金保険 スマートフォンを通じたWeb販売の開始について」2023年12月5日)

前述した通り返戻率は最低でも他社と同等程度、配当金を含めれば他社より高い返戻率になるのもメリットです。配当金は日本生命の決算に左右されますが、過去を振り返ると一定程度の期待できます。日本生命の過去の決算資料(業績の概要)を見ると、コロナ禍で厳しかった2019年度~2021年度には新契約件数は大幅減していました。しかし、純剰余(利益)は出ているため、将来的に厳しい局面でも配当金による上乗せに幅はあれども見込めます。

また、返戻率の他に生命保険料控除で税金が軽減されるのもメリットです。保険料控除で所得税4万円と住民税2.8万円が控除されます。軽減される税金額は世帯の家族構成と年収によって変動しますが、年収500万円の独身者でも約7000円の節税になり、年末調整(自営業なら確定申告)で税金が還付されます。

個人年金保険料控除額例(出典:(出典:日本生命公式HP「みらいのカタチ ニッセイ スマホ年金」))

特約に保険料払込免除特約があるのもメリットです。三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)・身体障害状態・要介護状態となると保険料の支払いが免除されます。保険料払込完了が65歳なら60歳で三大疾病になって保険料が免除されても、相当な返戻率の上昇が見込めます。他社の多くの個人年金保険では保険料払込免除特約を付加できません。

デメリット・弱点・落とし穴

この保険のデメリットには、まずは設定できる条件・数字が他社より制限される点が挙げられます。スマホ年金では保険料は1口5000円・1万円・1.5万円・2万円に制限され、中途半端な額や2万円以上の保険料は設定できません。年金受取開始年齢も60・65・70歳で、年金受取期間も10年・15年だけです。

さらに据置期間を設定できません。保険料の払い込みを完了してから年金受け取り開始までに、据置期間を5年や10年設定すると返戻率が上昇します。据置期間にまとまった年金原資を運用できるからです。通常の対面型の年金保険なら据置期間を設定できるのかもしれませんが、スマホ年金では設定できません。

また、冒頭でも既述した通り、申込手続きは月~土曜は8時~24時で日曜祝日は8時~23時半までで、毎月25日直前の日曜(19~25日のうちの日曜日)は利用が停止されます。システム上やむを得ないのかもしれませんが、完全に停止するのは少し不便です。また、個人年金保険はネットで完結しますが、その後に他の保険も勧められる可能性があります。それを煩わしいと思うか情報提供と捉えるかは人それぞれですが、人によってはデメリットかもしれません。

ちなみに個人年金保険料控除を利用する場合は、その個人年金保険では5つの条件をクリアする必要があります。5つの条件は「年金受取人は契約者または配偶者」「年金受取人と被保険者は同一人物」「年金受取開始年齢は60歳以上」「年金受取期間が10年以上」「保険料払込期間が10年以上」です。早期退職を視野に入れて年金受取開始年齢を55歳にしたりすると控除が受けられません。

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評判・苦情

日本生命の2023年の決算資料によると、個人向け保険の全体の新契約数は449万件で前年度の411万件から9%減と不調でした。その中で個人年金保険は12.3万件で前年度の27.9万件から半減し、全体よりも厳しい結果でした。個人年金保険の中で年金保険も11.1万件で、前年度の25.3万件から同様に半減していました。年金保険は契約数からすると評判は悪いのですが、スマホ年金は2024年1月開始のため、好調なら次の決算で件数増に転じる可能性はあります。

その一方で生命保険協会の苦情数のデータでは、日本生命全体に寄せられた苦情数は48944件(2023年度第三四半期実績)でした。総顧客数の1220万件で割った苦情率は約0.4%で、契約者1000人のうち4件の苦情が発生している計算です。他社の苦情率は0.1~0.3%台が多い中では苦情数は多めで、苦情面で考えても評判は少し悪いです。

さらに調査会社のJ.D.パワーの「2024年 生命保険契約満足度調査」では、日本生命は保険会社営業職員部門で9位で、保険代理店部門では最下位の1つ上の順位でした。この調査の評価項目は手続き・顧客対応・商品提供・保険料ですが、これらの項目では少なくとも平均未満の満足度なのは間違いありません。

JDパワー 2024年生命保険契約満足度調査 保険会社営業職員部門(出典:JDパワー公式HP) JDパワー 2024年生命保険契約満足度調査 保険代理店チャネル(出典:JDパワー公式HP)

オリコン生命保険 顧客満足度ランキング2024でも、29社中21位と順位は振るいません。他の大手では住友生命よりは順位が上ですが、第一生命や明治安田生命よりも順位が下なのも気がかりです。

個別の口コミでは「良いタイミングで見直しを提案してくれた」「担当者の説明が分かりやすかった」「手続きが簡単で保険金請求もスムーズだった」等のポジティブな意見がありました。その一方で、「保険料を年払いにすると入金後の連絡が無い」「見直すと対象外になる保障内容を知らされなかった」「保険料が高い、上がったが説明が無い」といったネガティブな意見もありました。

とはいえ同じオリコンでも「2024年FPが選んだ オリコン個人年金保険ランキング」では、ニッセイ年金保険は2位に入っています。専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)からの評判は上々です。1位が変額保険のため定額年金保険なら実質はトップとも考えられます。

2024年FPが選んだ オリコン個人年金保険ランキング(出典:オリコン公式HP)

以上のデータから考えると日本生命の評判は悪そうですが、年金保険の評判は未知数な面があるものの悪くはなさそうです。日本生命の評判は苦情や各種調査の結果を考慮すると良くはありません。個別の口コミで少し良さを感じるだけです。年金保険の評判は契約数からは不安がありますが、専門家からの評価は高いため安心感があります。減少している新契約数が不安ですが、スマホ年金の伸びによっては契約数が伸びてきて不安が払拭される可能性があります。

総合評価・おすすめか?

結論としては、日本生命のスマホ年金は悪くない保険です。デメリットもありますが、使い勝手がよく返戻率も最低でも他社並みで上ぶれが期待できるからです。保険料払込免除特約で三大疾病がカバーできるのも地味にポイントが高いです。

他の保険も検討してみたい人は、返戻率の高さなら富国生命・アフラック・第一生命あたりの個人年金保険が候補になります。この保険で満期保険金を得て保険料を一時払いするなら、T&Dフィナンシャルあたりも検討しても良いかもしれません。