第一生命 ステップジャンプを比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- 第一生命
- 名称:
- ステップジャンプ
- 加入年齢:
- 0~74歳
- 年金期間:
- 5~15年
- 返戻率:
- 110~146%
- 特徴:
- 減らない安心とふえる期待
第一生命は2023年12月より指数連動型個人年金保険「ステップジャンプ」の販売を開始しました。元本を確保しつつ資産を増やしたいというニーズに応えるために開発され、契約から3年が経過すれば元本が確保されます。3年経過後に解約しても支払った保険料の累計額の解約返戻金が受け取れます。
その一方で指数に連動して年金原資が増加する(減少はしない)ため、指数の上昇による年金原資の増加も見込めます。それでは以下で保障内容・保険料・返戻率・評判等を解説し、他社の保険と比較していきます。
保障内容
この保険は保険料を毎月支払って、年金支払開始年齢に到達すると年金が受け取れます。保険料払込期間(保険料を何年間支払うか)は5~50年、年金受取期間(年金を何年間受け取るか)は5~15年の中で自分で設定できます。年金の受け取りを開始する年齢も10~90歳と幅があり、55歳で早期退職して公的年金より早く年金を受け取ることも可能です。
年金の原資となるのは保険料で積み立てた額(基本年金原資)に加えて、指数が上昇した分(指数連動年金原資)が上乗せされます。指数の上昇・下落は契約から2年経過後から判定されます。指数が前年から上昇していれば指数連動年金原資が増加します。逆に指数が前年より下落しても指数連動年金原資は減少しません。
冒頭で既述した通り、契約から3年が経過すると解約しても支払った保険料と同額の解約返戻金が受け取れます。その逆に3年以内に解約すると、支払った保険料の合計額の30~70%程度の解約返戻金になります。また、保険料を支払っている最中に死亡すると、3年目までは支払った保険料の合計額と同額の死亡給付金が受け取れます。3年後からは指数連動年金原資で増加した分も加味された死亡給付金が受け取れます。
保険料を支払い終えた後に死亡すると、死亡給付金は受け取れません。年金受取期間中に死亡すると、受け取らずに残った年金は遺族が受け取れます。10年確定年金に設定して5年目に死亡すると、残りの5年分は遺族が年金を受け取るといった具合です。
特約には保険契約者代理特約・指定代理請求特約・個人年金保険料税制適格特約があります。保険料払込免除特約はガンと診断確定されたり要介護状態等になると、保険料の支払いが免除されます。保険契約者代理特約・指定代理請求特約は自分が認知症等になった時に各種手続きを指定した親族が代理できます。個人年金保険料税制適格特約を付けると個人年金保険料控除の4万円が利用できます。
保険料・返戻率を他社と比較
この保険の保険料は希望する年金額・保険料払込期間・年金受取期間によって変動します。保険料もさることながら、指数連動年金原資の将来のパフォーマンスが読めないため明確な返戻率は出せません。一応、30歳契約・保険料払込期間35年・年金受取期間10年で保険料1万円にすると、全サンプルの平均値では返戻率は121.8%、過去最低は109%のようです。
指数連動年金原資は不確定要素ですが、返戻率は保険料払込期間を長くしたり、年金受取期間を長くすることで確実に高められます。この保険では保険料払込期間を5~50年、年金受取期間は5年・10年・15年まで設定でき、どちらも可能な限り長くすれば数%は返戻率が高くなります。
次に返戻率は他社より高いのか低いのか、下図で他社の定額年金保険と一覧表で比較しました。契約年齢は30歳・40歳・50歳に分け年金開始は65歳として、年金受取期間は10年(一部の保険は15年か終身)で比較しました。
この保険の返戻率を他社と比較すると、30歳では予測値が最低の返戻率でも他社よりも高めになっています。上ブレすれば他社よりも圧倒的に高い返戻率が見込めます。50歳だと予測値が最低の返戻率だと他社よりも低い返戻率になる可能性がありますが、上ブレすれば他社より高めの返戻率になります。
とはいえ高い返戻率になるかは運(正確には経済情勢)による部分があります。その点について続いてメリット・デメリットの箇所で記述していきます。
メリット
この保険のメリットは、まずは3年経過すると元本が確保される点が挙げられます。他社では元本を保証するといっても年金原資が減らないだけというパターンがありますが、この保険では解約返戻金でも元本が確保されます。将来の老後資金どころではない、病気になったり子供が留学(海外の大学に進学)といった急場で資金が必要なケースにも対応できます。
そして、最大のメリットは指数連動年金原資により高い返戻率が見込める点でしょう。前述したように保険料払込期間が35年なら109~144%まで返戻率に幅があります。しかし、過去1万件を対象としたシミュレーションでは、将来の返戻率が予想できなくもありません。下図の過去データでのシミュレーションを見て下さい。
上図では保険料払込期間を35年にした場合、全体の49.7%で返戻率が116~123%でした。次いで全体の40%で返戻率が124~131%だったため、過去データによれば89.7%が返戻率が116~131%だったことになります。前述の返戻率の比較表では131%なら他社よりも圧倒的に高く、116%でも他社よりも高めです。最低値である109%ではなく116%を目安にすれば将来の年金額(+支払う保険料)も見込みやすくなります。
特約では個人年金保険料税制適格特約があるのもメリットです。この特約を付加すると一般生命保険料控除の4万円ではなく、個人年金保険料控除の4万円が利用できます。個人年金保険以外の保険に加入している人は、それとは別枠で4万円の保険料控除が利用できます。また、これから他の種類の保険に加入する人は保険料控除の枠を空けておけます。
デメリット・弱点・落とし穴
この保険のデメリットには、まずは指数連動年金原資の存在が挙げられます。指数が上昇すれば年金原資が増加しますが、その指数がリスクとなります。この保険でいう指数は「バーテックス マルチアセット指数」で、指数が保有する資産価格によって変動します。保有する資産は定期的に見直しもされます。
資産配分は株式の価格変動リスクが低下すると株式の保有割合を増加させ、リスクが上昇すれば保有割合を減少させます。さらに下落局面においては一段と保守的に現金と債券のみを保有します。さらに価格変動リスクが低下した際にはレバレッジを効かせて保有資産全体の量を増加させ、その逆ならレバレッジを落として量を減少させます。いわゆるリスクパリティ戦略です。
この戦略自体は特に珍しいものではなく、特別に優れた戦略でもありません。問題となるのは資産配分が保守的になっても債券が必ず含まれている点にあります。株式のリスクが低下した局面でも半分近くを債券が占めています。債券価格は金利が上昇すると低下するため、各国が利上げしている際には債券価格が下落し指数に下押し圧力がかかります。最近では2022年3月からアメリカが利上げを開始し、それと前後して各国が利上げしました。
そのため指数は2022年から合間合間に上昇はするものの、なだらかに下落しています。これは株式の下落を債券でカバーできていない証拠です。今後も株式が上昇しても金利が上昇、ないしは金利が高止まりとなると、指数は低迷してシミューレションのような結果にならない可能性があります。もちろん長期で見れば上昇する可能性が高いのですが、将来的に同じ状態になると再び低迷するでしょう。
ちなみに個人年金保険料税制適格特約には5つの条件がある点にも注意が必要です。5つの条件は「年金受取人は契約者または配偶者」「年金受取人と被保険者は同一人物」「年金受取開始年齢は60歳以上」「年金受取期間が10年以上」「保険料払込期間が10年以上」です。早期退職を視野に入れて年金受取開始年齢を55歳にしたりすると控除が利用できません。
評判・苦情
第一生命の2023年の決算資料によると、個人向け保険の全体の新契約数は262万件で前年度の384万件から32%減と不調でした。この保険は2023年12月販売開始のため数字には含まれていませんが、契約数からすると評判が良いとはいえません。
生命保険協会の苦情数のデータでは、第一生命全体に寄せられた苦情数は20257件(2023年度第三四半期実績)でした。総顧客数の754万件で割った苦情率は0.2%で、契約者1000人のうち2件の苦情が発生している計算です。他社の苦情率は0.1~0.3%台が多い中では苦情数は普通で、苦情面で考えると評判は普通です。
さらに調査会社のJ.D.パワーの「2024年 生命保険契約満足度調査」では、第一生命は保険会社営業職員部門で6位でした。この調査は手続き・顧客対応・商品提供・保険料が評価項目ですが、平均値を上回っているため顧客満足度は普通か中の上といえそうです。
さらにオリコン生命保険 顧客満足度ランキング2024でも、29社中17位と中間に近い順位でした。個別の口コミでは「担当者の対応が良かった」「定期的に連絡があり困った時に対応してくれる」「加入手続きが1日で数十分で終わった」といったポジティブな意見がありました。
その一方で、「保障のわりに保険料が高い」「手続きが面倒」「タブレットが使いにくい」といったネガティブな意見もありました。担当者にはポジティブな意見が多めですが、そもそも手続きが煩雑だったり端末の使い勝手が悪いといった点に不満を持っている人がいるようです。
以上のデータから考えると第一生命の評判は普通そうですが、ステップジャンプの評判は未知数です。第一生命の評判は各種調査で悪くはなく、普通か中の上といったところです。ステップジャンプについては販売が開始されてから年数が経っておらず今後に期待というところです。とはいえ手続きには手間取る可能性がある点は覚えておいた方が良いかもしれません。
総合評価・おすすめか?
結論としては、第一生命のステップジャンプは悪くない保険です。指数部分に不安が無いわけではありませんが、元本を確保しながら増額が狙えるのは大きいです。極論をいえば指数が振るわず上昇が見込めないようなら、4~5年後に解約してしまうという手が取れます。それも踏まえると悪くない保険といえるでしょう。
他社の保険も検討してみたい人は、返戻率の高さなら富国生命・アフラックあたりが候補になります。保険料を一時払いでも良いなら、T&Dフィナンシャルあたりも検討しても良いかもしれません。