かんぽ生命 長寿支援保険/ 保険料・年金額・返戻率・利回りを比較して評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- かんぽ生命
- 名称:
- 長寿支援保険(長寿のしあわせ)
- 契約年齢:
- 50~70歳
- 年金支払:
- 15~30年
- 返戻率:
- 81.4%~
- 特徴:
- 長生きをしあわせに。
かんぽ生命 長寿支援保険で長寿に備えるにしても落とし穴は満載!?
長寿支援保険(長寿のしあわせ)は、かんぽ生命が募集・販売している個人年金保険だ。かんぽ生命には新定期年金保険という個人年金保険があったが、現在は新規の取り扱いを停止している。そのため長寿支援保険が同社にとって唯一の個人年金保険ということになる。以下で長寿支援保険の保障内容・メリット・デメリットを公式HP等を元に解説し、他社の個人年金保険(定額年金保険)と保険料・評判等で比較する。
この保険の最大のポイントは長生きするほどに得をする点だ。年金を受け取れる最大期間は30年だが、65歳から年金の受け取りを開始して95歳まで生きていれば返戻率は122%を超える。少なくとも返戻率が100%を超えるラインの90歳まで生きてトントンになる。一方で予想より早く死亡すると保証期間(20年か15年)の残りの回数分だけ年金が受け取れる。例えば65歳から年金を受け取り始めたが75歳で死亡したなら、20年の残りの10年分の年金は遺族が受け取れる。ただ、その場合の返戻率は80%前後となるため20%ほど損をすることになる。自分の死後の損得など無関心かもしれないが、より多くの額を妻・子供・孫に残したいなら損失は無視できない。
また、一般的な定額年金保険と異なり50歳以上から契約できる点にも注意したい。年金の受取開始年齢は60~80歳のため、必然的に受取前に保険料を支払い終える必要がある。65歳から年金を受け取るなら15年で保険料を支払い切ることになり、当然ながら毎月の保険料は相当に高くなる。仮に年金額90万円(毎月7万円強)を受け取るなら、保険料の払込期間が15年で毎月の保険料は約12.3万円となる。さすがに保険料が安い、毎月の負担は軽いなどとはいえないレベルだ。
その保険料の高さを少しでも和らげるために低解約返戻金型(解約して受け取れる解約返戻金が通常の50%~70%程度になる)にしているのだが、それによって解約時の損失も通常よりも大きくなる。さらに長寿支援保険には死亡保障が無い点も見逃せない。年金受け取りを開始してから死亡すれば保証期間分の年金が受け取れるが、受け取り前に死亡すれば解約返戻金を受け取ることになる。
このように一見すると早死にしても大丈夫な保険のようだが、実は損をする落とし穴が3つある。まずは年金受け取り前に解約すれば損をする落とし穴がある。次に年金受け取り前に死亡すれば損をする落とし穴、そして保証期間内に死亡すれば損をする落とし穴がある。つまり契約したが最後、最低でも90歳(65歳で年金受取開始の場合)までは生存しないと損をするのだ。
次に下図では各社の定額年金保険を契約年齢・年金の受取期間・年金の開始年齢・5年ごと利差配当(5年ごとに契約者に支払う上乗せの年金)に加え、返戻率と利回りでお得さも比較した。返戻率・利回りは基本的に30歳契約で60歳で保険料の払い込みを完了して、年金を10年間受け取った場合の数字で比較している。評判が良いか悪いかは生命保険協会のデータで苦情率(苦情数÷契約数)を算出して判断した。
名称 | かんぽ生命 長寿 |
太陽生命 100歳 |
第一生命 ながいき |
住友生命 たのしみ |
第一生命 しあわせ |
JA共済 ライフ |
明治安田 虹色 |
ソニー生命 個人年金 |
ニッセイ 年金保険 |
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契約年齢 | 50~70歳 | 50~65歳 | 50~80歳 | 0~75歳 | 0~80歳 | 18~85歳 | 0~60歳 | 15~60歳 | 7~65歳 |
受取期間 | 15~30年 | 終身 | 5年/10年 15年/終身 |
5年/10年 15年 |
5年/10年 15年 |
5年/10年 15年/終身 |
5年/10年 | 5年/10年 15年/終身 |
5年/10年 15年/終身 |
受取開始 | 60~80歳 | 年齢or介護 | 60~90歳 | 25~85歳 | 10~90歳 | 50~90歳 | 10~80歳 | 55~70歳 | 17歳~ |
5年ごと 利差配当 |
なし | なし | なし | あり | あり | なし | あり | あり | なし |
苦情率 | 0.24% | 0.07% | 0.20% | 0.47% | 0.20% | - | 0.31% | 0.21% | 0.17% |
月額保険料 (合計) |
\95,500 (1719万) |
\17,469 (524万) |
\30,000 (720万) |
\15,000 (540万) |
\32,000 (1152万) |
\10,000 (360万) |
\30,000 (900万) |
\32,010 (963万) |
\19,022 (684万) |
年金額 (合計) |
70万 (1400万) |
72万 (360万) |
37万 (568万) |
57万 (574万) |
120万 (1205万) |
38万 (383万) |
94万 (943万) |
100万 (1000万) |
72万 (720万) |
返戻率 | 81.4%~ | 68.6%~ | 78.9%~ | 106.3% | 104.6% | 106.5% ※126.7% |
104.7% | 104.1% | 105.1% |
利回り | -1.24% | -1.25% | -1.05% | 0.18% | 0.13% | 0.19% ※0.76% |
0.14% | 0.14% | 0.17% |
据置期間 | 0年 | 0年 | 0年 | 5年 | 5年 | 5年 | 5年 | 0年 | 0年 |
上図で1番左のかんぽ生命 長寿支援保険だが、契約可能な下限年齢は一般的な個人年金保険よりも高い。ただ、同じ長寿向けである太陽生命・第一生命のものと比較すると大差は無い。また、年金の受け取り期間で30年が選べる点で異彩を放っているが、前述したように30年も年金を受け取るには相当に高いハードルがある。苦情率は他社と比較して平均に近いため、さほど評判は悪くないといえる。かんぽ生命は不適切販売報道があったが、その割には高くない印象だ。ただ、苦情の内訳では他社のように保全関係(変更手続き等への苦情)ではなく、新契約関係(保険加入時の苦情)が多い。そのため契約する際には神経質なほど注意を払った方が賢明かもしれない。
返戻率・利回りは、50歳契約・65歳払込完了で年金受け取り開始の場合だが、保証期間20年だけでは返戻率が81%と大幅に損をすることになる。返戻率は90歳まで生存して100%、95歳まで生存すれば122%となる。現在の個人年金保険からすれば魅力的な数字には見える。しかし、ほぼ同条件で第一生命なら95歳まで生存すれば返戻率は131%になる。その意味で返戻率は他社に劣るともいえるだろう。
以上のことから総合評価としては、落とし穴が満載のためオススメできない保険といえる。90歳以上まで生存する自信があるにしても、90歳まで生存しても返戻率が100%なら貯金するのと大差はない。それよりは90歳以下で死亡して損をする可能性の方が大きく、リスクとリターンが見合ってない印象だ。これなら普通の個人年金保険に加入して、受け取った年金は貯金して10年後から使うなどの方法を検討した方が賢明だ。年金を受け取っても使わずに貯金して数年後にスライドしてから使うだけでも、長寿には対応できるのではないだろうか。