年金定期預金と税金
年金定期預金のメリット・デメリットと税金を解説!
年金定期預金は、年金を受給している人の金利を優遇する定期預金だ。銀行にもよるが通常の定期預金に0.1~0.2%程度の金利をプラスする。通常の定期預金が0.05~0.24%程度のためプラス幅としては上々といえる。それでは年金定期預金のメリット・リスクは何だろうか? また、課税される税金は何なのか?
まずメリットだが、前述した金利の上乗せ以外に定期預金としてのメリット(定期預金のメリット・デメリットを参照)がある。それ以外では、年金定期預金を利用している間は、その銀行で年金を受給し続ける点がある。ただ、これはメリットでもありデメリットでもある。
メリットとしては、窓口の一本化による手間の簡略化にある。1つの口座なら資金・資産管理が容易で、収支も一目で分かる。さらに、資産の一部を投資に回す場合に購入手続きは同一の銀行で行えばよく、現金・預金とリスク資産の配分も分かりやすい。また、確定申告となった場合に複数の口座だと計算が必要になるが、単一の口座なら計算するまでもない。
デメリットとしては、ATM・店舗網の不安、入出金の手数料、金融商品の勧誘の3点が挙げられる。まずATM・店舗網だが、地元の銀行であれば日常は不便を被ることはないが、国内旅行や県外の病院への入院、ひいては環境の良いところへの移住となると途端に利便性の無い口座がメインバンクとなる。また、自行のATMなら手数料無料としている銀行が多いが、他行なら提携している銀行以外では手数料が発生する。数日の旅行なら止むを得ないと考えることも可能だが、退職後の楽しみが旅行であるようなら店舗網・ATMや手数料を考慮しないと、無駄な出費の原因となる。
さらにデメリットとしては、銀行による金融商品の勧誘が挙げられる。銀行側としては年金を受給した人に口座を開設してもらうことに大きなメリットはない。生活費が出し入れされ公共料金が引き出されるだけでは、銀行の儲けには直結しないためだ。
それでは、なぜ年金受給者に口座を開設してもらいたいか? それは投資信託などの金融商品を購入してもらいたいからだ。流れとしては、まずは年金受給者向けに特別金利の定期預金を組んでもらう。そして満期になったタイミングで投資信託を勧めて、その結果として販売手数料を受け取ることが銀行のメリットとなる。
もちろん、これが年金受給者にとって悪いことではない。投資信託はリスクはあるが、十分に利益が出る金融商品だからだ。年間の利回りが10~20%になることも珍しくはない。それなのに金融商品の勧誘をデメリットに挙げたのは、投信を選択する際に銀行のラインナップに影響されるのと、そして銀行員の存在があるためだ。
投資信託は星の数ほど種類があるが、銀行によってラインナップはバラバラで、A銀行で扱っている投信をB銀行が扱っていないこともある。自分が購入したい投信を購入できない、ないしは中身は同一に近いが微妙に不利(信託報酬が高い)という可能性がある。これは十分にデメリットになりえる。
そして、銀行員の存在だ。銀行員が投資信託を勧める場合、大抵は個々の銀行員の相場観に従って投信を勧める。もちろん、もちろん儲かりそうな投信を勧めるのは間違いない。彼らのベストシナリオは「投信が儲かる→解約して利益を確定→別の投信を勧める→その投信が儲かる→解約して・・・」だ。これなら年金受給者と銀行員はウィンウィンだ。
しかし、銀行員といえど相場観が外れることは間々ある。相場観が100発100中の人などいないため、それ自体は問題ないのだが、そこから負のスパイラルに陥ることがある。流れとしては「投信を購入→儲からない→解約して別の投信で取り戻そうとする→儲からない→解約して・・・」というものだ。手数料のある銀行員はいいが、年金受給者には耐え難い展開だ。また、まだ利益が伸びる投信を早々に利益を確定させて、次の投信を購入させて手数料を稼ごうとする可能性もある。銀行員もサラリーマンである以上はノルマもある。これが銀行員をデメリットに挙げた理由だ。
最後に税金に関してだが、利子に対して約20.315%(国税+地方税)が課税される。この税金は源泉分離課税のため、利子を受け取る前に銀行によって20%が差し引かれて口座に入る。確定申告も不要で手間はかからないが、株式・債券などの他の金融商品と同じ税率のため有利でも不利でもない。定期預金だけで税金で混乱しないだろうが、他の金融商品の利益・損失と絡んで不安なら、税理士の無料相談や自治体主催の無料の税金相談会に行くのも手だ。