Chubb損保 まかせて安心医療保険を比較・評価
- オススメ度：
- 保険会社：
- Chubb損害保険
- 名称：
- まかせて安心医療保険
- 加入年齢：
- 16～70歳
- 保障期間：
- 5年更新
- 保障内容：
- 入院・手術等
- 特徴：
- 健康告知なしではいれる医療保険
まかせて安心医療保険はChubb損保が募集・販売している引受基準緩和型の医療保険です。Chubb損保は2016年10月まではエース損保として同保険を販売していました。損害保険会社が医療保険を販売しているのに違和感を感じるかもしれませんが、医療保険は第三分野の保険のため損害保険会社でも取り扱えます。
販売開始から少なくとも6年以上が経過しており、最近販売を開始した他社の引受基準緩和型の医療保険と比べると見劣りする可能性があります。それでは以下で「まかせて安心医療保険」の保障内容・保険料・返戻率等を解説し、他社の引受基準緩和型（限定告知型）の医療保険と比較していきます。
告知・保障内容
告知項目は通常の医療保険で7～8項目、引受基準緩和型の医療保険でも2～3項目はあります。引受基準緩和型の医療保険は過去3ヶ月以内・過去2年以内・過去5年以内の病歴が確認されます。しかし、この保険は医師の審査は元より健康告知が1つもありません。そのため過去に病気になったかどうかは無関係に加入できます。
ただ、過去の病気とは無関係に加入できないケースもあります。この保険以外に同じような保険に大量に加入している人や危険な職業に就いている人が例に挙げられます。前者は2～3つ程度の保険なら問題ありませんが、あまりに大量だと不正が疑われるからです。予め病気になることを予見していたり、第三者が悪意を持って勝手に加入させる等が考えられます。後者はケガの可能性が極めて高いスタントマンや爆破作業者が該当します。
どちらの条件も他の医療保険でも引受基準緩和型医療保険でも同じです。この保険だけに設けられているわけではありません。危険な職業といっても過度に心配はいりません。高所作業者・林業従事者・建設作業者といった職業でも入院日額1万円までであれば加入できるケースが大半です。
この保険の保障内容は医療補償と損害補償で構成されています。医療補償は入院時に受け取れる入院保険金、手術すると受け取れる手術保険金、5年間健康に過ごした場合に受け取れる健康祝い金があります。女性だと女性特有の病気の補償を手厚くする女性専用プランがあります。女性特有の病気での入院で女性疾病入院保険金、女性特有の形成治療を目的とした手術で形成治療保険金が付きます。
損害補償は損害賠償請求を受けた時の賠償責任保険金、逆に損害賠償をする時の権利保護費用保険金、被害事故に遭った時の被害事故死亡保険金があります。賠償責任保険金は損害賠償を受けたのが子供・親族でも対象となり、弁護士・司法書士への相談費用も1回1万円まで補償されます。1被害3万円までのため3回は相談できます。
損害補償である賠償責任保険金・権利保護費用保険金・被害事故死亡保険金は、漢字の字面と補償内容だけでは具体的に活用できるイメージが浮かばない人もいるでしょう。具体的なシーンについてはメリットの箇所で後述します。
保険料・返戻率を他社と比較
この保険は30歳男性・入院日額5000円で契約すると保険料は月額4620円です。40際男性だと月額5170円、50歳男性だと6840円となります。仮に40歳で契約して5年後の45歳時にがんになり、手術して17日間の入院（厚労省 患者調査のがんの平均入院日数）をしたとします。受け取れる保険金額は28.5万円に対して5年間支払った保険料は計31万円のため、返戻率は91.9％で100％を下回り貯金よりも損です。
さらに軽度の手術であれば手術給付金が20万円ではなく5万円となるため、受け取れる給付金額は13.5万円となり返戻率は43％まで下落します。入院・手術すらなければ5万円の健康祝い金のみのため、返戻率は16％まで下落します。その一方で複数回の手術を受けたり、賠償責任保険金で数千万円が支払われれば返戻率は軽く100％を超えます。
このように状況によって保険金の合計額は変化するため、あくまで返戻率は目安です。そのため他社の引受基準緩和型の医療保険と保険料を比較する必要があります。下図で他社の医療保険と保険料等で一覧表で比較しました。
この保険の保険料は入院日額5000円の他社の保険料と比較すると、月額で1000～2000円は高いのが分かります。最安値圏の保険と比較すると、年齢次第では保険料は2倍の高さとなります。他社より高い分は損害賠償の補償分だとも考えられますが、それだけの差額とは考えにくいです。
なぜなら個人賠償責任を自動車保険の特約で付ける場合には、年間で1000～2000円（月額83～166円程度）です。自動車ではなく自転車保険でも月額200～300円のため、この保険の他の保険との差額は埋め切れません。そのため保険料の高さ分に見合うメリットがあるか確認する必要があります。
メリット
この保険のメリットには、まずは告知項目が無い点が挙げられます。他社では緩和しても過去3ヶ月以内と過去1年内の入院・手術歴が問われます。その点、この保険は過去の病歴が一切問われません。さすがに現在入院中の入院保険金は受け取れませんが、治療中の持病で入院となれば保険金が受け取れることがあります。
また、損害補償が付いてくるのもメリットでしょう。賠償責任保険金は飼い犬が他人をケガさせたり、子供が他人の自動車を壊して損害賠償を起こされた時に役に立ちます。入院日額5000円なら5000万円まで補償されるため大抵の事態には対処できます。
賠償責任保険金なら他の損害保険でも付加できますが、権利保護費用保険金・被害事故死亡保険金は付加できないケースがあります。権利保護費用保険金は医療ミスで損害賠償をする場合が考えられますが、もっと手近にご近所トラブルで弁護士に相談したい場合でも使えそうです。被害事故死亡保険金はひき逃げ・暴漢等で相手方からの保険金が期待できない場合の備えになります。
基本補償では他に、手術給付金が入院日額の10～40倍受け取れるのもメリットでしょう。他社では一律で10倍だったり、外来なら5倍とする保険があります。この保険なら20万円受け取れるところが、他社なら5万円だけというケースもあるわけです。健康祝い金も掛け捨てにならずに、多少なりとも保険料が戻ってくると考えれば、人によっては悪くない点かもしれません。
最後に、この保険には支払削減期間が無いのもメリットです。他社では加入してから1年間は入院・手術をしても給付金が受け取れません。生命保険会社が販売する引受基準緩和型の医療保険の大半には支払削減期間が設けられています。
デメリット・注意点
この保険のデメリットは、まずは保険期間が5年で終身ではない点が挙げられます。5年が経過して更新すると、更新時の年齢に応じて保険料は上昇します。一方で他社の引受基準緩和型の医療保険は終身のため、契約時の保険料が年齢によって変わらず一生涯同じ金額です。そのため保険料は見た目以上に高いともいえます。
基本補償でも入院保険金は日帰り入院が対象外、放射線治療給付金もありません。特に放射線治療給付金は他社の9割がたの保険にあります。特約も女性向けの特約だけで、先進医療特約も通院特約もありません。先進医療給付金もほぼ全ての医療保険にあるだけに、この保険に無いのはデメリットでしょう。
さらにメリットで挙げた損害補償が本当に必要なのか疑問符が付きます。他の保険で特約で付加でき、特約で付加するか単体で契約した方が保険料も安く済むからです。候補となるのは自動車保険・バイク保険・自転車保険・火災保険等が挙げられます。自動車を保有していれば自動車保険ですが、自動車が無ければ火災保険は賃貸でも持ち家でも加入している人が大半のため有力な候補になります。
ちなみに、この保険には支払削減期間がありませんが、その代わりに補償対象外期間があります。他社の1年よりは短い90日ですが、その間は病気になっても保険金が半額となるのではなくゼロになります。保険開始から即座に補償が開始されるのはケガ・被害事故・賠償事故のみとなります。
評判・苦情
Chubb損保の2020年度（2020年4月～2021年3月）の決算資料によると、正味収入保険料で医療保険が含まれるであろう「その他」の金額は82億円で、前年度に比べて8.8％の増加をしました。全体でいえば7.2％の減少をしているため、火災保険・海上保険と共に牽引役でした。そのため数字面から考えると評判は良さそうですが、その他には他の保険も含まれるため医療保険以外が寄与した可能性があります。
同資料によると2020年度に寄せられた「ご意見・ご要望」は3899件で、そのうち「契約の管理・保全・集金」に関する苦情が多かったようです。特に解約に関するものが多く、保険金については対応の遅れについての苦情が多かったようです。保険金の対応の遅れには不安がありそうです。
以上の数字はChubb損保側の資料のため、第三者の視点でのデータが欲しいところです。しかし、調査会社のJ.D.パワーの「2022年 生命保険契約満足度調査（調査対象6000人）」やオリコンの2022年医療保険ランキング（調査対象8000人）では、損害保険会社であるためランキングの対象外となっています。
総合評価・おすすめか？
結論としては、まかせて安心医療保険はあまりオススメできない保険です。補償内容・保険料から考えて、他社の引受基準緩和型の医療保険の方が優れているからです。ただ、大病を患って治った直後から医療保険に加入したい人にとっては唯一の選択肢ともいえます。その場合は5年間で解約して他の医療保険に移行するのが賢明でしょう。その一点で活用の場面がある保険かもしれません。
それ以外の人は保険とは別の医療保険も検討すべきでしょう。保険料の安さならネオファースト生命・メディケア生命あたりが候補になります。充実した保障内容を求めるならメットライフ・アフラックあたりが候補になります。メットライフなら認知症までカバーできます。
