マニュライフ生命 ライフタイム・カレンシーを比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- マニュライフ生命
- 名称:
- ライフタイム・カレンシー
- 加入年齢:
- 0~85歳
- 受取期間:
- 終身
- 通貨
- 米ドル・豪ドル
- 特徴:
- 外貨建ての年金を一生涯にわたって受け取れる
マニュライフ生命の外貨建て定額年金保険は複数あり、取り扱う銀行・証券会社によって商品名が異なります。ライフタイムカレンシーは三菱UFJ銀行・中京銀行・千葉銀行・富山銀行・栃木銀行・むさし証券・内藤証券で契約ができます。
最近の外貨建て定額年金保険は豪ドルとユーロの新規募集を停止していることも多いのですが、この保険は2021年現在でも豪ドルで契約することが可能です。どうしても米ドルに不安がある人は豪ドルという選択肢がある数少ない保険として検討する余地があるでしょう。それでは以下で保険の概要を記載し他社の保険と比較していきます。
保障内容
この保険は契約時に一時払い(一括払い)で支払った保険料を保険会社が外貨に換えて運用し、据置期間が終了後に年金が受け取れます。保険料を据え置いて運用する据置期間は0~5年から選択でき、最短の0年を選択すれば契約から2ヶ月後から年金が受け取れます。
年金は死亡するか最低保証額まで受け取れます。最低保証は年金原資の100%・110%・130%から自分で選択できます。例えば年金原資の130%を選択して、契約時のドル円が1ドル=100円だったとします。1000万円の保険料を支払うと10万ドルになり、10万ドルの130%の13万ドルが最低保証されます。年金の受取額は合計で13万円が保証されるということです。
それなら全員が130%を選びそうなものですが、130%を選ぶかは個々人の考え方によります。なぜなら何%の最低保証を選ぶかで年額算出率(年金額)と年金支払最低期間が異なるからです。最低保証130%だと年金額算出率は3.12%となり、年金原資の3.12%を毎年受け取ることになります。支払った保険料が10万ドルなら約3000ドルを毎年受け取るため、100%の10万ドルを受け取るには33年が必要となります。
仮に60歳で契約して93歳前に死亡すると、残りは遺族が受け取り自分では使い切れません。それが最低保証100%なら年金額算出率は4.4%のため、23年後の83歳時点で年金原資の100%を受け取り、84歳以降は死亡するまで年金が受け取れます。つまり83歳から長生きするほどに得となります。 それに対して夫婦で使い切れれば良い、何なら孫に残しても良いという考え方もあるでしょう。その場合には夫婦リレープラン・三世代リレープランがあります。
夫婦リレープランの場合は夫が先に死亡する前提で、契約者・年金受取人を夫にして被保険者・後継年金受取人を妻にします。この場合は夫婦が2人とも存命なら夫が年金を受け取り、夫が死亡後の妻は年金を生存している限り受け取れます。ただ、もし妻が先に死亡すると被保険者は妻のため、夫は年金支払最低期間のみ年金を受け取ることになります。それでも年金支払最低期間が29年もあれば、65歳で契約すれば94歳まで受け取れ不安感はありません。
三世代リレープランは契約者・年金受取人を自分にして被保険者・後継年金受取人を子供にします。自分が生存中は自分が年金を受け取り、自分が死亡後は子供が生存する限り年金が受け取れます。さらに子供が後継年金受取人を孫に新たに設定すれば、子供が死亡後に最低期間が残っていれば孫が年金を受け取れます。ただ、この場合も自分より子供が先に死亡したなら最低期間のみ年金が受け取れることになります。
保険料・返戻率を比較
ライフタイム・カレンシーの2021年現在の積立利率は米ドルで1.0%で豪ドルで0.81%です。これは据置期間0~5年のうち何年を選択しても同じです。冒頭でも既述した通り豪ドルがありますが、米ドルの方が高利率のため豪ドルを選ぶ数字面でのメリットはありません。
ただ、この保険も2014年頃までは米ドルが1.2%で豪ドルが1.79%で、米ドルより豪ドルの方が高利率でした。2014年以前も基本的には豪ドルの方が高利率だったため、いずれは元の状態に戻る可能性も否定はできません。それがいつになるかは分かりませんが、今すぐに契約する必要が無いなら少し待ってみるのも良いかもしれません。
それでは現在のライフタイム・カレンシーの積立利率は他社と比較すると高いのでしょうか。下図で15以上の外貨建て定額年金保険の積立利率を比較してみました。さらに年金が受け取れる期間(年金受取期間)と保険料の据置期間も併せて比較しています。
上図を見ると、この保険の積立利率は相対的には低めといえます。他社ではニッセイウェルスや第一フロンティアや三井住友プライマリーは積立利率が1.5%を超え、2%近い数字の保険もあります。そうなると増加する分は同じ保険料なら単純計算で2倍のため、高い積立利率を求める人は他社の保険の方が希望に沿うでしょう。
ただ、その中でもマニュライフの「こだわり個人年金」の保険料の支払いは月払いのため、一時払いの他の保険とは別に考える必要があります。月払いだと据え置き期間は長くなるため一時払いのように数年で年金支払が開始されません。これから長い積立期間があっても老後の計画に支障が無いかを考えて判断せねばなりません。
メリット
この保険には、まずは外貨建て定額年金保険に共通する「高金利」「為替差益」というメリットがあります。外貨だからこそ高い積立利率が見込めて、さらに為替差益によるプラスαの期待があります。それも前段で既述したように外貨の金利は年々下落しており、どこまで下落し続けるか分かりません。数年後には米ドルでも日本円でも同じ金利になる可能性もあり、その意味では今契約するのが最後のチャンスともいえます。
この保険独自のメリットは、最低保証が100~130%まで設定できる点が挙げられます。最低保証100%なら年金支払最低期間は23年のため、60歳契約で83歳以降は長生きするほどに得する長生き支援型の保険となります。日本人の平均寿命は男性が81歳で女性が87歳のため、60歳男性だと平均寿命より2年ほど長生きするだけでOKです。
長生きが難しいと考える男性なら、夫婦リレープランのように妻を被保険者にする手があります。女性の平均年齢は87歳のため83歳を上回れる可能性が高まります。被保険者年齢は55歳~のため若いうちから夫婦リレープランを使えませんが、妻が55歳で契約できれば受取額が最低保証を大きく上回る可能性があります。
また、据置期間が0年に設定できるため、60~65歳までの公的年金が受け取れるまでの空白期間を埋めるのにも利用できます。1ドル=100円の時に60歳で退職金の2000万円を保険料を支払って、最低保証100%を選択したとします。据置期間0年で3ヶ月後から20万ドル×4.4%の8800ドルが毎年受け取れます。1ドル=100円のままなら毎月7.3万円(年間88万円)を受け取れます。
この年金だけで生活するのは厳しくても、この年金と貯金を切り崩せば5年は生活できるでしょう。毎月の生活費が17万円なら貯金が600万円あれば5年だけなら十分です。5年経過して公的年金が仮に月18万円受け取れるなら、この保険の年金と合算して収入が月25万円になります。
もしも公的年金が月10万円以下になりそうな人(自営業の人など)は、この保険と公的年金の受給年齢を繰り下げを併せれば年金の不安を解消できます。公的年金の受給を65歳から70歳まで繰り下げれば年金額は約1.4倍になり、毎月10万円なら14万円になります。この保険の年金額7万円に公的年金の14万円を足せば毎月21万円になり、年金だけで生活は可能でしょう。公的年金の額に不安がある人は、この手も検討すると良いかもしれません。
デメリット・注意点
この保険のデメリットは、まずは外貨建て定額年金保険に共通する「為替差損」が挙げられます。契約後に円高になれば為替分で損失が発生し、変動幅によっては外貨で最低保証分の100%を受け取っても円では100%を下回る可能性があります。
仮に契約時が1ドル=100円で10万ドル(1000万円)なら、最低保証が110%なら単純計算で受け取る額は11万ドルとなります。それが契約後から円高になり1ドル=90円で推移したなら、11万ドルの円での受取額は990万円となります。円での最低保証を達成するにはプラス2~3年は長生きする必要があります。
さらに為替レートによって受け取る毎月の年金額は変動するため、前述の年金計画も変動幅により微妙に誤差が出てきます。例えば2015~2016年にかけてドル円は125円から100円まで円高が進行しました。20%ほど年金額が変動すれば、毎月7万円の予定が毎月5.6万円になります。2007~2011年には125円から75円までの円高の40%の変動を考慮すれば、7万円は4万円になる可能性もあるわけです。
また、契約期間・据置期間が終了前に解約すると解約控除が発生します。据置期間10年で契約から1~2年内に解約すると6~7%が解約控除率となり、1000万円なら解約返戻金は少なくとも70万円は減ります。これに為替による損も考慮すると中途解約による損失は見過ごせない額になります。
税制面でも注意が必要です。夫婦リレープランで契約者・年金受取人が夫で被保険者・後継年金受取人だと、夫が死亡後には年金受給権の評価額が相続税の対象となります。後継受取人だけ妻にした場合も相続税の対象となります。三世代リレープランだと贈与税の対象となる可能性があります。自分の死後の税金がどうなるかは契約前に確認しておいた方が賢明です。
評判・苦情
マニュライフ生命の決算資料によると2019年度(2019年4月~2020年3月)の新契約件数は7.7万件で、前年度から20%ほど減りました。2018年度は前年度比で件数はプラスでしたから、契約件数は伸び悩んだといえます。ただ、他社では半減していることもあるため、契約数等から考えると最近の評判は悪くないといえます。
生命保険協会のデータではマニュライフ生命への苦情数は2300件(2020年度上半期時点)で、総契約数の157万件で割ると苦情率は0.14%(1000契約のうち1.4件で苦情発生)しています。三井住友プライマリーや第一生命フロンティアよりは少し高めですが、メットライフやニッセイ・ウェルスよりは低めです。そのため契約後の苦情は標準か少し多めといった感じです。
また、J.D.パワージャパンの「2020年 生命保険契約満足度調査」ではマニュライフ生命は27社中12位と中位です。この調査は保険を新規購入・更新した約9000人を対象にした調査で、数十件の口コミよりも信頼が置けます。この調査で中位とはいえ業界平均は上回っているため、やはり保険内容や顧客対応等で悪いとはいえません。
その一方で、オリコンの顧客満足度では29社中で21位と低位です。保険料・商品内容・加入手続きでの評判が他社より悪いのですが、特にアフターフォローについての評判が著しく悪いです。22位以下の第一生命・富国生命・朝日生命よりも評判が悪いようです。それを踏まえると、契約後のアフターフォロー(問い合わせ・照会等)については過度な期待は持てなそうです。
総合評価・おすすめか?
結論としては積立利率は高くありませんが、契約者の考え方次第では夫婦リレーでも三世代リレーは使えそうな保険です。為替変動により計算が狂う可能性はありますが、為替の変動幅も織り込んだ計画を立てられれば老後資金の心強い味方になるでしょう。
他方で一時払いで1000~2000万円が厳しい人、積立利率も重視したい人は他社の保険も検討した方が賢明でしょう。マニュライフなら平準払い(月払い)で「こだわり個人年金」が積立利率が高く、一時払いならニッセイウェルスのアットウィルや第一フロンティアのプレミアカレンシープラスが高めです。これらの保険も確認しておくと良いかもしれません。