各所得の概要と課税額の計算(税率・控除・非課税制度等)

配当所得になる所得とは?土地信託の配当は配当所得ではない!?

配当所得には、株式の配当金投資信託の分配金などが該当する一方で、厳密には配当ではないが配当とみなされるもの、さらには配当という名称が付きながらも配当所得とはならないものがある。

まず、厳密には配当ではないが配当とみなされるものは「みなし配当所得」と呼ばれる。例えば、とある企業の株式を持っていたが、その企業が解散することになった場合に、その企業の残余財産が残ることがある。

残余財産は債権者への弁済に優先的に充てられるため、債務超過で破産・倒産した場合には残余財産が残ることは稀有だ。ただ、優良企業でも後継者不足などで解散することもある。そういった場合には、株主が企業の解散後の残余財産を分配することになる。こういった経緯で受け取った金銭は厳密には配当ではないが、限りなく配当に近いのは間違いない。そのため、下図の計算式で算出した額が配当所得額とされる。

みなし配当所得の計算式

例えば、資本金1000万円で1000株を発行していた企業が解散して、10株保有していた人が15万円を受け取ったとしよう。受け取った金額は1株あたり1.5万円で、資本金等の1株あたりの金額は1万円のため、差し引きで1株あたりのみなし配当所得額は5000円となる。この5000円に保有していた10株をかけた5万円が、みなし配当所得の収入額とされる。

ちなみに、みなし配当所得には「相続や遺贈で非上場企業の株式を取得した場合、相続税の申告期限から3年が経過するまでに株式を発行体に譲渡すると、みなし配当課税ではなく株式の譲渡所得とされる」という規定がある。そのまま読むと分かるようで分からない規定だが、意外と納税者に優しい規定といえる。

まず、非上場企業の株式という点を抑える必要がある。上場企業の株式であれば証券会社を通じて容易に売却ができるが、非上場企業の株式では売却は容易ではない。そもそも、現在の適正な株価が幾らか?(購入時より高いか低いか?)すら普通の人には分からない。そのため一般的には相続した株式を、株式を発行した企業に譲渡して、その代わりに金銭を受け取るというケースが多い。ここでみなし配当所得が該当されると、その収入は配当所得となり年収額によっては40%の税金が課される可能性がある。そこで、こういったケースでの株式譲渡は譲渡所得として約20%の課税に留めるということだ。

他方で、配当という名称がつきながら配当所得にならないものに、金銭信託・土地信託などの信託配当がある。信託の内容にもよるが、例えば金銭信託であれば配当として受け取るが配当所得ではなく利子所得となる。これは名称に関わらず、限りなく預金に近いための利子所得とされているのだろう。また、土地信託であれば、信託銀行に預けている土地が賃貸方式で運用されていれば不動産所得となるが、分譲方式で運用されていれば譲渡所得となる。いずれにしても配当所得とはならない。

以上が配当所得の中身と配当所得になるもの・ならないものについてだが、株式・投信についてはNISA(少額投資非課税制度)があるため、1年100万円という制限つきだが積極的に利用したいところだ。また、税金や確定申告で悩む・迷うことがあれば、無料の自治体主催の確定申告相談会(税金セミナー)で確認したり、税理士の無料相談を利用するのも1つの手だ。