各所得の概要と課税額の計算(税率・控除・非課税制度等)

給与所得の計算と給料の増減による税負担増!

給与所得とは、給料・賃金・賞与(ボーナス)などの給与による所得を意味する。この中には公務員・国家公務員の基本給である俸給や、国会議員・地方議員の給料である議員歳費なども含まれる。計算式は非常にシンプルで、収入額から給与所得控除を差し引いた額で計算される。

給与所得の計算式

計算式はシンプルだが、この給与所得控除額が何者なのかが問題だ。この給与所得控除額は税金(所得税)を徴収するうえで、一定額は生活に絶対必須の費用だから税金はかけないと国が考えた額といっていい。下図は2015~2017年の給与所得控除額だが、自分の給料の額(各種控除と税金を差し引く前)が該当する箇所の控除額を見て計算すればいい。

給与所得控除額

例えば年収800万円だと、80万円+120万円=200万円で800-200=600万円が給与所得となる。この給与所得に所得税がかかるわけだが、この所得税が徴収さえる場合にはもう一段の控除(税額控除)がある。まず給与所得が600万円で他に所得が無い場合、所得税率は20%のため600万円×20%=120万円が所得税額となるが、ここから約43万円の控除があるため、実際には120万円から43万円を差し引いた77万円が1年間の所得税額となる。

流れとしては、実際に会社から受け取る給料から、給与所得控除が差し引かれ、さらに保険料・健康保険料・扶養控除などの費用が差し引かれ、さらに税額控除がされて最終的な所得税が決定される。

ここで注意したいのは、所得税はその年の1/1~12/31までの年収で計算される一方で、住民税(10%)は前年度の年収で計算される点だ。仮に年収800万円→900万円→600万円と給料が増減した場合、800万円から900万円に増加した年は900万円を受け取っていても800万円時の税金が課されているため、想像以上に手取りは増える。しかし、一転して900万円から600万円に給料が減少した年は、600万円の給料でも900万円時の税金が課されるため、想像以上に手取りは減る。

こういったケースは、プロ野球選手などで1億円から5000万円に年俸50%ダウンなどといった場合には非常に厳しい結果となる。年俸が50%ダウンした年でも、年俸1億のときの税金が課されるためだ。このケースで、保険などの細かい控除やプロ選手としての諸経費を抜きにして考えると、年俸5000万円の年には約1000万円が住民税として取られる。所得税も45%とられるため、1億の暮らしから一転して約2000万円の暮らしになるということだ。とはいえ野球についてはNPB(日本野球機構)が45%以上の年俸減は規定違反とするなど、税負担への配慮とも考えられる処置もとられている。

また、この給料の増減による税負担増は、決してプロスポーツ選手だけではない。会社員でも退職したり転職で給与が減れば普通に起こりうる。退職してフリーランスとなったり、役員だったが早期退職・リタイアした場合なども起こる可能性がある。後者の場合には退職金から税負担分が差し引かれることが多いが、そういった手続きをしないと悠々自適のリタイア生活に重い税負担が残るため注意したい。

以上が給与所得の計算についてだが、計算式は非常にシンプルなものの、最終的な計算に至るまでは非常に面倒かつ厄介この上ない。わざわざ計算することも普通はないだろうが、翌年の税負担がいくらになるかが分かれば、収入が増えた年に散在すべきなのか一定額は貯金すべきなのかが分かるメリットがある。決して無駄な計算ではないといえるだろう。また、確定申告等の税金で悩む・迷うことがあれば、無料の自治体主催の確定申告相談会(税金セミナー)で確認したり、税理士の無料相談を利用するのも1つの手だ。