株主優待と税金

株主優待目的の株式保有は是か非か?節税・節約になるか?

株主優待は、企業の株式を購入すると企業から株主に向けて優待品が送られる制度だ。株主優待は株式へ投資するため、正確には節税ではなく投資なのだが、考え方次第では節税・節約の一種になり得る。

株主優待狙いで株式を購入する際、マネー雑誌・書籍などでは株主優待で長期保有で優待と利益を稼ぐと喧伝するものもある一方で、一部の経済アナリストは株主優待狙いで株価が下落すれば無意味(物が欲しければ株の値上がり益で購入すればいい)と言う人もいる。

どちらの答えも正解ではあるが不十分な要素があるため完全なる解答とはなっていない。なぜなら、どちらの解答にも正確な時間軸と銘柄が含まれておらず、物事の一部の断面しか捉えていないためだ。まず長期保有という場合、最低でも5年以上は保有することが前提となる。日経平均の過去20年のチャートを見ると、概ね7~10年おきに上昇局面が来ており、高値を掴んでも10年は我慢すれば元の価格に戻るように見える。

日経平均の過去20年チャート

確かに景気は上下するものであり、シクリカルと呼ばれる好況・不況が繰り返される景気循環は否定できない。株式市場でも同じことが言える側面はある。しかし、時間軸を変えて個別の銘柄を見ると状況は異なる。例えば、みずほ銀行の過去10年のチャートを見ると、10年の時間軸では配当金を含めても大損している。

みずほ銀行の過去10年のチャート

つまり景気が循環しても10年経過しても株価は戻らず、1000円の株価が5分の1の200円台を彷徨うこともあるということだ。ここで出る宣伝文句が「銘柄選びが重要」というものだが、これまた的を得ていないことが多い。現在の経済情勢から今後も有望な株などと考えることは可能だが、10年後のことは誰にも分からない。永遠とも思える含み損を抱える可能性は否定できない。

それでも株主優待を目的に株式投資して利益(+節約・節税)を出す方法が無いか?と考えるなら、その1つに超長期で保有する方法がある。これは単に20~30年の保有期間を考えるというものではない。株主優待で実質的に元本を取り戻すことを考える方法だ。

投資を推奨するわけではないが、仮に三越伊勢丹HDを例にとろう。2015年現在の株価は2000円前後で100株単位の取引となるため、最低投資額は20万円前後となる。同社の株主優待はグループ内の百貨店での買い物が10%割引になるというもので、100株保有だと1年間に15万円まで買い物ができる。すなわち1年間に最大1万5千円の割引が受けられる。

三越伊勢丹HDの株主優待の一例

察しの良い方なら気づいたかもしれないが、10年は買い物を継続するなら15万円の割引を受けたことになり、ほぼ投資額を回収できることになる。今から14年経過して株価がゼロでなければ株式を売却しても利益も出る。配当を加味すれば14年よりも縮まる可能性が高い。同じように株主が割引が受けられる株主優待は他に数多く存在し選択肢は広く、自分に合ったものを探すことも可能だ。

もちろん、株主優待が廃止される可能性があるが、なぜか日本企業の特性として壊滅的な損失を出しても株主優待を継続する(もしくは一部削減に留める)ことが多く、株価下落に比べれば可能性は遙かに薄い。

また、株主優待で割引を受けることは、消費税の増税対策・節税にも繋がる。今後の消費税増税のタイミングで株主割引を利用し始めれば、その小売店に限っては消費税の増税分を気にする必要が無くなるともいえる。今から株主優待を利用するなら、増税のタイミングで保有銘柄を増やして割引が受けられる店を増やして、相対的に増税効果を和らげる手もある。ただ、買い物額の正確な把握と、株価に一喜一憂しない精神は必須となるため、その点は肝に銘じておく必要がある。

以上が株主優待の長期保有で利益+節税を得る方法だが、この方法には株主優待廃止の他に上場廃止というリスクもある。そのため、ある程度は大企業に絞ることも必要だ。どのような方法にもリスクをノーリスクにすることは不可能だが、業績不振という要因なら自分が日常的に買い物をするなら感じ取る可能性も高まろう。投資に限りなく近いが、一定の節税効果も持った方法といえるだろう。