円建外債のリスクと税金

円建て外債(サムライ債)のリスクと2016年以降の税金は!?

円建て外債は、海外の国・政府機関・地方公共団体・民間企業が日本国内で円建てで発行する債券で、通称サムライ債と呼ばれる。海外の政府などが日本国内で発行する外貨建ての債券はショーグン債と呼ばれる。言葉だけだと仕組みが理解しにくいため、下図の金銭の流れを参照してほしい。

サムライ債とショーグン債の金銭の流れ

サムライ債の流れを噛み砕いた表現をすると、まず個人投資家が日本国内にいる外国人に円で債券の代金を支払う。外国人は受け取った円を自国の通貨に換えて海外の自国に送金して、自国では送られたきた金銭を事業に回すといった具合だ。利子・償還金の支払いは、海外の自国から日本にいる外国人に外貨から円に戻して送金して個人投資家に支払われるといった具合だ。

この場合、個人投資家は円でのやりとりしかせず、為替レートの変動リスクは外国人が負うことになる。そのため個人投資家は為替リスクを負わず、外国人から提示された利子・償還金を円で受け取るに留まる。そのうえ間接的とはいえ、外貨の高金利を享受できるのだから日本国債や地方債よりも利率は高い。これがサムライ債の最大のメリットといえよう。

ちなみにショーグン債は、外国人(債券の発行体)は外貨での支払いしか約束しておらず、為替リスクは個人投資家が負っている。そのため、通常の外債と同じく為替レートが円安になれば為替差益が発生するが、円高になれば為替差損が発生する。

それではサムライ債のリスクには何があるか? 第一に挙げられるのは債券を発行している国・企業が債務不履行となった場合がある。この場合には保有している債券が紙クズとなってしまい、利子は元より償還金も無くなり損をすることになる。

その他に、自由に満期前に中途売却することが難しい流動性リスクがある。中途売却をしようとすると証券会社を通じて行うことになるが、想像よりも安く買い叩かれる可能性がある。そもそもサムライ債の発行は少額で、円建てで発行しているため日本市場でしか流通せず転売が難しいのが原因だ。また、サムライ債の種類が少ないため選べる満期までの期間が限定されている点も、リスクではないがデメリットの1つといえよう。

税金に関しては、債券は2016年1月から大きく変更されたが、特定口座で取引すれば従来通り、受け取る利子は個人投資家に渡る前に証券会社で20%が差し引かれ(源泉徴収)、利子だけなら確定申告も不要だ。

2016年以降の公社債と公社債投信の課税の変更点

満期まで保有して受け取る償還金の差益は、2016年からは利付け国債は非課税ではなく、特定口座で取引すれば約20%の源泉徴収、特定口座でなければ確定申告が必要になる。割引債の償還金の差益も2016年からは雑所得として課税されるのではなく、利付け国債と同様に譲渡所得で同じく課税される。ちなみに為替益が発生していたなら、その分を含めて課税対象となる。2015年までは雑所得であれば給与所得者なら20万以下で申告不要だったが、特定口座を利用していないと確定申告が必須となった点に注意が必要だ。

サムライ債でみなし外国税額控除が受けられる国

サムライ債に係る税金で注目すべきは「みなし外国税額控除」だが、こちらは2016年の税制改正後も変更はない。この「みなし外国税額控除」は一部の国が発行するサムライ債は海外で既に一部が課税されているとみなすという制度で、確定申告をすることで、国内で源泉徴収された20%の税金のうち何%かが戻ってくる。特にブラジルが有利なため、ブラジル政府が発行するサムライ債があれば要チェックだ。

以上のように、サムライ債にはリスクもあるが、それを上回るメリットも存在する。ただ、昨今ではサムライ債ではなく、外債(+ショウグン債)が主流となっているため投資機会が限られている。見つけたなら、直ちに信用度を確認して投資するか否か速やかに判断したいところだ。また、税金面でのポイントは「みなし外国税額控除」の一言に尽きる。もしも、みなし外国税額控除を含めて不明点・不安があるなら、ネット検索だけではなく最寄の税理士に無料相談するか、税理士主催の無料の相談会や各自治体が催す無料の税金セミナーに行くのもいいだろう。