デュアルカレンシー債とは?

デュアルカレンシー債のメリットとデメリット・リスクと税金は!?

デュアルカレンシー債は、デュアル=二重、カレンシー=通貨、債=債券の組み合わせで、つまりは「2つの通貨建ての債券」を意味する。一般的に、この債券を個人投資家が購入する際には日本円で支払い、債券の発行体からの利子の支払いも日本円ろなる。だが、元本の償還は外貨建てで行われることが多い。それでは、このデュアルカレンシー債には如何なるメリットとデメリット(リスク)があり、そして如何なる税金が課せられるのだろうか?

まずメリットとしては、円建て外債(サムライ債)と比較して、償還金も利払いも利率が高い点が挙げられる。これはサムライ債では債券の発行体が為替リスクを全て負っているのに対して、デュアルカレンシー債は個人投資家が一部の為替リスクを負っていることが大きい。前述のように個人投資家は償還時は外貨で受け取るため、償還時の為替リスクを負っていることになるためだ。

それにも関連するが、第2のメリットとしては為替差益が挙げられる。デュアルカレンシー債の場合は、普通の外債と同じく利子は日本円で受け取るため為替差益はないが、満期で受け取る償還金は外貨のため為替差益が出る可能性がある。とはいえ、購入時よりも円安になれば為替差益となるが、円高なら為替差損となる。メリットでもある反面、デメリットでもある点を忘れずにおきたい。

逆にデメリットとしては、前述した償還金の為替差損の他に、債券発行体の国・企業が債務不履行となり、利子・償還金が受け取れない可能性が挙げられる。国が債務不履行などとは考えられないかもしれないが、最近ではギリシャ・アルゼンチン・カメルーンなどが債務不履行に陥った国として挙げられる。下図は債務不履行をした国の一部だが、1990年代も入れれば相当の数が債務不履行をしている。自分が購入する国には無関係とは考えない方がいい。

債務不履行した国の一覧表(一部抜粋)

その他に、自由に満期前に中途売却することが難しい(流動性リスク)という点がある。そもそもデュアルカレンシー債が数多く流通していないこともあり、個人的に売却するのは困難で証券会社を通じることになる。だが、買い取れば証券会社がリスクを負うことになるため、安く買い叩かれて損する可能性がある。個人投資家が満期前に何かしらの理由で資金が必要となった場合に、資産の売却を検討するならデュアルカレンシー債はリストの最後尾に置いておいた方が賢明だ。

税金に関しては、政府の「金融所得課税の一体化」により2016年1月より大きく変更された。受け取る利子は従来は有無を言わさず源泉徴収で、個人投資家に渡る前に証券会社で約20%が差し引かれていたが、2016年以降は特定口座で取引すれば源泉徴収、そうでなければ確定申告が必要になった。

2016年以降の公社債と公社債投信の課税関係(所得・申告・損益通算など)と変更点

満期まで保有して受け取る償還金は、円安が進行していれば為替差益が発生するが、その利益は雑所得ではなく譲渡所得として課税される。特定口座でなければ確定申告が必要なのは通常の債券の利子と同様だが、その損益は株式・投信などと損益通算ができるようになった。デュアルカレンシー債以外でも資産運用しているなら利用しない手はない。

以上のように、デュアルカレンシー債はサムライ債よりもリスクもあるがリターンは大きい金融商品といえよう。個人投資家としては、何にせよ償還時の為替レートが問題となるため、その点に神経を注いで投資する必要がある。税金面では他の債券と比較して有利・不利はないが、2016年の変更で他資産と損益通算ができるようになった点は注目だ。デュアルカレンシー債で大きな損失があれば、株式・投信で支払った税金が還付される可能性がある。税金の計算は比較的容易ではあるが、もしも不安があるなら最寄の税理士の無料相談を利用するか、税理士主催の無料の相談会や各自治体の無料の税金セミナーに行くのも手だろう。