割引債と税金

2016年に大きく変わった割引債に係る税金の取り扱いとは!?

割引債は、債券の券面金額(償還金額)よりも低い価格で発行され、満期まで保有して償還されれば償還金と購入額の差額である償還差益が利益となる債券だ。ただ、現在では公債(国債と地方債)も社債も利付債が現在では主流となっており割引債の存在感は薄い。それでは割引債に課される税金は何だろうか?

まず、2016年から政府の「金融所得課税の一体化」が施行され、債券に関する税制が大幅に変更された点を抑える必要がある。従来は債券の償還で得た償還差益は雑所得となり、債券の発行時に18%の税率で所得税が源泉徴収(事前に税金分が証券会社によって差し引かれる)され、所得税の確定申告も不要となっていた。

2016年以降の公社債と公社債投信の課税関係(所得・申告・損益通算など)と変更点

しかし、2016年以降に発行される割引債は農林債などの一部の債券を除いて、「みなし償還差益」に約20%が課税されることになった。この「みなし償還差益」は、あらかじめ定められた償還差益という意味だ。具体的な額は、割引債で発行から償還までが1年以内のものは償還金額の0.2パーセント、1年超だと償還金額の25パーセントとされている。これに約20%の所得税が課税される。

例えば、債券の券面額100万円(償還時に100万円)を受け取る割引債を70万円で手に入れたとしよう。償還までが1年内だと、みなし償還差益は100万円×0.2%=2000円となり、所得税額は2000×20%=400円となる。他方で償還までが1年以上だと、みなし償還差益は100万円×25%=25万円、所得税額は25万円×20%=5万円となる。

ただし、この源泉徴収は新発の割引債に限られ、既発債は上述の課税に当てはまらない。既発債を相場で購入して、満期で償還費まで保有して利益を得た場合には、この差益は新たな課税は発生せず確定申告も不要となる。つまりは既発の割引債であれば実質は非課税ということになる。

妙な話しに感じるかもしれないが、最初に割引債を購入した人に課税している以上は、次に既発債を購入した人に課税すると、1つの債券から2重に税金を徴収することになる。その観点からすれば、実質的に非課税となるのは理に適っているといえよう。何にせよ、実質的に非課税というのは利用しない手はない。

しかし、現在の証券会社の割引債のラインナップを見ると割引債は外貨建ての割引債(一般的にゼロクーポン債と呼ばれる)ものばかりだ。これらは国外発行の債券であり、既発債でも既に源泉徴収が行われていないため、既発債として手に入れた人が償還で得た償還差益は課税対象となってしまい税金面でのメリットは無い。

以上のように、既発の割引債で税金面でのメリットがあるはずなのだが、その商品が募集されていないため税金面でのメリットを見出すことは難しい。かつては、新発の割引債はの税率は18%と他の債券の20%よりも低かったが、2016年からは20%になり税率で有利な点は無くなり利用価値は大きく減った。何か、債券を含めて税金について不安な点があるなら、最寄の税理士に無料相談するか、税理士主催の無料の相談会や各自治体が催す無料の税金セミナーに行いって直接確認すると安心できるだろう。