生命保険 解説・用語集
介護費用はいくら必要?
両親・配偶者もしくは自分が要介護状態となるのを懸念する人は多いが、実際に介護に必要な費用はいくらなのか?
それを考えるに当たって、必要なものは①何歳でどの介護状態になるか? ②介護状態は何年継続するか? ③在宅介護か施設入所か?の3点といえる。それを1つずつ詳らかにし、想定される介護費用の平均額のみならず最大額も算出してみる。
まず「①何歳で介護状態になるか?」だが、これは早ければ75~79歳、平均的には80歳前半となる。さらに要支援1~要介護2となる比率が高い(詳細は介護が必要になる年齢は?を参照)他方で介護状態に一生涯ならない人も存在し、逆に平均よりも早期で介護状態となる人もいるだろう。そこで要介護状態となった原因を、厚労省の国民生活基礎調査のデータから見てみる。
介護が必要になった原因は、高齢による衰弱・その他を除けば、脳卒中(脳梗塞)が圧倒的に高く、次いで認知症・転倒骨折・関節疾患が続く。認知症は75歳以上から比率が一気に上昇することを考えれば、若くして介護状態になる原因としては脳卒中が相当に高いことが予想される。そこで脳卒中の平均年齢や年齢別の患者数を見てみる。
上図は厚労省のデータをニッセイ基礎研がまとめたデータだが、脳卒中の患者数は70~80歳前半がピークだ。ただし、50代前半で5万人、60代前半で10万人超の患者数が存在するる点は見逃せない。さらに「要介護度別の介護が必要になった理由」を見ると、最も介護度が高い要介護度5(ほぼ寝たきり)となった原因のトップが脳卒中となっている。ここから分かるのは、50代で脳卒中を発症して一気に要介護5になるのが、最も懸念すべき事案といえるだろう。
次に「②介護状態が何年継続するか?」だが、生命保険文化センターのデータだと平均56ヶ月(4年4ヶ月)となっている。他方で10年以上の介護を経験した人も12.5%存在する。介護期間が15~20年の長期に及ぶケースも考えなくてはなるまい。
最後に「③在宅介護か施設入所か」だが、厚労省のデータによると介護を受けたい場所は男性の50%、女性の35%が自宅としている。女性については施設・病院を合算した数字は50%近く、可能性としては半々といえるため両方を考慮すべきだろう。まず在宅介護だが、日経新聞がFPに依頼して作成した「要介護度別の介護保険の利用限度額と自己負担額」の下図を見て欲しい。
上図を参考にすると自宅での介護の場合には、訪問介護・夜間巡回訪問介護や福祉用具の貸し出しをしても3万程度の出費で済むようだ。ただし、上図には食費・光熱費・衣服費などは含まれない。さらに自宅を改装してバリアフリーに改築したり介護リフォームするようなら、最低でも100~200万は別途必要となる。しかし、介護リフォームには補助金が出るため数千万円を要するということは考えにくい。
他方で施設入所となると、在宅介護と比較して一気に費用が膨らんでくる。上図には老人ホーム・高齢者住宅・特別養護老人ホーム(俗にいう特養)との記載もあるが、費用には居住費・食費・洗濯代などの他の費用が含まれていない。そのため、これらの別途費用が施設入所となると必要になる。下図の厚労省の「特別養護老人ホームの1ヶ月の自己負担の目安」を見てほしい。相部屋の場合で食費等込みで約9万円、個室で約14万円となっている。もちろん地域や施設のグレードにもよるが、目安としては妥当な額だ。
以上を総括すると、平均的な流れとしては80歳で要介護→5年間在宅介護→平均寿命の85歳で死亡と考えられる。その際の費用は毎月2万×12ヶ月×5年で120万円が介護で必要となる。自宅の改築を見込めば200~300万円あれば平均的な介護への備えにはなる。平均でも施設入所となると、毎月14万×12ヶ月×5年で840万円が必要になる。大きな額に見えるが、会社員は厚生年金が毎月15万円、公務員は共済年金が毎月17万円あるため840万円の貯金が必要というわけではない(年金については年金保険は必要か?を参照)
他方で懸念すべきは、50代・60代で脳卒中→要介護度5で施設入所→15年程度の介護を受けて死亡というケースだ。この場合、50代での収入は途絶えて障害年金(毎月10万程度)を受け取りつつ配偶者の生活費・子供の教育費を賄うことになる。この場合は障害年金で介護費を相殺し、年金を受け取るまでの配偶者の10年分の生活費(毎月15万)、子供の大学からの教育費である300万円程度(子供1人の教育費を参照)は見込む必要がある。配偶者が介護に付きっ切りで収入なしを想定すれば、15万×120ヶ月+300万で2,100万円は必要となるだろう。