生命保険 解説・用語集
医療保険は本当に必要か?それとも不要か?
医療保険は、健康を気遣う若い世代から中高年まで幅広く関心がある保険で、保険会社もこぞって広告宣伝・営業に注力している。病気(入院・通院)に対する懸念は誰しもが持つため、そこに付け入った保険会社に踊らされている可能性がある。医療保険は本当に必要なのか?それとも不要か?
結論から述べれば、相応の貯金ないしは収入があるなら医療保険は不要だ。他の保険も同様だが、必要な治療費を賄えるなら、わざわざ保険を契約する必要はない。それでは医療保険においては、どの程度の金額を覚悟しておけばいいのか?
まずは「治療費の実費」から考えてみる。日本には高額療養費制度があり、治療費が一定の金額を超えると、超過分の治療費が国から国民に支払われる。「医療保険の妥当な給付日額は?」でも記述したが、月収53万以上の高所得者だと自己負担は毎月15万円程度が上限となり、月収53万円以下なら毎月12万円程度が上限となる。さらに70歳以上だと月収28万以上で8万円程度、月収28万以下なら5万円程度が上限となる。
そのため、月収53万円以上の人なら月収38万円でも十分に生きられる生活水準があれば医療保険は不要だ。貯金で賄うなら入院の平均日数の30日と通院の40日(週1の通院で約10ヶ月)から、11ヶ月分の治療費となるため15万円×11ヶ月=165万円あれば事足りる。ただし、例えばガンだと抗がん剤治療で5年通院するケースもあり退職する可能性もある。慎重に考えれば、この場合は有給消化・傷病手当金(休職)・退職金・雇用保険を考えても、3年間の生活費と治療費は考慮せねばなるまい。1ヶ月の生活費が20万円で治療費が12万だと、32万×36ヶ月(3年)=約1,100万円の貯金が必要になる。ただ、このケースでは医療保険ではなく、就業不能保険・所得補償保険で生活費はカバーすべきといえる。
他方、病気になるのが70歳以上だとするなら、退職の懸念は不要で代わって年金受給がある。老後は年金のみで生活する予定なら、前述の治療費5万円分だけが生活費外の負担となる。平均寿命の80歳まで医療費が必要なら、5万×12ヶ月×10年=600万円の貯金が必要となる。それでも、10年間毎月上限まで病院を利用し続けるのは非現実的だ。最長で合計5年とすれば300万円の貯金で十分といえる。
視点を変えて「医療保険で最高でいくらの給付金が受け取れるか」という考え方もある。あらかじめ医療保険でMAXで受け取れる額が手元にあるなら、わざわざ保険を契約しなくとも、その分の金額を生活資金とは別に貯金しておけば事足りるというわけだ。
アフラックを例にとると、入院給付金・通院給付金の通算給付日数(保険契約中に給付金を受け取れる限度日数)は約1,000日となっている。入院給付日額を5,000円、通院給付日額が3,000円なら500万と300万になる。単純計算なら800万円を貯金しておけば医療保険は不要だ。ただ、平均の入院日数は約30日で通院は約40日のため、800万は現実に則した数字とはいえない。だとすれば健康に不安が出てくる40歳から、10年おきに30日の入院と40日の通院を行い、その度に手術をして平均寿命の80歳まで生きた(入退院を4回繰り返すのは稀だが)と仮定しよう。この場合、手術給付金を5万円だとすると10年おきに32万円が保険会社から受け取れる。40~80歳の間には128万円が受け取れる計算だ。128万円以上の貯金があれば、保険に入っているも同様となる。
以上を総括すると、生活費とは別に貯金額が128万・165万・300万・600万・800万と段階が進む程に医療保険は不要となる。月収次第では貯金なしでも十分といえる。また、貯金が1,100万までいけば医療保険だけでなく就業不能保険・所得補償保険も不要となる可能性(家族の人数によっては不足するが)が高まる。ただし、あくまで平均的な数字も用いて算出した数字のためイレギュラーは生じうる。例えば、先進医療を利用することになれば数百万円が自己負担となるため、前述の目安は吹き飛ぶ。確率としては高く見積もっても0.5%なので無視は可能だが、確率はゼロではない点は覚えておきたい。
そのため、あらゆる万難を排すなら前述の金額の貯金に医療保険を足すのが妥当だ。もしくは、貯金に生命保険を足して医療費の不足分は契約者貸付を利用する手もある。他方、前述の貯金で備える(そもそも保険は不払いがあり信用できない)場合も確実性を増す方法はある。前述の先進医療を考慮すると、800万円に先進医療費の数百万(200~300万)があれば万全に近づくことになる。夫婦なら夫婦2人分の貯金を揃えば、目指すべき完璧になるといえる。