インデックスファンドの配当についての質問と回答集

インデックスファンドは特定の指数に連動する投資信託です。連動する指数によって組み入れている債券・株式の銘柄が異なります。指数に連動する投信にはETFもありますが、インデックスファンドが株式市場に上場するとETFになるという認識が正しいです。

インデックスファンドも投資信託の1つのため、多くが分配金を個人投資家に支払っています。その一方でインデックスファンドには配当もあります。インデックスファンドが株式で構成されていれば、企業からインデックスファンドに配当が渡っているからです。

以下では「インデックスファンドの配当」についての質問(疑問)と回答を解説していきます。あまり多くが語られることがありませんから、新たな発見も見つかるはずです。

インデックスファンドの配当が分配金?

インデックスファンドから個人投資家に支払われるのは配当ではなく分配金です。インデックスファンドは株式ではなく投資信託だからです。その証拠に株式と勘違いされやすいETFでも、運用会社の公式サイトには分配金という表記があります。

日経225上場投信の公式サイト

個人投資家に支払われるのが分配金だとしても、インデックスファンドにも配当があります。それは組み入れている株式から受け取る配当です。インデックスファンドは全ての企業から配当を受け取ったら、そのまま分配金として個人投資家に還元していれば仕組みは簡単です。ただ、実際には時間差と微妙な誤差があります。

例えば日経平均に連動する日経225上場投信は2019年7月8日時点で22008円で、分配金は10口あたり4090円が支払われました。分配金は年1回ですから、分配利回りは1.85%となります。それでは日経平均の配当利回りはというと、7月8日時点で2.23%です。2019年の1年間は日経平均の配当利回りは2~2.2%を推移していましたから、2%から信託報酬の0.22%が引いたならつじつまが合います。

日経平均の配当利回りチャート

もしくは分配金は2017年度(2017年4月~2018年3月)に受け取った配当だった可能性もあります。なぜなら2018年3月27日の権利付最終日の日経平均の配当利回りが1.82%だったからです。その日の日経平均の終値は21317円ですから10口分なら配当は3880円で、分配金4090円に近く誤差は許容範囲内ともいえます。

別の視点からも考えてみましょう。インデックスファンドは企業から配当を受け取りますが、投資家に分配金を支払うまでには時間差があります。また、配当落ち日に下落する株価とも連動しなければなりません。その時にインデックスファンドはどうしたか、日経平均に連動する日経225上場投信の動きで確認しましょう。

日経225上場投信の基準価額と日経平均のチャートと乖離率2018年12月1日~2019年11月1日

2018年12月から日経平均と日経225上場投信は綺麗に連動しています。これが権利付最終日の2019年3月27日に0.8%ほど乖離して、日経225上場投信の方が高くなってしまいます。それが分配金を出す2019年7月8日には逆転して、今度は-1.8%の乖離率で日経225上場投信の方が安くなってしまいます。その帳尻を合わせたのが2019年9月27日の権利落ち日です。

この動きからインデックスファンドが配当をどう運用しているか、その仕組みが少し分かります。まず指数とは乖離しますが3月では配当分を再投資します。7月に分配金を出すと日経225上場投信の方が安くなりますが、その帳尻は9月の配当分を再投資しない(配当落ちで日経平均が下落する)で合わせたと考えられます。そのためインデックスファンドは配当をほぼ分配金で出すものの、一部を先送りしている可能性もあります。

このように配当からインデックスファンドの仕組みが垣間見られます。とりあえず個人投資家としては、ほぼ配当が分配金になる点、指数よりインデックスファンドの方が割高になる期間がある点を押さえましょう。

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インデックスファンドは配当あり?なし?

インデックスファンドは分配金を出しますが配当は出しません。インデックスファンドは組み入れている株式から配当は受け取り分配金で投資家に還元します。ただ、全てのインデックスファンドに配当があるわけではありません。

例えば、マザーズ指数に連動するインデックスファンドは、マザーズに上場している新興企業を組み入れます。マザーズの多くの若い企業は利益を成長に振り向けて配当は出しませんから、インデックスファンドもほぼ配当を受け取っていません。同じことは成長著しい新興国株式の指数に連動するタイプにもいえます。

それ以外にも特殊なインデックスファンドだと配当が無いことがあります。例えば、日経平均の2倍の動きをするタイプ(ブル2倍など)が挙げられます。これは日経平均を構成する株式ではなく、日経平均先物を組み入れて指数と連動しているからです。先ほどのマザーズに連動するタイプも、配当が無いことを前提にマザーズ指数先物で連動していることがあります。

日経平均ブル2倍上場投信の分配金と資産配分(出典:日経平均ブル2倍上場投信の交付目論見書)

また、株式ではない金(ゴールド)や石油価格に連動するインデックスファンドには配当がありませんが、配当に近いものを受け取っているものもあります。債券価格に連動すれば金利収入があり、リート指数に連動すれば賃料収入があります。これらも配当と同じく分配金で投資家に還元されます。

一般的にインデックスファンドは指数上昇による利益が目的ですから配当はオマケに過ぎません。そのため配当込みのインデックスファンドか分配金を再投資すれば、複利効果で上昇が上乗せされるという人もいます。それではインデックスファンドは配当込みの方が良いのでしょうか?それについては次の項目で解説します。

インデックスファンドは配当込みの方が良い?

インデックスファンドの中には分配金再投資タイプがあり、自分で分配金を再投資しても配当込みのインデックスファンドになります。分配金再投資するか否かは長期間になれば大きな差になります。例えば、日経平均は1989年の最高値38957円に今の23000円程度(2019年末時点)では遠く及びません。しかし、1989年の最高値を掴んでも配当込みか愚直に分配金を再投資していれば状況は異なります。

日経平均と配当込み日経平均の比較チャート(出典:日経電子版 マネー研究所)

縦軸はパーセントなのですが、配当抜き日経平均だと損失が40%あるのに対して、配当込み日経平均(日経平均トータルリターン)は1989年時の80%近くまで戻しており、損失は20%まで縮んでいます。つまり配当込みの日経平均は2019年時点で3万円を突破して31165円まで戻っている計算です。

ただ、これは結果論に過ぎず実際に再投資した人は極めて少数でしょう。それも自分が今から実践するにしても相当の胆力と若さが求められます。なにせ最長30年(今でも最高値に戻していないため最長40年の可能性も)ですから、新社会人が53歳のベテランになるほど長いからです。

さらに今までは配当込みで良い結果でしたが、今後も続くかは分かりません。企業の配当重視が続けば指数と配当込み指数との乖離は進みますが、配当より自社株買いによる株価上昇が重視されれば乖離が縮小するからです。アメリカでは自社株買いが10年前の1.5~2倍に膨らんでいます。企業は増配後に減配すれば株主の反感を買いますが、そういった心配が自社株買いでは小さいことも背景にあります。

SP500種企業の自社株買いの量(出典:ウォールストリートジャーナル 米企業の自社株買い減速、下支え失う市場 2019/8/22)

さらに今後は株主還元よりESG投資(環境・社会・企業統治)に合致するか、SDGs(持続可能な開発目標)に則した経済活動をしているかが求められる可能性もあります。これらは重要ですが、対策費や研究開発費で企業の利益を圧迫する側面があります。まさに今が端境期であり過渡期を迎えているなら、指数との乖離は止まり始めるはずです。

インデックスファンドは配当込みがベンチマーク?

指数が配当込みだと現在値と大きく乖離していることを受けて、運用会社も動き始めました。例えば三菱UFJ国際投信は2019年7月からインデックスファンドのベンチマークを配当込みに変更しました。ベンチマークとは比較する際に指標となる数字のことです。中小型株投信がベンチマークである日経平均に投資するより良いパフォーマンスだったか、といった使われ方をします。

これをインデックスファンドに適用したのですが、インデックスファンドに投資する人には大した意味はありません。多くのインデックスファンドが配当は分配金で投資家に還元しますし、ベンチマークが配当込みになっても、そのインデックスファンドの分配金再投資額なら大差が無いからです。

ただ、後述する高配当指数などの一部の指数に連動するタイプには影響があるかもしれません。今までは配当抜きの指数よりも明らかに優秀だったのが、実は差は大きくはないことが分かるからです。信託報酬などを差し引けば逆転する可能性だってあります。

また、配当込み指数が普及するとインデックスファンド以外の投資信託には大きな影響があります。今までは配当抜きの日経平均よりも基準価額(ないしは分配金再投資基準価額)が上回っていたから、優秀に見えていた投信も多いはずです。それが配当込み日経平均は今は3万円を超えているわけですから、自らの無能さが露見してしまいます。特にアクティブ運用する投資信託に影響があるでしょう。

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インデックスファンドの配当はいつ?

インデックスファンドが企業から配当を受け取り、それを分配金として投資家に還元するのはファンドの決算日により異なります。日経平均に連動するインデックスファンドでも、年1回だけ7月に分配金を出すタイプもあれば、2月と8月に分けるタイプもあります。

時期・回数は本当に様々ですが、運用会社毎の傾向は見えなくはありません。野村アセットマネジメントや日興アセットマネジメントだと年1回が多い印象で、ブラックロックは後述する配当のボリュームゾーンに合わせて年2~4回が多い印象です。あくまで傾向ですから、まったく異なる回数・時期であることもあります。

また、インデックスファンドが企業からいつ配当を受け取っているか?という疑問もあるかもしれません。これについては組み入れている企業によるとしか答えようがありません。日本企業の多くが3月と9月が配当月のため、日本株の指数に連動するインデックスファンドは3月と9月にボリュームゾーンがあります。その一方でアメリカ企業は四半期毎に配当を出すのが主ですから、四半期毎にボリュームゾーンがあります。

また、インデックスファンドによって連動させる方法が異なるためボリュームゾーンに差があるかもしれません。日経平均は225銘柄、NYダウは30銘柄を揃える完全法で指数と連動できます。それがTOPIXだと2000銘柄以上、NASDAQなら3000近い銘柄が必要になります。そのため一部の銘柄を省略して指数への影響(寄与度)が大きめの銘柄に絞る準完全法が行われます。

準完全法だと企業が省略されている分だけ本来とはボリュームゾーンが異なる可能性があります。また、株式ではなく先物などのデリバティブを使って連動させていれば配当を受け取っていません。

インデックスファンドの配当利回りは?

インデックスファンドは配当を分配金で投資家に還元しますから、配当利回りは分配利回りに直結します。ここ数年の日経平均・TOPIXの配当利回りは1.5~2.3%、アメリカのNYダウ・S&P500の配当利回りは2~3%です。これらに連動するインデックスファンドは似たような分配利回りになっています。

その他に高配当の銘柄のみを組み入れているインデックスファンドがあります。もちろんインデックスファンドですから、ファンドは自分で銘柄を選ばず指数に連動するだけです。日本だと東証配当フォーカス100という高配当の100銘柄で構成される指数があり、この指数に「上場インデックスファンド日本高配当」というETFが連動しています。また、MSCIが独自に抽出した30~100銘柄で構成される「MSCI高配当利回り指数」もあります。

アメリカには配当貴族指数という有名な指数があり、配当利回りは2.5~3.3%と高いです。時価総額が500位内の企業のうち25年間連続して毎年増配している企業のみで構成されています。現在は50社程度で指数を構成しており、ジョンソン&ジョンソンやコカコーラが増配を56年も継続中です。

SP500配当貴族指数の概要(出典:野村アセットマネジメント米国株式配当貴族 年4回決算型 販売用資料)

配当貴族指数の他に「FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス」に連動するものもあります。この指数はFTSE社が独自に高配当株を抽出して算出しており、楽天・米国高配当株式インデックスファンドなどが連動しています。

主にインデックスファンドは指数上昇による値上がり益を目的に購入されます。指数が下落したり横ばいだと利益は見込めないのですが、高配当であれば少なくとも指数が横ばいでも利益が見込めます。そのため高配当でインデックスファンドの弱点が補えるともいえます。それではインデックスファンドは高配当の方が良いのでしょうか? それについては次の項目で解説します。

インデックスファンドは高配当の方が良い?

高配当の方が普通のインデックスファンドよりも良いパフォーマンスになるのでしょうか。試しに「上場インデックスファンド日本高配当」と「日経225上場投信(分配金再投資)」と日経平均を比較してみます。「日経上場投信(分配金再投資)」を配当込み日経平均と考えてください。

上場インデックスファンド日本高配当・・日経225上場投信(分配金再投資)・日経平均(配当抜き)の直近1年間のパフォーマンス比較チャート(モーニングスターのデータより作成)

2019年1月から12月までの1年間では、最も優秀なのは赤線の日経225上場投信(分配金再投資)です。年初こそ黄線の上場インデックスファンド日本高配当の方が良かったのですが、年央にかけて失速しています。それも日経平均(配当抜き)にも劣りますから、日経225上場投信を購入して分配金を再投資せず浪費しても、なお日経225上場投信の方が得だった計算になります。次に3年間という中期のチャートで比較してみます。

上場インデックスファンド日本高配当・・日経225上場投信(分配金再投資)・日経平均(配当抜き)の直近3年間のパフォーマンス比較チャート(モーニングスターのデータより作成)

2017年こそ高配当は悪くありませんが、2018年から差が開き始めて、2019年末時点では配当込み日経平均よりパフォーマンスが20%ほど劣ります。日経平均ではなくTOPIXにすれば差は縮まりますが、あくまで差が縮まるだけで逆転はしません。

それではアメリカはどうでしょうか。配当貴族指数に連動する投信に「野村 インデックスF・米国株式配当貴族指数」があります。これとS&P500に連動する「iシェアーズ 米国株式インデックス(分配金再投資)」とS&P500(配当抜き)を比較してみます。いずれも為替ヘッジなしの円換算の数字です。

野村 インデックスF・米国株式配当貴族指数・iシェアーズ 米国株式インデックス(分配金再投資)・S&P500(配当抜き)の直近1年間のパフォーマンス比較チャート(モーニングスターのデータより作成)

直近1年間は3つで良い勝負をしていますが、配当貴族指数が配当込みS&P500よりも高いパフォーマンスとなる時期は限定的です。それよりは配当抜きのS&P500に劣る時期が多いことの方が目立ちます。それでは3年間ではどうでしょうか?

野村 インデックスF・米国株式配当貴族指数・iシェアーズ 米国株式インデックス(分配金再投資)・S&P500(配当抜き)の直近3年間のパフォーマンス比較チャート(モーニングスターのデータより作成)

2017年は差が無いものの、2018年には配当貴族指数の方が劣る場面が多くなります。それが2019年後半には配当込みS&P500を僅かに上回るまでになっています。さらに2018年末の急落の時に、日本にはない特徴が見られます。それは直前まで配当貴族指数の方が劣るパフォーマンスだったのが、急落時は配当貴族指数の方が下げ幅が小さい点です。これは「配当があるから」と売却を踏みとどまった投資家が多かったともいえます。

このように必ずしも高配当のインデックスファンドの方が優秀とは限りません。あくまで連動する指数(銘柄)によって結果が異なります。その上で言えることは、高配当のインデックスファンドは3年以上の中長期であれば検討に値するということでしょうか。特にアメリカの配当貴族指数は、リーマンショック時にも増配した驚異的な企業で構成されています。

SP500配当貴族指数と配当込みのsp500指数の過去30年間のパフォーマンスの比較チャート(出典:野村アセットマネジメント米国株式配当貴族 年4回決算型 販売用資料)

上図からも分かるように、アメリカの高配当インデックスは10~20年の長期投資なら検討する価値がありそうです。ただ、1~3年程度ではS&P500に劣る可能性があること、長期で再投資しないと無意味という点は忘れずにおいて下さい。

まとめ

ここまでインデックスファンドと配当に関する疑問に回答し解説してきました。インデックスファンドは指数に連動するだけと考えるとシンプルな投信ですが、配当に目を向けると意外な発見もあったはずです。

世界に名だたる投資家であるウォーレン・バフェットは、個人投資家にはインデックスファンドを勧めています。ヘッジファンドやプロの投資家でもインデックスに勝つのは至難の技だからです。個人投資家はインデックスファンドを活用して、賢く上手に資産運用をしましょう。