確定申告/所得税の申告の概要と仕組み(税率・控除・計算など)
何が損益通算できて何が損益通算できないのか!?
所得税は各所得を合算した総所得金額に課税されるが、全ての所得がプラスでなく一部の所得はマイナスになることもある。その場合、損失が出た所得のうち特定のものは、他の所得のプラスから差し引ける。これを損益通算といい、損益通算によって総所得額が減り納税額が減り節税ができる。
損益通算の対象となる損失は不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つで、それらで生じた損失は他の所得の黒字と損益通算ができる。このままなら非常に楽なのだが、例外が幾つもあるのが非常に厄介だ。
まず1番大きな例外に「株式等の譲渡所得の損失」が挙げられる。株式・投信等を取引して損失(譲渡損)が出たとしても、その損失は無いものとされて他の所得との相殺はできない。もちろん、株式と投信などの同じ所得内の通算(内部通算)はできるが、他の事業所得などとは通算はできない。逆に株式等で利益が出て、他の所得で損失が出た場合も同様だ。ただ、株式については配当との損益通算が2009年から可能になっており、さらに2016年からは債券の利子所得などとも損益通算が可能になっている(詳細は2016年以降の債券と税金を参照)
次に株式・投信と類似するが、先物取引による損失も損益通算の対象とはならない。先物取引には、日経平均先物や大豆・コーンなどの先物取引だけでなく、FX・ワラント・バイナリーオプションも先物取引に係る雑所得に該当するため注意したい。
また、生活用動産の譲渡による損失、生活に必要でない資産に係る所得の損失も損益通算の対象とはならない。前者にはフリーマーケットで洋服を売った場合の損失が例として挙げられる他、後者には別荘の譲渡や貴金属・骨董品の譲渡による損失が挙げられる。さらに、個人が自分の資産を時価の2分の1未満で譲渡することで損失が発生しても、それは損益通算の対象とはならない。例えば、自動車を友人に時価の半額以下で譲り渡した場合、損失が出ているといえるが損益通算の対象とはならない。
最後が、不動産所得の赤字のうち土地取得のための借入金利子だ。不動産所得での損失の中で、土地を取得するために要した借入金(負債)の利子部分は損益通算ができない。具体的には、不動産所得の赤字額と負債の利子で大きい方が損益通算ができない。つまりは、借入金の利子と不動産所得の赤字部分を合算した額を他の所得と合算できるはずが、2つのうち額が大きい方は切捨てられて、他の所得と損益通算が出来ないということだ。
以上が損益通算についてだが、数少ないシンプルかつ効果の大きい公然の節税手法のため、有効活用して可能な限り1円でも納税額を減らしたいところだ。また、初めて確定申告が必要になり申告書の作成に悩むことがあれば、無料の自治体主催の確定申告相談会(税金セミナー)で直接確認してみたり、税理士の無料相談を利用するのも手だ。