太陽生命 My介護ベストを比較・評価

太陽生命 My介護Best
オススメ度:
3
保険会社:
太陽生命
名称:
My介護Best
加入年齢:
20~79歳
保障期間:
終身
保障内容:
介護・死亡
特徴:
一生涯の介護保障を準備できる保険

My介護ベスト(マイ介護ベスト)は太陽生命が販売・募集している介護保険で、基本的に保険料は月払いではなく一時払いとなります。ある程度の元手が必要となるため、退職金等を受け取ったら検討すると良いかもしれません。

太陽生命には一時払いではなく月払いの介護保険だと、My介護ベスト+(プラス)という保険もあります。一時払いが難しいならプラスを検討しても良いかもしれません。それでは以下で、My介護ベストの概要を記載し他社の介護保険と比較していきます。

概要

この保険の正式名称は「無配当利率変動型一時払終身生活介護年金保険」です。後半の一時払終身生活介護年金保険の意味は、保険料を一括払いして介護状態になると終身(一生涯)で年金が受け取れるという意味です。前半の無配当・利率変動型は他社の介護保険では聞き慣れないフレーズかもしれません。

太陽生命 My介護ベストの概要(出典:太陽生命公式HP)

まず利率変動型というのは、契約者が支払った保険料を保険会社が予定利率に応じて運用することを意味しています。この保険は要介護状態になった時に年金が受け取れる介護保障の他に、解約した際に受け取れる解約返戻金に資産運用の側面があるのです。

契約者が支払った保険料は諸経費を差し引いた分が解約返戻金となり、予定利率に応じて年々増加していきます。予定利率は30年毎に変動しますが、最低保証予定利率があるため0%やマイナスになることはありません。そのため支払った保険料は運用され着実に増加します。

また、他の保険では支払った保険料が運用で増加すると、契約者に増加分だけ配当が支払われることがあります。しかし、この保険は無配当のため配当金は支払われません。そのため無配当という冠名が商品名に付いています。次に保障内容の詳細について記述していきます。

▲ページの一番上に戻る

保障内容

この保険には介護保障と死亡保障があります。介護保障は要介護2以上に認定されると介護年金が一生涯受け取れるというものです。初回年金割増特則を付加すると、初回のみ基本年金額が2倍になります。死亡保障は介護年金を受け取らずに死亡すると死亡給付金、介護年金を受け取った後に死亡すると死亡一時金が受け取れるというものです。

太陽生命 My介護ベストの仕組み・介護保障と死亡保障の内容(出典:太陽生命公式HP)

死亡給付金の金額は一時払保険料か解約返戻金(責任準備金)のどちらかです。つまり支払った保険料と同額か、少しだけ上乗せされた額となります。死亡一時金は基本年金額に年金支払保証期間の残った年数分の金額となります。この保険の支払保証期間は20年のため介護年金を5年間受け取れば、残りの15年分の介護年金を死亡一時金で受け取れます。もちろん介護年金を20年間受け取れば死亡一時金は0円となります。

解約返戻金による資産運用の面もあると既述しましたが、その解約返戻金は5~6年目に支払った保険料総額を上回ってきます。1~5年目がマイナスなのは契約の手数料等の諸経費が差し引かれており、そちらの方が増加分よりも大きいためです。

太陽生命 My介護ベストの契約からの経過年数と解約返戻金額と解約返戻率(出典:太陽生命公式HP)

この解約返戻金額表をみると、まずは高齢になってから契約すると解約返戻金の返戻率が100%を超えるのが遅くなる点に気づくでしょう。30歳で契約すると5年後には返戻率が100%を超えますが、70歳で契約すると8年後に返戻率が100%を超えます。契約が遅れるほど不利と考えていいでしょう。

また、返戻率が大して上昇しない点にも気づくでしょう。15年経過しても返戻率は僅か101.4%です。一時払い保険料を約594万円支払って、15年後が経過しても8万円の増加です。年齢により返戻率の上昇が遅れるため、60歳の退職金で契約したなら75歳時点で6万円の増加だけです。

メリット

この保険を他社と比較すると、まずは保険料が一時払いという点がメリットに挙げられます。保険料を月払いで60歳までに支払い終える場合、20~30代なら保険料は安いのですが、40代以上だと保険料負担が重くなります。その点、一時払いなら毎月の負担はありません。

数百万円が手に入るといえば退職金ですが、この保険は60歳からでも契約できます。それも解約返戻金が数年後には一時払保険料を上回るため、何か資金が必要になっても融通が利きます。また、夫・妻が死亡して保険金を受け取って運用先に困っている場合でも、損失限定で自分の介護状態に備えられる保険ともいえます。

また、他社の多くの介護保険が介護保険金を1回受け取ると保障は消滅しますが、この保険は介護年金を一生涯受け取れるため要介護状態になっても長生きするほど得となります。それも介護年金は最低保証期間があり受け取り損ねることがありません。保証期間も20年と他社よりも長いため大きなメリットといえます。

さらに介護状態にならなくても死亡給付金・死亡一時金があります。どちらも支払った保険料を下回りませんから、大きく得はしませんが大きく損もしません。他社と異なり介護年金を受け取った後も死亡一時金として最低保証期間分は受け取れるのもメリットです。

また、解約して解約返戻金を受け取るにしても数年後には解約返戻率が100%を超えるのもポイントです。他社の介護保険には解約返戻金があっても、低解約返戻金型のため保険料を支払い終える数十年後まで解約返戻率が70%に制限されます。この保険は解約時を考えても好都合といえます。

デメリット・注意点

この保険のデメリットは、まずは一時払いという点が挙げられます。一時払いで数百万円の保険料を支払うのは普通の20~40代だと厳しいでしょう。保障内容も介護年金のためリフォームでバリアフリー化等をするには金額的に不足感があり、初回年金割増特則を付加しても微妙です。

そもそも介護年金は長生きするほど得といっても、長生きする年齢には限度があります。厚労省の介護保険事業状況報告によると要介護・要支援状態になるのは平均75歳からです。その時点で要支援を飛び越して要介護2認定されても、介護年金を20年受け取るのは95歳時になります。日本人の平均寿命が80代半ばのため相当に厳しい数字と言わざるを得ません。

また、死亡給付金・死亡一時金があるとはいえ得するものではありません。他社の介護保険には介護保険金と同額の死亡保険金が受け取れることがあり、介護状態にならず死亡しても保険金が保険料総額を上回ることがあります。そういった介護保険と比較すると、死亡給付金等はメリットではなくデメリットになります。

ちなみに解約返戻金もメリットではありますが、資産運用面から考えると大したメリットでもありません。前述したように数百万円が15年が経過しても数万円の利益となると、他の資産運用の手法と比較して僅かな利益です。ほぼ元本が保証される金融商品の個人向け国債・社債などの方が利益幅は大きいです。

保険料と保障を他社と比較

この保険は40歳男性・基本年金額30万円・初回年金割増特則を付加すると、保険料は一時払いで599万円となります。仮に80歳で要介護2以上になって90歳で死亡したとすると、生存中に330万円、死亡後に遺族が300万円の死亡一時金を受け取れます。630万円の保険金に対して599万円を支払うため返戻率は105.1%となります。

同じ条件で50歳男性だと保険料は605万円、60歳男性だと610万円となります。受け取る保険金は同額で保険料は高くなるため、それぞれ返戻率は104%と103%に下がります。年齢を重ねて契約が遅れるほどに返戻率は下がる仕組みになっています。

それでは他社と比較して返戻率は高いのか低いのか、下図で15以上の介護保険を返戻率で比較しました。返戻率は80歳で保険金を受け取り始めて、90歳で死亡する想定で計算しています。さらに介護保険を比較する上で重要な保険金の支払条件、介護年金の受取期間等も比較しました。下図の比較図を見て下さい。

介護保険の保障内容・保険金支払条件・保険金回数・40~60歳の保険料の返戻率の比較表(明治安田生命・アフラック・太陽生命・ソニー生命・住友生命・東京海上日動あんしん生命・ジブラルタ生命・JA共済・全労済・コープ共済・コープ団体保険・日本生命・朝日生命・大同生命)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

My介護ベストの返戻率は100%以上のため悪くないのですが、他社の介護保険には返戻率が200~300%を超えるものもあります。そのため返戻率で考えると他社の方が良いといえるでしょう。もちろん80歳より手前の70歳で要介護状態になって95歳まで長生きすれば、この保険の返戻率は上図のシミュレーションより高まります。

ただ、ソニー生命にせよ明治安田生命にせよ太陽生命と同様に介護年金を一生涯受け取れる仕組みになっています。そのため長生きすれば同じく返戻率は高まるため、太陽生命が逆転するのは不可能です。

評判・苦情

太陽生命の決算資料によると2020年度(2020年4月~2021年3月)の終身生活介護年金保険の新契約件数は2169件です。前年度の4.4万件から急減しており、前年度比で4.8%(95.2%減)と非常に厳しい数字です。他社と比較しても新契約件数は大幅に減少しており、契約件数から考えると評判は良くはないでしょう。

ただ、生命保険協会のデータでは太陽生命全体に寄せられている苦情数は6023件(2020年度実績)で、総契約数の779万件で割った苦情率は0.07%です。1000契約のうち0.7件で苦情が発生している計算です。日本生命等の他の大手が0.2%台のため、太陽生命は苦情が少なめといえます。各保険会社で主力商品が異なりますが、苦情数から考えると評判は良さそうです。

その一方で大規模調査となると様相が異なります。調査・コンサルティング会社のJ.D.パワージャパンの「2021年 生命保険契約満足度調査」では20社中は19位と最下位近辺です。平均値も大きく下回り、太陽生命の下には不適切営業をしたかんぽ生命があるだけです。この調査は保険を新規購入・更新した約6000人を対象としており数十人程度の口コミよりも信頼が置けますが、顧客満足度は明らかに低いと言わざるを得ません。

2021年生命保険契約・顧客満足度ランキング(出典:JDパワー2021年生命保険契約満足度調査)

さらにオリコンの生命保険会社ランキング(9000人対象の調査)でも太陽生命は26社中で19位と下位に位置しています。加入手続き・商品内容・保険料・アフターフォローの全ての項目で上位の保険会社には遠く及びません。特に保険料については太陽生命より下位の幾つかの保険会社よりも低評価です。

以上のデータから考えると、介護保険そのものの評判はコロナの分を差し引いても良くはなく、太陽生命全体への顧客満足度・評価は低いといえます。苦情数が少ないため実際は悪くはない可能性もありますが、あまり期待はできなそうです。

総合評価・おすすめか?

結論としては、悪くはない保険ではあるものの万人向けではない保険といえます。特に75歳で要介護になっても95歳で保険料の元が取れるという点が引っかかります。20年の保証期間もありますが、保険金は全て生存中の介護費用に充てたい人にとっては、この保険は使い勝手の悪い保険となります。

保険料が月払いでも良ければ、ジブラルタ生命の介護保険が太陽生命に近く返戻率も僅かに高いです。また、介護保障だけでよければ返戻率が高いソニー生命・コープの介護保険もあります。保険金が要支援2から受け取れる朝日生命の介護保険もあり、これらも検討した方が良いかもしれません。