野村インド株投資/ 野村アセットマネジメント

野村インド株投資/野村アセットマネジメント
オススメ度:
3
運用会社:
野村アセットマネジメント
商品名:
野村インド株投資
地域/決算:
インド / 年1回
対象資産:
株式
基準価額:
26,320円(2017年7月現在)
手数料:
3.0%(申込手数料 ※野村證券) 2.00%(信託報酬)

野村インド株投資は純資産が急増中で今後の展開に注目か!?

この投信はインド企業の株式に投資し、その配当や売買益で運用している。為替ヘッジをしてないため、株価以外に為替動向に左右される。インド通貨のルピーに対して円安なら基準価額が上昇し、円高なら基準価額は下落する。スタートしたのは2005年で、HSBCやイーストスプリング(旧PCA)のインド株投信に次いで歴史が長い。

野村インド株投資の基準価額(基準価格)・純資産・分配金再投資基準価額の推移チャート及び分配原資の内訳

まず基準価額だが、恐ろしいほどの変動率で上下をしているのが分かる。リーマンショック時には35000円から1万円まで下落し3分の1になっている。さらに2015年の一時的な世界的な株安の局面では、約30%ほどの下落をしている。基準価額の主な変動要因はインド株式の株価ではなくルピー相場のため、ルピーの動向には常にチェックが必要となる。資産が3倍になる夢もあるが、3分の1になる悪夢もある可能性は忘れずにおきたい。

純資産は長らく低迷してきたが、モディ首相が就任した2016年頃から急増している。個人投資家の人気を一気に集まった可能性が高い。分配金は年1回で高額な分配金が出ているが、それは収益ではなく収益以外から出ている点に注意が必要だ。翌期繰越分配対象額や急増した純資産によって基準価額が急騰するのを抑制させるためのものと考えた方が妥当だろう。

野村インド株投資の業種比率・上位構成銘柄

次に、この投信が投資している銘柄だが、業種別では金融業(銀行・不動産金融)の比率が高く、次いで情報・建設土木が高い。他社も金融業がトップだが、建設土木が上位に来ている点でオリジナリティがある。

個別銘柄ではHDFC銀行がトップだ。同社は住宅金融公社だが、住宅ローン以外のローン・預金・クレジットカード・保険等も展開している。この投信の組入銘柄では、5年以上前から上位に名を連ねており長期での投資になっている。建設土木では「LARSEN&TOUBRO(ラーセン・トゥブロ)」が上位にある。同社は建設業からスタートしたが、現在はものづくりから発展して建設機器・造船・原発といった重工業まで幅広く手がけている。

インド経済のGDP等の経済指標

次に今後のインド経済の見通しだが、インドのGDPは5~6%の成長を続けており堅調だ。リーマンショック直後でも3%の成長をしているだけに、景気後退となってもそれなりの成長が見込まれる。ただ、インドはIT大国のようなイメージが強いが、実際はGDPに占める農林水産業の割合は約18%(日米は2~3%で、中国で10%、インドネシアでも15%)と高い点に注意が必要だ。そのため降水量が少なければ、作物が育たずに経済が悪化する非常に不安定な面がある。

もう1つの焦点は通貨ルピーの動向だろう。近々は円安となっているが、円安が継続するかは疑問だ。というのも長期でみれば1ルピーあたり3円だった2000年初めから、今の1円台後半まで円高傾向にあるのは間違いないためだ。さらに今後予想される世界同時株安の局面では、インド経済と関係なく新興国通貨が全て売られ円高・ルピー安になることが予想される。リーマンショック時には40%近くの円高になったため、逃げ場を見極める眼が非常に重要となる。

次に純資産ランキング上位のインド株式型の投資信託と、基準価額・直近1年の騰落率・手数料・信託報酬・信託財産留保額・分配金額(手数料等を差し引いた金額)で比較した。分配金が運用による収益から捻出しているかを確認するため、日経新聞でも度々記載される分配金の健全度・健全率(分配金に占める利子配当収入等の割合)も過去6ヶ月の数字で比較した。さらに、この投信を100万円分だけ購入して3年後の解約時には幾らになるか?を、過去1年間の基準価額の騰落が今後3年繰り返すと仮定してシミュレーションした。最後に過去3年の騰落率と分配金を加味し、予想利回りのレンジと最終予想利回りを算出した。

商品名 HSBC
インドオープン
イーストスプリング
インド株式
アムンディ
りそなインド
野村
インド株投資
イーストスプリング
インフラ株
基準価額 20,809円 16,387円 10,531円 26,320円 10,161円
騰落率 +30.9% +28.2% +26.9% +29.7% +25.8%
分配金再投資
騰落率
+32.7% +28.2% +26.9% +32.1% +25.7%
手数料 3.0% 0% 3.0% 3.0% 1.5%
信託報酬 2.0% 1.22% 1.13% 2.0% 1.22%
信託財産
留保額
0% 0.5% 0% 0.5% 0.5%
1年間の
分配金額
14,417円 0円 0円 18,997円 0円
分配金の
健全度
0% 0% 0% 0% 0%
3年間の
分配金額
-46,749円 -41,600円 -63,900円 -38,009円 -56,600円
3年後の
100万円
分配金除く
2,242,947円 2,106,998円 2,047,415円 2,181,825円 1,990,866円
予想利回り 9.9%
(-45%~35%)
7.3%
(-40%~30%)
5.6%
(-35%~28%)
8.9%
(-40%~35%)
4.6%
(-40%~28%)
インド株式型投資信託の比較表(HSBCインドオープン・イーストスプリング インド株式・アムンディ りそなインド・野村インド株投資・イーストスプリング インフラ株)

上図で「野村インド株投資」を比較したが、基準価額は1年前から29%の上昇をしている。毎月分配型ではないため分配金再投資基準価額は大した意味はないが、こちらもプラス32%と驚異的に伸びている。他社と比較しても優秀な部類に入る。また、基準価額について振り返ると、この投信がスタートした際の10,000円から、2013年現在の14,029円まで10,000円を切ったことがない。この投信がスタートした際に購入した人は、いつ売却しても利益が出ていることになる。

一方で手数料・信託報酬は高額で、分配金も出てはいるが諸経費を考慮するとマイナスなうえに、運用報告書によると分配金の原資は収益外から出ている(=資産を削って分配金を出している)。とはいえ基準価額の上昇が主な投信のため大した問題にはならない。100万円投資した場合のシミュレーションでは、他社よりも諸経費の高さをカバーして高い数字になっている。もちろん上図のシナリオはバラ色過ぎるもので、資産が半分になるシナリオもある。予想利回りは、近々の好調が続けばプラス30%近くなり、暴落があれば40%近いマイナスになる可能性がある。

結論としては、インド株に投資する投信としては優秀な部類に入るだろう。手数料の高さに目が行きがちだが、それをカバーする数字を出しているためだ。ただ、重ねてになるが、通貨の基準価額に対する影響は大きい点に注意が必要だ。ルピー安・円高が進めば株高のプラス分は容易に吹き飛ぶ。株安・新興国売りの局面が訪れたなら、いさぎよく撤退する姿勢が重要だろう。