投信・預金/資産運用 解説・用語集

S&Pとムーディーズの格付けはアテにならない!?

格付けとは、債券を発行する国・政府・企業等の発行体の信用度について、格付け会社がランキング形式で出す指標と見通しを意味する。債券(公社債)は発行体の破綻・倒産により債券が額面通り支払われなかったり、利息が支払われないリスクがある。このようなデフォルト(債務不履行)の信用リスクの度合いを表しているともいえる。

ムーディーズとS&Pの格付けの記号(信用の高低)

格付会社はムーディーズとS&Pが世界的にツートップであり、2社の格付けが債券の動向を大きく左右する。ムーディーズの場合は最高はAaaで最低がC、投資適格はBaa以上だ。S&Pの場合には最高はAAAで最低がD、投資適格はBBB以上だ。さらに見通しが格上げ方向ならポジティブ、格下げならネガティブ、現状維持なら中立となる。

また、債券の格付けは、同じ国の債券であれば、基本的に国債・政府保証債・社債の順に高い格付けが付く。社債の格付けが国債を上回ることはない。これは、発行する国が破綻すれば、その国にある企業は破綻するのは必定なためだ。正確には、その国が発行する通貨の価値がゼロになるため、その通貨で決算する企業の債券はゼロに近くなるという方が近い。ただし、発行する国を異にする場合(米国の大企業が発行する社債と新興国の債券)には、この限りではない。

さらに債券自体は2社の格付けによって、格下げされれば債券価格は下落(金利上昇)し、逆に格上げされれば債券価格は上昇(金利下落)する。債券価格が下落しても金利が上昇すれば利息からの収益は大きくなるが、債券型投信の場合には、資産を債券にしているため債券価格の下落は基準価額の下落に繋がる点に注意が必要だ。

また、ネガティブ・ポジティブなどの今後の格付けの方向性が示されるため、債券が格上げ方向か格下げ方向かは、概ね見当をつけられる。ファンドも相応の対応はするのだが、数年前の米国債の格下げ騒動などに見られるように、突然に格下げが行われる場合もある。想定以上の格下げは、ファンドとしては保証金(保険)のような余分な金銭を支払う必要性もあり、債券価格の下落と共に格下げはパフォーマンス悪化を招く要因になる。

注意したいのは、所詮は人が決めているランクであり、未来を予想し切れていない点だ。特にリーマンショック直前までは、原因となったモーゲージ債に高格付けをしていたことも記憶に新しい。そういう意味では競馬新聞なみの的中率と考えてもいいだろう。

個人投資家としては、格付けの高い債券にのみ投資している投信だからと安心し切らずに、元本割れの可能性はあることは忘れずにおきたい。また、外国の債券に投資している投信の場合には為替ヘッジありを除いて、為替変動リスクがあり、円高で大きな損失が出る可能性がある点も抑えておきたいところだ。