野村高配当インフラ関連株プレミアム(通貨セレクトコース)毎月分配型/ 野村アセットマネジメント

野村アセットマネジメント/野村高配当インフラ関連株プレミアム(通貨セレクトコース)毎月分配型
オススメ度:
4
運用会社:
野村アセットマネジメント
商品名:
野村高配当インフラ関連株プレミアム(通貨セレクトコース)毎月分配型
地域/決算:
日本・海外/ 毎月分配型(年12回)
対象資産:
株式
基準価額:
12,090円(2013年3月7日付け)
手数料:
4.0%(申込手数料 ※野村證券) 0.88%(信託報酬)

野村高配当インフラ関連株(通貨セレクト)は数字は優秀だが危うさも十分!

この投信は、日本を含む世界のインフラ企業(電気ガス・交通関連など)の株式に投資し、その配当・売買益で収益を出す他、米ドル・ユーロ・英ポンドなどで為替ヘッジを行い為替差益も狙っている。さらに、コールオプション(権利行使価格による売買)で収益の上乗せを図っている。オプション取引についての説明は厄介だが、要は現在のA株の株価が100円とすると、それを105円で買う権利(コール)を購入しておき、特定の期間中にA株が110円になれば、5円分はお得にA株が購入できる。その10円を受け取れると考えればいい(正確には、もう少し複雑なため説明は割愛)また、この投信が運用スタートしたのは2012年10月と歴史は浅いのだが、純資産の規模は一部の業種の株式に投資する投信の中ではトップだ。分配金は設定来、100円を毎月出している。

野村高配当インフラ関連株プレミアム(通貨セレクトコース)毎月分配型の基準価額(基準価格)及び純資産の推移チャート

基準価額は設定された2012年10月から右肩上がりで上昇している。この投信は円安が進行すれば利益が伸びるため、ほぼ同時期から進行した安倍ノミクスによる円安の恩恵を大きく受けたといえる。2012年10月から円が他の通貨に対して概ね20%近い円安になっており、この投信の上昇幅と似ているのが分かる。為替ヘッジはドルだけではなく比率は後述するが、今後も円安が進行しない限りは今までのような上昇は見込めないことは確実だ。

純資産も基準価額と同様に右肩上がりで上昇している。こちらも円安効果はあるだろうが、設定から間もない投信のため新規買い入れもあったと見るべきだ。毎月分配型の投信としては心強い要素だ。

野村高配当インフラ関連株プレミアム(通貨セレクトコース)毎月分配型の国別通貨比率・上位構成銘柄

この投信が組み入れている株式は、通貨別では米ドル・ユーロ・ポンド建ての順に高い比率となっている。そこからも分かるように、投資している企業は米国が約70%、欧州が約25%と2つの地域にある企業が大半を占めている。業種別では、インフラ関連企業でも石油ガス・総合公益・電力水道の順に比率が高い。ただし、石油ガス企業だけで37%を占め、資源の需給と価格に左右されそうだ。また、前述した通貨は為替ヘッジ前のもので、実際にヘッジしているのはレアル・リラ・ルーブル・ルピー等の新興国の高金利通貨だ。これらに対して円安になれば収益に、円高になれば損失となる。

構成比率の高い個別銘柄では「NATIONAL GRID PLC」がトップとなっている。地域は欧州と記載されているが、ロンドンに本社を置き、イギリスとNY等のアメリカ北東部で電気ガスを提供している企業だ。公益企業だけあって株価は過去5年間で700前後と上昇していない。やはり配当狙いといっていいだろう。

シェール革命による石油・ガスの生産量と価格の推移と企業株価

この投信で投資比率が高い米国のインフラ企業にとって、地殻変動ともいえるのが「シェール革命」だ。改めて説明すると、技術革新により今まで採掘できなかったシェール層にある石油・ガスが採取できるようになり、さらにコストダウンに成功し米国での石油・ガスの生産量が激増したのが同革命だ。左グラフの通り、2011年頃からシェールオイル・ガスの生産量は増加し、今後も増加する見込みだ。それに伴い、価格も下落傾向にある。特にオイルは米国のWTIの方が、中東のOPECが定める石油価格よりも安価だ。この価格差の分だけ米国は安価にガスを調達できコストダウンに繋がっている。

さて、そういった状況下で、とりあえず米国のインフラ企業、石油・ガス関連企業の株価は上昇している。特に輸送パイプラインも手がける企業は2倍まで上昇している。日本と同様に電力会社もコストダウンで利益増になる。しかし、石油企業にとってはシェール革命で石油価格が下落するのは売上減少でもあり悩ましい点でもある。あまりにも価格が下落するようなら業績への悪影響があり、この投信にもマイナスに働く可能性がある点は覚えておきたい。

次に、他社の業種を限定した海外株式型の投資信託(純資産ランキングで上位)と基準価額・手数料・利益(利益=分配金-手数料-信託報酬-信託財産留保額)分配利回り等を比較した。また、分配金のうち実際にファンドの収益が何%あるかも投信の健全性として比較した。さらに基準価額の増減も加味して3年後に100万円が赤字か黒字か?を計算した。その場合、過去1年間の基準価額の増減が今後3年間も繰り返し、分配金も現状維持と仮定した。計算上は「前年比で基準価額がマイナス5%なら、1~3年後も5%ずつ減額すると仮定し、3年分の分配金を足すと元金100万円はプラスか?」※増減率は基準価額が1年前から何%下落したか?を表す。一般的な騰落率とは異なる数値。信託財産留保額は投信を解約時に発生する0.5%の費用

商品名 野村
高配当インフラ株
通貨セレクト
日興
資源ファンド
レアル
日興
資源ファンド
ランド
DIAM
米国住宅株
1209
ピクテ
バイオ医薬品
ヘッジなし
基準価額 12,090円 5,814円 5,269円 11,165円 12,114円
増減率 +20.9% -24.5% -31.8% +11.7% +18.6%
手数料 4.0% 3.0% 3.0% 4.0% 3.0%
信託報酬 0.88% 1.00% 1.00% 1.50% 1.90%
分配利回り 9.0% 23.8% 26.3% -1.5% 11.0%
3年分の
分配利益額
226,367円 683,034円 759,890円 -90,000円 299,330円
分配金と収益
比率
\100=?
(?%)
\120=\120
(100%)
\120=\120
(100%)
- \130>\35
(26%)
100万で3年運用
※基準価額
増減考慮
1,993,539円 1,113,682円 1,077,697円 1,301,798円 1,966,654円
最終予想
利回り
25.8% 3.6% 2.5% 9.1% 25.2%
海外株式型の特定セクターファンドの比較表(野村高配当インフラ関連株(通貨セレクト)・日興 資源ファンドレアル・日興 資源ファンド ランド・DIAM米国住宅株1209・ピクテ バイオ医薬品ヘッジなし)

上図で「野村高配当インフラ関連株(通貨セレクト)」を比較したが、前述した通り基準価額は上昇している。他の投信と異なり、投信がスタートしてから1年を経ていないものの、その上昇率はトップだ。それに加えて分配金も出しているのも良い。とはいえ他投信と比較すれば分配利回りは低く、スタートから間もないため運用報告書が出ておらず、分配金が本当に収益によるものか、ただ原資を削っているかは不明ではある。これだけ基準価額が上昇している中で、原資を削っている可能性は低いだろうが。。。

諸経費を見ると、信託報酬は他の投信よりも安価だが、手数料は4%と高額な点には気をつけたい。4%という数字だけ見ると少額に見えるが、この投信を仮に300万円分を購入すると手数料は12万円も徴収されることになる。以上の要素を勘案して計算した最終予想利回りは25%と非常に高い数値となった。ただし、冒頭でも述べた通り、現在までの高いパフォーマンスは円安が大きく寄与しているもので、今後も同等のパフォーマンスが維持できるかは大いに疑問が残る。10%程度が妥当なラインと見るべきだろう。

結論としては、数字が優秀な点からは一応は薦められなくはない。ただし、スタートから間もない点と為替の影響が大きい点から、かなりの危うさも含んでいると見るべきだ。特にヘッジしている通貨がブラジルレアル・ロシアルーブルなど動きの激しい新興国の通貨で安定さから言えば程遠い通貨だ。インフラ関連の市場が上向きである点を勘案して、今後も一定の上昇は見込めるが、購入するにしても小額に留めておいた方が賢明だ。自分の資産のアセットアロケーションで比率を低めにしておくことを薦めたい。