損害保険 解説・用語集
飛行機・海外旅行で荷物が紛失(ロストバゲージ)する確率と見つかる確率は何%?
海外旅行で飛行機・空港で預けたスーツケース・トランクケース等の荷物が紛失することをロストバゲージ、遅延することをディレイドバゲージという。海外旅行保険では航空機預託手荷物遅延費用の補償、携行品損害などで補償が受けられるが、実際のところロストバゲージする可能性は何%なのだろうか?そして、見つかる確率は何%なのか?
結論から述べると、ロストバゲージする確率は極めて低い。SITA(Société Internationale de Télécommunications Aéronautiques、国際航空情報通信機構)の調査データ「バゲージレポート2017」によると、世界全体での飛行機による旅客数は約37億7000万人で、取り扱いミスしたバッグ(mishandled bags)は2160万個のため、確率としては0.5%となる。1000人あたり5.73個の計算だ。一般的に自動販売機の当たりを一発で引く確率が1%のため、それよりも確率は低い。
この荷物の取り扱いミスの確率はIT技術の進歩(RFIDタグの導入等)もあり、年々大きく下落している。一昔前の2007年までは1000人あたり20個で確率は2%と今よりも一段と高かった。航空会社別の件数を見ても、2007年時でイギリスのブリティッシュ・エアウェイズでは1,000個あたり23個で確率は2.3%、ドイツのルフトハンザも1,000個あたり18.1個で1.8%と高かった。

それが2013年時には現在の数値に近くなってきた。アメリカで最もロストの可能性が高いエンヴォイ・エア(旧アメリカンイーグル航空)でも1,000個あたり5.8個で確率は0.5%になった。日本人にお馴染みのユナイテッド航空は0.3%、アメリカン航空が0.29%、ハワイアン航空が0.28%、デルタ航空で0.21%となった。
これだけでも相当に低い確率だが、さらに一歩進んで確率を考えてみよう。なぜなら上述の数字は取り扱いミスをしたバッグの数であって、それにはロストバゲージとディレイドバゲージの両方を含んでいるためだ。人によってはスーツケースが破損しようが多少遅れようが、最終的に戻ってくればOKという人もいることだろう。下図はSITAの取り扱いミスしたバッグのうち紛失・破損・遅延したバッグの割合のデータだ。

このデータによれば遅延が77%と大半で、破損と中身の盗難が16%、紛失と盗難は7%となっている。紛失と盗難の7%を加味すると、スーツケース自体が手元に戻ってこない確率は0.035%になる。完全紛失は1万人のうち3人という宝くじに近い確率まで下がる。また、これは他方で、飛行機から降りて荷物受け取り場でバッグが出てこなかったり見つからなかった場合でも、その77%が遅延しても手元に戻ることを意味する。そのため一旦はスーツケースをロストバゲージしても見つかる確率は77%ともいえる。そして全体でいえば99.965%の確率で一旦失くした荷物と遅れてでも出会えることになる。
ここまでで確率は非常に低いのは間違いないことが分かっただろう。しかし、別の視点で考えるとロストバゲージに注意すべきポイントが見えてくる。それは地域間での確率の差だ。下図のSITAの欧州・北米・アジアの地域別のロストバゲージのパーセンテージとトレンドデータを見て欲しい。

いずれの地域も下落トレンドだが、ヨーロッパは1000人あたり8個の手荷物ミスで他より高い。確率にして0.8%で全体平均の0.5%よりも高い。そのためヨーロッパ旅行に行く人は少し注意度が上がる。これはヨーロッパにある国の数が多く、有名な観光地も点在しているのが大きいのだろう。また、旅行客によっては予算の関係で無駄に国を経由することも関係しているのかもしれない。例えば、日本からイタリア・フランスに旅行に行くにしても、ツアーによってはイギリスのヒースロー空港を経由した方が安い場合(ちなみにイギリスには宿泊しない)がある。ヨーロッパ周遊ではなく、こういった場合でも僅かに注意度は高まる。
以上のように、現在はロストバゲージ・ディレイドバゲージになる可能性は極めて低い。ただし、複数の航空会社を乗り継ぎ・経由地が増えれば可能性は少しずつ高まる。特にヨーロッパには一応は注意が必要だ。ただ、基本的には高価な物(+失くしたくない物)は海外旅行には持っていかなければいい。どうしても持って行く必要があるなら手荷物にすればいい。手荷物に入らないか、それでも不安なら海外旅行保険の携行品損害や航空機預託手荷物遅延費用を検討すべきだろう。その場合も、まずクレジットカードや火災保険に無料で付帯していないか確認してから加入・契約するのが賢明だ。