損害保険 解説・用語集

海外旅行保険は必要か?

海外旅行(傷害)保険は必要か。解答は幾つかあろうが、シンプルな答えは「基本的には不要で、国・年齢によっては必要」が正解だろう。基本的に不要という理由は簡単で、海外旅行での事故発生率は3.5%(ジェイアイ傷害調べ)で、約96%の確率で事故には遭遇しないためだ。事故に遭遇しても、"十分な現金"があれば事足りることもある。以下、現金・旅行先・同伴者(年齢)を軸に必要か否かを述べる。

まず前述の「十分な現金」には2つの意味が存在する。1つは、旅行中に病気になっても支払える現金があるという意味だ。海外は高額な治療費になるとはいえ、現金に加えてキャッシング(カード次第だが30万円も可能)があれば、高額医療はさておき、大抵は治療費としては事足りる。さらに自分の携行品でも他人の物でも破損しても、現金があれば買い直せる。極端なことを言えば、航空機が遅延しても、他のエアラインの空席のビジネスクラスででも帰国すればいい。

もう1つが、自分が死亡しても家族に迷惑をかけない十分な現金があるという意味だ。自分の収入で家族が生活している場合、自分が死亡すれば家族の生活が窮する可能性がある。海外旅行保険で死亡時に支払われる1,000万円では雀の涙だろうが、当面の生活には困らないはずだ。また、働いていない学生でも、自分が海外で死亡して、その遺体を空輸するには数百万を要するケースがある。それを負担するのは遺族となるため、その分の現金があるかが問題になる。

海外旅行保険の地域別の事故状況

その一方、十分な現金が必要なのは確かだが、その程度が旅行先の国によって左右されるのが問題だ。上図は地域別の海外旅行の事故状況だが、地域によってバラつきがある。意外?にもアジア旅行で治療費を必要とした割合が最も高い。衛生状況が良くない場所が多く、腹痛・嘔吐になる人が多いのが原因だ。

アジアに次いでオセアニアも治療の割合が高いが、こちらは衛生面に加えて熱中症の可能性が高い。アジア・オセアニアへの旅行なら、自分の胃腸強度とホテルのランク次第では海外旅行保険は一考する必要がある。逆に、ヨーロッパ・アフリカは携行品被害が多く、高価な物を持ち込まないか、捨てる気でいれば保険は不要とも考えられる。ただ、アフリカは治療以上に携行品損害(盗難)が圧倒的に多いため比率が逆転している可能性がある。。。

高額事故になった旅行者の年齢

最後に、現金・国に問題が無くとも、自分及び同伴者の年齢が問題になるため注意したい。上図の「300万円以上の高額治療費が必要になった人の年齢割合」を見て欲しい。高額医療となった人の中では、65歳以上の人が約50%を占めている。同伴者及び自分の年齢が65歳以上なら海外旅行保険の必要性は極めて高いといえる。症例も転倒・腹痛に加え、移動中やレジャー(スポーツ)の際の脳梗塞・心筋梗塞での緊急搬送もある。日本への搬送で数千万円になったケースもあるため(この場合は距離が遠いヨーロッパは高額になる)、数千円で加入できる海外旅行保険は、医療保険などと比べれば格安の保険ともいえる。

以上のように、基本は不要の海外旅行保険だが、行き先・同伴者(年齢)によっては、その必要性は非常に高い。また、行き先・年齢に問題がなくとも保険をアテにしないなら十分な現金は確保する必要がある点は覚えておきたい。現在では、海外旅行保険が無料で付帯したクレジットカードも数多く存在する。まずは自分のカードの補償内容を確認し、傷害・死亡以外に携行品も含まれているかを確認するといい。それ次第では旅行保険が付帯した新しいカードに切り替えるのもいいだろう。