損害保険 解説・用語集

航空機遅延費用(補償)とは?必要か不要かまで解説!

航空機遅延費用(航空機遅延費用補償)とは、国内・海外旅行保険の補償の1つだ。国内・海外旅行中に飛行機が遅れたせいで自己負担した費用が補償される。典型的な例は、台風のせいで飛行機が欠航して、帰国できずに空港近くのホテルで宿泊することになり、食費・通信費(国際電話など)・宿泊費を支払った場合が考えられる。

そういった費用が帰国後に保険金として支払われるのが、この補償の最大のメリットとなる。もちろん費用が発生したことを証明するために、領収書とまではいかなくともレシートは必須となる。保険会社にもよるが、レシートがなくてもクレジットカードの引き落としの明細などで対応してくれることもある。

ただ、遅延しても大抵は航空会社が同日の振り替えで他の航空便の席を抑えてくれるため、この補償の出番は多くはない。特にANA/JALは世界的に遅延率が低い航空会社でもある。デジタルフライト情報プロバイダの世界大手であるOAG Aviation Worldwide Limitedの2017年の定時運行率ランキングで世界トップ20の航空会社のうち、JALとANAがワンツーを占める優秀さだ。

世界トップ20の航空会社の定時運行率ランキング(出典:OAG Punctuality League 2018)

国交省の平成30年の航空輸送サービスの情報データでも、2社の遅延率は全体の5%程度で、欠航率だと1%も下回っている。さらに仮に翌日まで飛行機が飛ばず宿泊となったとしても、ANA/JALなどの大手は自社系列のホテルなどを無料で提供し、食費チケットも数千円だが配給してくれることが多い。

その反面、LCCの欠航率と遅延率の高さが目に付く。特にピーチの遅延率の高さは20%に及び、ジェットスターも近い遅延率の高さだ。LCCに乗るなら航空機遅延費用は心強い補償となる。

日本国内の航空会社の遅延率及び欠航率(出典:国土交通省「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報公開(平成30年4~6月)」)

とはいえ補償が適用されるのは大幅な遅延である点に注意が必要だ。航空機遅延費用でも適用される遅延は6時間以上の出発遅延(+欠航・運休)が要件となる。さすがに国内LCCでは6時間以上の遅延は多くはない。海外のLCCのアバウトな運行なら、そういったことが間々あるため、海外のLCCを利用するなら覚えておいて損は無い補償となるだろう。

LCCを乗る人には心強い補償ではあるが、保険金額が少ないというデメリット(落とし穴)に注意したい。大抵の保険会社が保険金額を2~3万円にしているため、飛行機が遅延したのをいいことに、豪華なホテルで延泊するといったことはできない(正確には豪華なホテルがまるまるタダにはならない)。あくまで社会通念上(一般常識の範囲内)に照らして保険金が支払われる。その一方で保険金が少ない分だけ、特約だったとしても保険料は安く、概ね数百円で済む。

以上のように、基本的には可能性を考えれば不要だ。ただ、LCC(格安航空会社)は遅延・欠航は頻発しているため、LCCを利用して海外旅行に行く場合には航空機遅延費用は一定の必要性があるといえる。格安航空を利用するほど予算を絞るなら旅行保険も割愛しそうだが、本契約に数百円で付帯できるため負担は少ない。LCCと旅行保険を合算しても通常の航空会社の運賃よりも安いなら検討の余地はあるだろう。