損害保険 解説・用語集

国内旅行保険は必要か?不要か?

国内旅行保険(国内旅行傷害保険)は、国内旅行のために自宅を出てから帰宅するまでの間に被ったケガについて、保険金が支払われる保険だ。目的地(観光地)に到着するまでの移動中に事故に遭遇してケガをした場合も保険金は支払われる。

現在の日本国内の治安・環境等を考慮すれば、感覚的には必要性は限りなくゼロに近いだろう。それを裏付けるデータもある。特別法人・損害保険料率算出機構の「傷害保険の概況 2017年版」によると、国内旅行保険の加入者の約750万人のうち、約7600人が死亡・後遺障害・入院・通院した人となっている。保険金が支払われる確率は0.1%と非常に低い。

国内旅行保険の保険金の支払い状況と統計(出典:特別法人・損害保険料率算出機構「傷害保険の概況 2017年版」)

これだけでも確率は低いが、国内旅行保険に加入せずに国内旅行をする人も相当にいる点を加味しなければならない。観光庁の旅行・観光消費動向調査によると日本人の年間の旅行者数は6億人、ある程度の遠出をしたであろう宿泊旅行者数でも3億人いる。この数字を母数にすれば確率は0.0025%と途方も無い確率になる。もちろん国内旅行保険に加入せずに旅先でケガをした人もいるだろうが、確率からすれば国内旅行保険は不要だ。

ただし、アクティビティに参加する人、アクティビティに参加せずとも高齢者なら、国内旅行保険を検討する余地がある。アクティビティは特にスキー(スノボ)・山登り・川下り・スキューバといった、天候・自然の脅威に曝されるものだと必要性が高まる。スキー(スノボ)を例にとると、2017年のスキー場傷害報告書(全国スキー安全対策協議会)によると年間3000人程度がケガをしている。受傷率は0.01%と低いが、20~50代まで幅広い層が怪我をしている。

自分は中級者・上級者だからケガをしないと侮るなかれ、けが人のうち中級者が40%、上級者が20%を占める。技能の程度とケガとは無関係になっている。これは中級者・上級者ほど難しいコースに行くためと考えられる。アクティビティに参加する人は保険を一考する余地がある。

スキーによるケガ人の年齢構成(年代別)と技能(初級者・中級者・上級者)の関連性(出典:全国スキー安全対策協議会「2017年のスキー場傷害報告書」)

また、高齢になった祖父母と旅行する、祖父母が遠方の孫に会いに来る際なども国内旅行保険を検討してもいいだろう。高齢になってくると何でも無い段差・階段、バスの乗降中に転倒する可能性があるためだ。転倒というと軽く聞こえるが、高齢になると転倒で骨折、頭部強打で脳にダメージという可能性が高まる。

現に損害保険料率算出機構によると、ケガによる死亡・後遺障害・入院は60歳から一段と上昇する。年齢に応じて同じケガでも治療までの日数が長期化するうえ、下手をすればケガを機に寝たきりという可能性もある。医療保険などを契約しているなら不要だが、そうでないなら検討の余地がある。

年齢・年代別のケガ(傷害)のリスクと年齢(出典:特別法人・損害保険料率算出機構「傷害保険の概況 2017年版」)

これらの人は加入を検討すべきだが、加入に際しては幾つかの注意を要する。特に海外旅行保険との違いを把握しておく必要がある。海外旅行保険と同じような感覚に陥っている人がいるが、広い補償内容を持つ海外旅行保険とは異なり、国内旅行保険の補償内容は決して広くはない。

まず、海外旅行保険がケガ・病気を補償するのに対して、国内旅行保険ではケガのみを補償する。旅行中に発症した病気は補償外とするのは、それが本当に旅行を起因とした病気であるか否かが判別しにくいためだ。例外的に補償されているのが、旅行中のウィルス性・細菌性の食中毒(O-157など)の治療費だ。これはツアー旅行・団体旅行の際に、不特定多数の人と飲食を共にするために発症したという原因も明確であり、旅行中かつ旅行が原因で発症したことが明らかなためだ。また、いざ入院した場合も海外旅行保険が実費補償するのに対して、国内旅行の場合は入院日数に応じて一定額の保険金が支払われるに留まる。

さらに、海外旅行保険では自動付帯となる「天災による事故(天災危険担保特約)」「賠償責任」「携行品損害」が特約となるケースが多く、個々人で付加するか選択する必要がある。個々の特約が必要になるケースを想定すると、天災は旅行中の積雪・地震などにより乗車中のバスが事故を起こした場合などが考えられる。もちろん旅行会社からも何らかの賠償が得られるだろうから、それを補う形になるだろう。賠償責任は旅館の備品(壷など)や土産物屋の商品を破損してしまった場合が考えられる。これも旅行会社を介して問題にならないか、その場で示談か買取になる可能性が高い。「携行品損害」だが、自分で物を落とすか飛行機で破損する可能性があるが、後者は航空会社からの賠償がある可能性が高い。

以上のように、基本的に国内旅行保険の必要性は乏しいが、自然に左右されるレジャーに参加したり、高齢者を伴った旅行の場合には加入する必要性は否定できない。旅行会社で加入するのも良いが、現在では、国内旅行保険が無料で付帯したクレジットカードも数多く存在する。まずは自分のカードを確認し、旅行保険が付帯していないなら、加入を検討すると良いだろう。