ワールド・リート・セレクション(米国) 愛称:十二絵巻/ 岡三アセットマネジメント

ワールド・リート・セレクション(米国)愛称:十二絵巻/岡三アセットマネジメント
オススメ度:
3
運用会社:
岡三アセットマネジメント
商品名:
ワールド・リート・セレクション(米国)愛称:十二絵巻
地域/決算:
北米 / 年12回(毎月分配)
対象資産:
不動産投信
基準価額:
2,468円(2017年7月現在)
手数料:
0%(申込手数料 ※二浪証券) 1.5%(信託報酬)

ワールドリートセレクション(米国)は目立たないが実は優秀な投信?

この投信は、アメリカのオフィス・商業施設・住宅等の不動産から賃料収入や売却益で収益を上げている。ワールドリートという名称だが、投資対象地域は北米となっているため米国リートの1つで、運用はリーフ・アメリカ・エルエルシーというドイツ系のアメリカのリート専門の運用会社が行っている。

ワールド・リート・セレクション(米国)の基準価額(基準価格)及び純資産の推移チャート

まず基準価額だが、2009年頃から3,000円前後で推移しており、他社と同様に2015年から下落が止まらない。とはいえ下落幅は他社よりも小さめで現在も2500円近辺で踏みとどまっている。ただ、分配金再投資基準価額も高値圏で伸び悩んでいるのが気がかりだ。

近々のパフォーマンスを見ると、その傾向が顕著で基準価額は下げているが分配金再投資基準価額は上がっていない。その要因はリート要因ではなく為替要因が大きいようだが、分配金も大きな負担となっているのが分かる。

その分配金だが、中身を見ると当期の収益から捻出していることもあれば、翌期繰越分配対象額を削っていることも割合も大きい。これは他社にもあることで珍しいことではないが、いかんせん残りの金額が僅かになっているのが気がかりだ。他社の米国リートではフィデリティで同じ1万口で8000円、新光のゼウスでも3000円、かなり減ったGS米国リートでも2000円は残っている。この投信は残り1000円だが、このままのペースだと残り2~4年で尽きてしまい分配金が出なくなる。減配か分配金が出なくなるか償還か果たしてどうなるのか。。。

ワールド・リート・セレクション(米国) 愛称:十二絵巻の上位構成銘柄及びセクター別構成

この投信の組み入れ銘柄だが、セクター別では住宅の比率が最も高く、大きく離れて小売・ヘルスケア・オフィスの比率が高い。住宅の比率が高いのはダイワUSリートと同様だが、それ以外の構成は大きく異なる。特にデータセンターは他社よりも低めになっている。

ただ、個別に見ていくと他社の同型の投信でも見かける企業が並んでいる。トップはヘルスケア系のウェルタワーで、同社は病院の他に老人ホームやヘルスケア施設を保有している。次ぐアバロンベイはNY・ワシントン・カリフォルニア等の都市圏での高級賃貸を主にしている。3位のパブリックストレージは、セルフ・ストレージと呼ばれる倉庫を個人・法人向けに提供している。個人であればロッカーやシーズンものの収納スペースに使うことができる。

アメリカの住宅ローンの貸し出し基準と借入需要と住宅価格の推移リート指数との比較及び米国リートのパフォーマンス指標

米国リート市場の見通しだが、各証券会社のレポートは総じて強気なものが多い。ただ、小売・商業はアマゾンなどのネット通販に押されて苦戦するというのは共通の認識になっているようだ。

この投信で組み入れ比率が高い住宅関連は、ピークをつけたか既に下降に入った可能性がある。貸出基準はサブプライム層を除いて緩和しているにも関わらず、借入需要が伸びていない。住宅価格を見ても既にサブプライムバブル時を超える価格まで跳ね上がっている。完全にバブルになっていると言える状況だ。

さらに今後はアメリカの中央銀行が利上げの影響が、ローン関連には出てくるだろう。固定金利で組んでいる人には影響はないが、これからローンを組む人は固定金利でも過去よりは高い金利で組まざるを得ない。どの程度の影響になるか注目だ。

次に、純資産ランキング上位の米国リート型の投資信託と、基準価額・直近1年の騰落率・手数料・信託報酬・信託財産留保額・分配金額(手数料等を差し引いた金額)で比較した。分配金が運用による収益から捻出しているかを確認するため、日経新聞でも度々記載される分配金の健全度・健全率(分配金に占める利子配当収入等の割合)も過去6ヶ月の数字で比較した。さらに、この投信を100万円分だけ購入して3年後の解約時には幾らになるか?を、過去1年間の基準価額の騰落が今後3年繰り返すと仮定してシミュレーションした。最後に過去3年の騰落率と分配金を加味し、予想利回りのレンジと最終予想利回りを算出した。

製品名 フィデリティ
USリート
新光
US-REITオープン
愛称:ゼウス
ダイワ
米国リート・ファンド
ダイワ
US-REIT B
岡三
ワールドリート
基準価額 4,254円 3,108円 4,182円 3,922円 2,468円
騰落率 -9.02% -11.1% -13.5% -10.5% -8.6%
分配金再投資
騰落率
11.4% 10.1% 11.2% 11.2% 9.1%
手数料 0% 2.0% 3.0% 1.5% 0%
信託報酬 1.4% 1.5% 1.5% 1.5% 1.5%
信託財産
留保額
0.3% 0.1% 0.3% 0% 0.3%
1年間の
分配金額
197,461円 193,050円 286,944円 244,773円 194,489円
分配金の
健全度
26.4% 12.0% 9.6% 10.8% 13.3%
3年間の
分配金額
547,384円 512,251円 782,232円 673,719円 535,468円
3年後の
100万
※分配金除く
753,074円 700,937円 647,215円 716,677円 763,803円
予想利回り 2.3%
(-11%~9%)
-1.0%
(-20%~6%)
-2.2%
(-19%~12%)
0.8%
(-13%~11%)
0.5%
(-14%~9%)
米国リート型の投信の比較表(フィデリティUSリート・新光US-REIT 愛称ゼウス・ダイワ米国リートファンド・ダイワUS-REIT B・ワールド・リート・セレクション(米国))

上図の通り「ワールド・リート・セレクション(米国)」は、基準価額が抜群に安定している。ただ、分配金再投資基準価額の騰落率では他社に見劣りし、物足りなさが残る印象だ。また、信託報酬は他社と同水準だが、手数料は証券会社によっては0%になる点は悪くない。また、分配金の健全度は13%と低いが、同型の投信の中ではフィデリティと差はあるが悪くはない。

この投信を100万円で3年運用した場合だが、今後も分配金が維持されれば3年で計50万円の分配金が受け取れ、元手の100万円は76万円になる計算だ。この数字なら利回りは最高9%となるが、過去3年の実績値で計算すると利回りはマイナス14%になる可能性もある。基準価額の安定感から最終予想利回りは0.5%程度としたが、他の投信と同様に為替等も含めた状況次第では赤字になる可能性は十二分にある。

最後に結論だが、分配金・分配利回りは低いが検討の余地アリといえそうだ。基準価額の下落にヤキモキしている人も、この投信なら同型の投信よりは安心感があるかもしれない。ただし、翌期繰越分配対象額が相当に減ってきているため、今からの購入となると長くても数年で見切りをつける算段はつけておいた方が賢明だ。また、利回りも追求したいなら、同じUSリートでもフィデリティの方がパフォーマンスは期待できる点は忘れずにおきたい。