チューリッヒ ネット火災保険を比較・評価

チューリッヒ ネット火災保険
オススメ度:
1
保険会社:
チューリッヒ保険
名称:
ネット火災保険
基本補償:
火災・風災・水濡れ
サービス:
-
オリコン:
対象外 / 12社中
特徴:
大切な住まい・暮らしをお守りします

チューリッヒのネット火災保険は2022年3月から販売を開始した火災保険です。同社は長らく自動車保険が主力でしたが、2022年に満を持して火災保険の販売を開始しました。完全に他社よりも遅れてのスタートですが、他社よりも秀でた面はあるのでしょうか。

それではチューリッヒのネット火災保険の補償内容・保険料・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社の火災保険と比較していきます。

補償内容・特約

この保険の基本補償は災害による保険金の補償と、災害に伴う費用の補償とがあります。災害は火災・風災・水災・水漏れ(+物体の飛来)・盗難が対象となります。火災で建物が燃えたケースから、台風で屋根が壊れたり、川が氾濫して床上浸水したり、盗難で家財が盗まれたケースまで補償されます。

チューリッヒのネット火災保険 ダイレクト火災の補償内容(出典:チューリッヒのネット火災保険 ダイレクト火災 パンフレット 20220415修正版)

災害に伴う費用の補償は、地震火災費用・残存物取片づけ費用・損害防止費用・失火見舞費用があります。地震火災費用は地震で火災が発生(ストーブが地震で倒れて火災発生等)した場合に保険金が受け取れます。残存物取片づけ費用は火災後の残骸(建物や家財の燃えカス)を撤去する場合の他、台風で飛ばされた屋根を撤去する場合でも保険金が受け取れます。

損害防止費用は火災で使用した消化器を買い直した場合の他、盗難後に監視カメラを購入した場合でも保険金が受け取れます。失火見舞費用は自宅の火災で隣家が延焼した場合の他、延焼したのが隣家の壁・塀だけだった場合でも、隣家への見舞金を渡すために保険金が受け取れます。

自分で取捨選択する特約には個人賠償責任補償特約・臨時費用補償特約があります。個人賠償責任補償特約は自転車事故で他人をケガさせた場合の他、子供が野球・サッカー中に他人をケガさせたり他人の物(クルマ等にキズをつけた)場合に、損害賠償の金額分だけ保険金が受け取れます。

臨時費用補償特約は火災等の災害後に、災害で受け取れる自宅の修繕費等に充てる保険金とは別に、当面の生活費等に充てられる臨時費用として保険金が受け取れます。火災で燃えた衣服や仮住まいの費用に充てられます。特約ではありませんが、地震保険を付加するか否かも自分で選択します。

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保険料を他社と比較

この保険の保険料は東京都・戸建て(木造新築)・90平米で、保険金額を建物1500万円・家財1000万円に設定すると、5年一括払いで224,250円となります。同じ条件で居住地を大阪にすると、保険料は5年一括払いで293,500円に上昇します。マンションで70平米・建物1000万円・家財1000万円だと、東京は50,500円で大阪は55,500円になります。

次に保険料が他社より安いのか否か確認していきます。戸建ての条件は木造新築・90平米・建物1500万円・家財1000万円、マンションの条件はコンクリート造・70平米・建物1000万円・家財1000万円としました。この条件で破損汚損は補償外・地震保険なし(地震保険の保険料は各社同じのため)で、5年一括払いでシミュレーションしました。さらに関東(東京都杉並区)と関西(大阪市城東区)に分けて保険料を一覧表で比較しました。

関東・関西別の火災保険の保険料の比較一覧表(都道府県民共済・日新火災・楽天損保・ジェイアイ傷害火災・セコム損保・東京海上日動火災・三井住友海上火災・SBI損保・損保ジャパン・あいおいニッセイ同和損保・セゾン自動車火災・JA共済・全労済(こくみん共済コープ)・コープ共済・ソニー損保・チューリッヒ保険・AIG損保・共栄火災・ヤマダ少額短期)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この保険の保険料を他社と比較すると、戸建てでもマンションでも高い部類に入ります。特に戸建ては他社よりも5~6万円は高く、高齢者向けにサービスを充実させた三井住友海上に匹敵する金額です。さらに関東ではなく関西となると保険料は7万円も高くなり、関西圏の人だと保険料の高さを一層感じそうです。

以上を踏まえると、チューリッヒのネット火災保険の保険料は高いのは間違いありません。ダイレクト型で保険料の安さを謳ってはいますが、大手の代理店型の東京海上・損ジャ・三井住友海上よりも高いです。この保険料の高さに見合ったメリットがあるのか、続いてメリット・デメリットを確認していきます。

メリット

この保険のメリットは、まずは補償内容が事前に固まっている点が挙げられます。自分で選択するのは保険金額以外は個人賠償責任補償特約・臨時費用補償特約だけです。個人賠償責任補償特約は自動車保険やクレジットカードに付帯していなければ、火災保険に付加すると良いでしょう。臨時費用補償特約は100万円が限度のため、100万円なら保険金か手持ちの貯金でカバーできると思えば付加する必要はありません。

補償内容が手厚いのもメリットです。他社の火災保険では選ぶ補償(オプション)になっている費用補償・特約も、この保険では基本補償として組み込まれています。特に地震火災費用・損害防止費用は、いくつかの他社ではオプションになっています。

デメリット・注意点

この保険のデメリットには、まずは前述した通り保険料が高い点が挙げられます。補償が手厚い分ともいえますが、より手厚い補償で保険料が安い保険が他社にはあります。例えば東京海上・損ジャは少し上の補償がありつつ保険料は安いですし、三井住友海上のグランドは契約者・親族との安否確認サービス等の高齢者向けサービスが充実しています。

また、最近のダイレクト型の火災保険は補償が細かく選択できるのが主流ですが、この保険には選択の余地はほぼありません。その分だけ加入時の手間は減るかもしれませんが、それで保険料が高ければ元も子もありません。補償を削れるようにするか、保険料を安くするのが筋でしょう。

また、特約に不足感があるのもデメリットです。事故時に弁護士に相談できる弁護士費用特約、バルコニーが破損すると補償されるバルコニー等修繕費用補償特約がありません。その他に特徴的な特約(太陽光の蓄電池等を補償する特約等)がある火災保険が他社にはあり、この保険は新しく出てきた火災保険にしては特徴的な特約がありません。

ちなみに他社の火災保険にはカギ・水廻りの修繕サービスが付いていますが、この保険には同種のサービスがありません。元から自分でかぎ・水廻りが故障した際には自分で業者を呼ぶ人なら問題ありませんが、業者選びが面倒(悪質な業者もある)な人もいるでしょう。そういった人にはサービスが無いのはデメリットです。

評判・苦情

チューリッヒ保険の2021年度(2021年4月~2022年3月)の決算資料によると、保険会社の収入を示す正味収入保険料は前年度の421億円から447億円になり6%増でした。他社では横ばいや増加したケースもあるため、契約数からすると火災保険の評判は悪くはありません。

チューリッヒ全体に寄せられたお客様の声・苦情数は37471件(2021年度累計)でした。その中でも多いのは契約・募集行為に関する意見です。契約時の説明不足から、保険料の誤り、接客態度、契約書類の誤りといった不満がありそうです。

チューリッヒ保険の苦情数・苦情内容・苦情内訳(出典:チューリッヒ保険公式HP「お客様の声 受付状況」)

その他にオリコンの火災保険 総合ランキング2023(実際にサービスを利用した約8600人が調査対象)等の調査データを確認したいところですが、販売から年数が経過していないためか調査の対象外となっています。とはいえ主力である自動車保険で評判が中~下と考えると、火災保険でも大きな期待はできないでしょう。

以上のデータから考えるとチューリッヒの評判は普通か少し悪そうですが、火災保険については未知数です。火災保険については販売を開始して数年が経過して契約数等が見えてくるか、何らかの大規模調査で調査対象とならないことには不透明としか言いようがありません。

総合評価・おすすめか?

結論としては、チューリッヒのネット火災保険は総合的にはイマイチな保険です。メリットもあるにはありますが、補償内容のわりに保険料は高く、保険料が高い分だけ他社よりも秀でた面も見つからないからです。ただ、販売開始から間もないため、これから補償内容が改定・改善されていくと良い保険になる可能性はあります。

この保険を検討している人は他社の火災保険も検討した方が賢明でしょう。保険料の安さを追求したい人は、戸建てなら都道府県民共済・日新火災等が候補になります。マンションなら楽天損保・ジェイアイ傷害火災あたりも検討しても良いでしょう。保険料より補償内容・評判等も重視するならソニー損保・東京海上日動が候補になります。