所得税の概要と仕組み(税率・控除・計算など)

年収1000万円以上の会社員は密かに増税され手取りが減っている?

年収1000万円は、会社員にとっては1つの目安ともいえる給与水準ではあるが、実は年収1000万円を超える人は密かに増税され手取りが減っている。

この年収1000万円だが、手取りが1000万円ではない点を抑えておきたい。1000万円は給与明細の額面であって、実際の手取りは1000万円から社会保険料(年金・健康保険)や税金が徴収されているためだ。手取りが1000万円になるには給料が額面で1200~1300万円は必要になってくる。

それではタイトルに記述した「年収1000万円の会社員」が増税されているとは何なのか?一言でいえば、給与所得控除が減額され所得税率が上昇しているのが原因だ。このカラクリを理解するには、給料(給与所得)の計算手順を確認しておく必要がある。

まず、給料に係る税金には所得税と住民税があり、所得税は給料が増えれば税率が上がり、住民税は一律10%だ。この2つの税金を計算するには、給料の額から課税所得金額を算出することになる。下図は課税所得金額の推移だが、これが2013~2015年までは固定されていたのが、2016年・2017年には枠組みの幅が小さくなり控除の上限額も減っている。

2015~2018年の給与所得控除額

例えば、年収1200万円の人の課税所得額は、2013~2015年までは給与所得控除は230万円(60万+170万)を差し引いた970万円だった。2016年は同額だが、2017年になると給与所得控除の上限が220万円のため980万円となる。課税所得が10万円増えることで、課税される所得が増えており、その分だけ税金も増える(増えた税額については後述)

また、別の見方として、2016年に控除の上限が適用されるのが1500万円から1200万円、2017年には1000万円になっており、高所得と見られる水準が下がり増税傾向にあるともいえる。

さて、こうして計算した課税所得額に所得税を課税することになる。下図は所得税率の推移だが、こちらは古くは1999年から徐々に数年置きに税率が上がっているのが分かる。

年収1000万円以上の人の1999年から2016年以降の所得税率

ただ、給与所得控除とは異なり、年収1000万円(課税所得700万円ぐらい)だと、税率が2007年に上昇した以降は変化がない。年収2000万円超(課税所得1800万円以上)までは変化がないものの、年収4200万円超までいくと税率が上昇している。

前述した課税所得で考えると、年収1000万円の人の課税所得が10~20万円増えた場合、所得税率は23%のため、年間で徴収される税金は2~4万円程度は増税される。住民税も課税所得を元に計算されるため、1~2万円程度は翌年の税負担が増える。2つの合計で年間3~6万円程度の増税になる。

以上が年収1000万円以上の人に係る増税についてだが、確定申告等で迷むことがあれば、無料の自治体主催の確定申告相談会(税金セミナー)や、税理士の無料相談を利用するのも手だ。弥生などの青色申告の計算ソフトも、手順簡略化と計算ミス予防の一助となるだろう。