住友生命 たのしみ未来グローバルを比較・評価

住友生命 たのしみ未来グローバル 学資積立プラン(予定利率変動型5年ごと利差配当付指定通貨建個人年金保険)
オススメ度:
3
保険会社:
住友生命
名称:
住友生命 たのしみ未来グローバル
加入年齢:
0~8歳
支払開始:
18歳
返戻率:
80~120%
特徴:
教育資金の積み立てにご活用いただけます

たのしみ未来グローバルは住友生命の外貨建ての学資保険です。住友生命には円で積み立てる「たのしみ未来」「こどもすくすく」「たのしみキャンバス」という学資保険もあります。たのしみ未来は個人年金保険を教育資金向けにカスタマイズした保険ですが、たのしみ未来グローバルは外貨で積み立てる点が追加されています。

外貨はアメリカドル(米ドル)とオーストラリアドル(豪ドル)が選択できます。そのためドル/円もしくは豪ドル/円の為替レートの影響を受けます。外貨建ての学資保険はジブラルタ生命にもありますが、それとの違いも含めて以下で保険の概要を記載し他社の保険と比較していきます。

保障内容

たのしみ未来グローバルの契約者は毎月一定額の保険料を日本円で支払い、それを保険会社が外貨に換えて積み立てていきます。保険料を積み立て中に子供が死亡すると死亡給付金が受け取れます。ただ、死亡給付金は死亡するまでに支払った保険料総額となります。保険料を支払い終えると据置期間を経て年金の受け取りが始まります。年金は5年間で計5回受け取れ、初回のみ他年度の2倍の金額が受け取れます。

住友生命 たのしみ未来グローバルの保障内容・仕組み(出典:たのしみ未来グローバル販売用公式パンフレット)

この保険のポイントは米ドルもしくは豪ドルの金利分だけ、支払った保険料総額が毎年増加していく点です。日本では普通預金も定期預金もゼロに近い金利ですが、米ドル・豪ドルなら相応の金利が付きます。各通貨の金利は変動しますが、この保険は1.5%を最低保証してくれるため金利分は確実に増加します。ただ、最終的には為替レートの影響も大きい点に注意が必要(詳細はデメリットの箇所で後述)です。

子供が死亡した時の死亡給付金は保険料の支払い中は支払った保険料総額ですが、支払い終えると一気に増額されて金利分も加味された金額になります。それに伴って解約すると受け取れる解約返戻金も一気に増額し、年金の受け取りが開始されるまで増額していきます。保険料を支払っている間の解約は御法度ですが、支払い終えれば為替レート次第では解約返戻金でも得する可能性があります。

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保険料・返戻率を比較

この保険の保険料は最低払込金額が120万円以上のため、仮に保険料払込期間を15年間にして据置期間を3年にすると最低でも保険料は月額6666円となります。これ以上の金額なら保険料は自分で自由に設定できます。また、保険料払込期間は10~18年で据置期間は0~8年に設定でき、保険料払込期間を短くして据置期間を長くすれば返戻率は高まります。

さらに返戻率は為替レートによっても変動します。支払った保険料を平均化すると1ドル=100円だとして、仮に最低保証利率の1.5%で18年運用されて、為替レートが一切変動しないと返戻率は約106%となります。これが1ドル90円となると返戻率は90%前後となり、1ドル=110円となると返戻率は120%近くになります。それでは他社の学資保険はどうでしょうか、下図の返戻率の比較表を見てください。

学資保険・こども保険の被保険者年齢・払込期間10年と15年と18年の場合の返戻率・苦情率の比較表(日本生命・住友生命・ジブラルタ生命・ソニー生命・明治安田生命・JA共済・富国生命・第一生命・アフラック・かんぽ生命・太陽生命・SOMPOひまわり生命・朝日生命・東京海上日動あんしん生命・フコクしんらい生命・三井住友海上あいおい生命)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

他社の学資保険ではソニー生命・日本生命等が保険料払込期間18年でも返戻率が100%を僅かに超えます。保険料払込期間を10年にすれば返戻率は107%まで上昇します。たのしみ未来グローバルで107%になるには、為替レートが円安になるか少なくとも動かない必要があります。将来の為替相場を読むのは困難ですが、従来の返戻率が高い学資保険と同等以上のお得さとなる可能性はあります。

メリット

この保険の最大のメリットは外貨建てという点です。返戻率が金利分と円安で高まり、将来受け取る年金(学資金)が従来よりも大幅に増額できる可能性があります。それもジブラルタと違い米ドルだけではなく豪ドルも選べます。現在は両通貨とも同じような金利ですが、かつては豪ドルは高金利通貨として知られる通貨でした。今後も金利上昇局面となれば今以上の金利が金利が期待できます。

もちろん金利分があっても為替相場次第で返戻率は大きく下がる可能性がありますが、毎月一定額を支払うため意識せずとも為替リスクが抑制されるドルコスト平均法となります。ドルコスト平均法は積立額を平均化することで、一度に積み立てる(一時払い・一括払)よりも為替リスクを抑えられます。例えば、1ドルが100円・105円・110円の3回に分けて積み立てると積立額は平均107円となり、1ドルが110の時よりも有利になるというわけです。

住友生命 たのしみ未来グローバルの保険料と為替変動の仕組み(出典:たのしみ未来グローバル販売用公式パンフレット)

それもジブラルタとは異なり、支払う毎月の保険料は円で一定額です。保険料が変動しないため家計に突然の負担増が発生することもなく、毎月の為替レートを気にする必要もありません。とはいえ支払い終えた段階で円高で損をしている可能性もあります。その時には1回だけ年金の受け取りを最長3年まで繰り下げ(引き伸ばす)ことも可能です。それでもダメなら外貨で受け取って円安になるまで待つことも可能です。

また、ジブラルタとは異なり解約返戻金が残り続けることはなく、全てが教育資金に振り分けられるメリットもあります。その他に月額保険料が1.5万円を超えると返戻率が上昇する「たのしみランク」もあります。たのしみランクは3万円を超えれば最も得になります。毎月3万円のハードルは低くはありませんが、検討する価値はあります。

デメリット・注意点

この保険の最大のデメリットは外貨建てという点です。どれだけ返戻率が高いといっても為替次第では返戻率は100%を下回る可能性があります。円高で金利による増加分を相殺してしまうことも十分に考えられます。例えば、ドル円レートは2008年に1ドル=100円を下回り5年後には75円まで円高が進行しました。

さらに円高を回避するドルコスト平均法も万能な方法ではありません。あくまで積み立てる外貨の為替レートを平均化するだけです。仮に保険料を支払っている間は緩やかな円安傾向で、年金受け取りが開始される数年前から円高傾向となれば平均値を下回るでしょう。

保険料を支払い終えた後に積立額よりも円高なら、繰り下げ・外貨で受け取りという手もありますが、これは教育資金に備える本来の目的を果たせず本末転倒となります。3年間の繰り下げをしたくても子供が現役で大学に合格すれば否応なく学費が必要で、まさか子供に三浪して欲しいとは言えるわけがありません。外貨で受け取るのも同様に保険とは別に自前で学費を用意する必要があります。

もちろん3年間の繰り下げを見越して年金受取開始を18歳ではなく15歳に設定する手もあります。ただ、そうすると据置期間か保険料払込期間のどちらかを短くする必要があります。その分だけ返戻率が低くなることも考えられるため、絶妙な調整が求められます。将来の不確定な為替相場に対して調整をするのは非常に難しく、良い結果となるか悪い結果となるか、何も対策をしなくても良かったと徒労に終わる可能性もあります。

評判・苦情

住友生命の決算資料によると、2019年度(2019年4月~2020年3月)のたのみ未来グローバルの新契約数は不明です。ただ、この保険が含まれる個人年金保険の新契約数は9.1万件から9.8万件に増加しています。保有契約高(指定通貨建個人年金保険)も1.4万件から2.4万件に増加しています。教育費のためにではなく老後のために契約している人も相当にいるでしょうが、販売動向から考えると評判は悪くはありません。

ただ、生命保険協会のデータによると住友生命全体に寄せられている苦情数は約1.1万件(2020年度第1四半期時点)です。総契約数の1143万件で割った苦情率は0.10%で、1000契約のうち1.0件で苦情が発生している計算です。日本生命・第一生命の0.02%よりも明らかに高めの数字です。苦情率は参考値ではありますが、現状は苦情が非常に多いといえます。

一方でオリコンの生命保険会社の顧客満足度ランキングで29社の中で14位と中位のため、苦情数ほど満足度は悪くありません。アフターフォローへの評価はランキング上位にも劣りませんが、商品内容への評価が足を引っ張っています。さらにJ.D.パワージャパンが2020年3月に発表した「2020年 生命保険契約満足度調査」でも14位と中位に位置付けています。

2020年生命保険契約・顧客満足度ランキング(出典:JDパワー2020年生命保険契約満足度調査)

これらの調査の調査項目には保険の中身(保障・保険料)の他に、契約・更新時の手続き・顧客対応(アフターフォロー)等が含まれます。オリコンと同様に顧客対応が悪くないなら、やはり保障内容に加えて保険料・手続き等が影響したと考えられます。そのため住友生命全体の保険の評判はイマイチかもしれませんが、この保険の評判は悪くなそうといえます。さらに契約後の顧客対応の評判も悪くない可能性が高そうです。

総合評価・おすすめか?

結論としては、この保険は中身を理解してデメリットも把握できる人限定でオススメの保険です。特に円高というデメリットに対しては対策・対処方法はあれど、完全には払拭できない点を抑える必要があります。リターンを求めた分だけリスクもある、最悪は損をしても良いという心構えが必要かもしれません。損するようなら教育資金ではなく老後資金に回す(外貨で受け取り寝かせる)という考えもアリです。

その一方で中身を理解できない人やデメリットが不安な人は、円建てで返戻率の高い日本生命・ソニー生命・明治安田生命を検討すると良いでしょう。また、契約者(親)の年齢が高めなら病気で保険料の支払いが免除される第一生命の「こども応援団」も検討の余地があるかもしれません。