かんぽ生命 はじめのかんぽを比較・評価
- オススメ度:
- 保険会社:
- かんぽ生命
- 名称:
- 学資保険 はじめのかんぽ
- 加入年齢:
- 0~12歳
- 支払開始:
- 12・17・18歳
- 返戻率:
- 94.8%
- 特徴:
- お子さまの進学に備えた資金づくりと万一のときの保障をセット
かんぽ生命の学資保険(はじめのかんぽ)は、2014年4月にリニューアルして大幅に返戻率がアップしました。しかし、返戻率は2014年時の111.6%から現在は94.8%まで下落しています。他社と同じく超低金利・マイナス金利の環境を受けたためです。
返戻率に魅力はないものの、この保険にも後述するようにメリットは無くはありません。それでは以下で保険の概要を記載し、他社の保険と比較していきます。
保障内容
はじめのかんぽは学資金を受け取るタイミングに応じて「大学入学時コース」と「小中高・大学入学時コース」と「大学入学時・在学中コース」の3つがあります。大学入学時コースは大学入学時に学資金を一括で受け取れ、小中高大コースは各々の入学時に学資金が受け取れます。
大学入学時・在学中コースは、大学入学時に加えて2年・3年・4年時に学資金が受け取れます。大学の学費は入学時が最も膨らみますが、当然ながら2年目以降も学費は必要です。「平成30年度入学者にかかる学生納付金等調査結果(文部科学省)」によると、私立大学の平均の授業料は年間で約90万円となっています。授業料は対前年度度比で0.5%増で増額傾向にあります。
その点、大学入学在学コースで学資金を300万円に設定していれば、毎年75万円を4回受け取れます。さすがに入学時の入学金まではカバーできませんが、ほぼ学資金だけで翌年度以降の学費はカバーできます。一方で大学入学時コースだと、入学時の費用から残った学資金は翌年以降の学費に回す等の工夫が必要です。
大学入学時コース(18歳満期)と大学入学在学コース(21歳満期)の保険料は、同じ基準保険金額(学資金額)であれば保険料は大差ありません。保険金額を300万円にするなら前者の月額保険料は15630円で、後者は15540円となります。学資保険は支払った保険料を保険会社が運用するという性格上、運用期間が長いほど有利になります。そのため僅かに21歳満期の方が保険料は安くなりますが、その差は僅か90円だけです。
この点を踏まえると、結局は2つのコースは自分の好みにあった方を選べば良いという結論になります。一気に数百万円が手に入るのが不安なら大学入学在学コースでも良いでしょう。不安がないなら大学入学時コースにして、普通預金なり定期預金なりに入れておけば良いでしょう。
一方で小中高大学入学時コースは、お受験をするか等々を踏まえて検討した方が賢明です。なぜなら保険会社が運用する途中で運用金額が減り、運用効率が落ちる分だけ返戻率が下がる(保険料は上昇する)からです。大学には入学金がありますが、私立であれば小中高でも入学金が必要となります。まとまった資金が定期的に必要なことが明白なら検討する余地があります。
その他に特約として、子供がケガで入院・手術時に給付金が受け取れる傷害医療特約、ケガに加え病気での入院・手術も保障される総合医療特約、先進医療の治療を受けると300万円まで受け取れる先進医療特約があります。いずれも子供を対象とした保障のため基本的には不要です。最近では子供の治療費は無料とする自治体が増加しており、保険料も上昇して返戻率が下落するからです。
ただ、子供の治療費が無料なのは未就学児(小学生未満)までとする自治体もあります。その意味では完全に無意味とは言い切れません。子供は病気よりもケガの心配は、年齢を重ねるほどに部活等のスポーツや自転車通学等で増します。とはいえ治療費は大した額ではない(少なくとも毎月数千円を積み立てるほどではない)ため、どうしても気になる人以外は上述の特約は不要です。
保険料・返戻率を比較
この保険は契約者(親)が30歳で子供が0歳で保険金額300万円で18歳払済だと、大学入学時コースが14640円となります。同じ条件で小中高大コースだと19140円、大学入学在学コースだと14580円となります。同じ300万円を受け取るにしても保険料からすると大学入学在学コースが最も得といえます。
ただ、返戻率にすると3つのコースの全てが100%を下回ります。最も保険料が安い大学入学在学コースでも返戻率は95.2%のため、ただ貯金した場合の100%よりも5%ほど損をします。大学入学時コースの返戻率が94.8%、小中高大コースの返戻率は94.3%となります。返戻率が95%だと保険料で総額315万円を支払って、学資金を300万円受け取る計算です。
それでは他社の学資保険と比較して返戻率はどうでしょうか。20以上の学資保険を比較した下図を見て下さい。同じ保険料を18歳で支払い終えて返戻率が100%を超えるのは、日本生命・ソニー生命ぐらいのものです。他の学資保険は払込年数を10年~17年に短縮することで、ようやく100%を超える程度です。
かんぽ生命の学資保険も払込年数を短縮すると、他社の保険のように100%を上回るでしょう。ただ、払込年数を短縮すると短縮した分だけ毎月の保険料が上昇します。子供が生まれれば教育費が膨らみ住宅ローンも抱えるのが一般的です。その際に学資保険の保険料が負担となってローン返済が滞ったり、ローン返済額が少額になり金利負担が大きくなっては無意味です。払込年数を短くして返戻率を上昇させるのは、家計を鑑みて判断する必要があります。
また、日本生命・ソニー生命で払込年数を短縮すれば、他社よりも一段と高い返戻率になるはずです。そのため返戻率だけで考えると日本生命・ソニー生命を選ぶのが賢明といえます。
メリット
この保険を他社と比較すると、まずは医療保障が付加できる点がメリットといえます。基本的には不要な保障ですが、居住する自治体によっては子供の医療費が無料とはなりません。もちろん子供は圧倒的に大病を患う可能性は低いのですが、部活等で骨折・脱臼等をする可能性はデスクワークの大人よりも高いです。ただ、他社の多くの学資保険でも医療保障が付加できるため、かんぽ生命の独自のメリットとはいえません。
大学入学在学コースがある点もメリットといえます。大学入学時に一時金で受け取ると、学費以外のことに浪費してしまいそうな人には向いているでしょう。地味に保険料が安く(返戻率が上昇する)のもポイントです。ただ、他社の幾つかには似たようなコースがあります。
さらに全国津々浦々にある82店の店舗網もメリットでしょう。かんぽ生命の店舗は全国の政令指定都市だけではなく、一定程度の人口がある市にもあります。北関東なら土浦市・高崎市・熊谷市・川越市・船橋市・川崎市・海老名市等々に支店があります。近畿・東海なら堺市・東大阪市・姫路市・三島市・岡崎市等々にあるという具合です。
対面で契約するのは面倒だと人も多いでしょうが、まとめて疑問・質問ができる面で楽なことがあります。他の保険も併せて検討していれば、一度に説明を聞いて契約することも可能です。他社よりも圧倒的な店舗網の広さはメリットといえるでしょう。
デメリット・注意点
この保険のデメリットは、まずは返戻率が低くマイナスである点が挙げられます。もちろん払込年数(払い済みになる子供の年齢)を18年以下にすれば返戻率は高くなりますが、家計への負担が増加します。また、同じ条件にすれば他社の返戻率も上昇するため、かんぽ生命は貯蓄面を考慮すれば致命的なデメリットがあるといえます。
また、メリットでもある医療保障を付加すると返戻率が一段と下落します。なぜなら医療保障分の保険料は入院給付金等に割り振られるため学資金の原資にはならないからです。また、そもそも子供の部活でのケガが心配なら、ケガを保障する保険に中学生になってから加入するという手があります。
それなら子供がケガとは縁遠い軽音楽部等に入るか、ケガの多いラグビー部等に入るかを見極められます。前者なら医療保障は不要でしょう。さらに保険料も0歳から発生せず、中学~高校までの6年間で事足ります。もちろん子供の時に大病を患う可能性は完全に否定はできませんが、この方法の方が数字で考えれば妥当です。
ちなみにコープこどものケガ保険だと、入院・通院・手術等の保障があり毎月の保険料は560円です。au損保の交通事故の保険なら毎月の保険料は280円、日常事故の保険なら毎月の保険料は280円です。かんぽ生命でなくとも安い保険は数多く存在しています。
さらに店舗網が広いこと自体はメリットですが、店舗にいる職員の質が気がかりです。かんぽ生命は2019年12月に不適切営業問題(保険不正販売問題)で金融庁から業務改善命令を受けています。職員・社員が不当な営業をした原因は上司からの圧力の影響で、社員自身に問題があるとは考えにくいです。かんぽ生命に就職し保険販売の資格を有する人のため、少なくとも能力が著しく欠けているとは考えられません。
かんぽ生命は不正問題を受けて業務改善計画を総務省・金融庁に提出して、その進捗状況も公開しています。しかし、企業体質は簡単に変わるものではありません。かんぽ生命で保険を契約すること自体がデメリットとはいえませんが、注意点であることは間違いないでしょう。
評判・苦情
かんぽ生命の決算資料によると、2019年度(2019年4月~2020年3月)の学資保険の新規契約件数は4.6万件となっています。前年度が12.7万件のため3分の1近い水準まで減ったことになります。前述した不正営業問題が影響したのでしょうが、契約件数から考えると評判は悪いといえます。
さらに生命保険協会のデータによると、かんぽ生命全体に寄せられている苦情数は4.8万件(2020年度第1四半期時点)です。かんぽ生命より契約件数が多い日本生命や第一生命への苦情数が5000~9000件と考えると、寄せられている苦情の数は異常に多いです。総契約数の1792万件で割った苦情率も0.27%と高く、1000契約のうち2.7件で苦情が発生している計算です。苦情率は参考値ではありますが、現状は苦情が非常に多いといえます。
また、オリコンの生命保険会社の顧客満足度ランキングでも29社の中で23位以下です。J.D.パワージャパンが2020年3月に発表した「2020年 生命保険契約満足度調査」でもワースト3に入ります。
この調査の調査項目には保険の中身(保障・保険料)の他に、契約・更新時の手続き・顧客対応まで含まれます。保険自体もさることながら、その前後の各種手続きや顧客への対応という面ではストレスを感じる場面がありそうです。その意味では評判は悪いといえます。
総合評価・おすすめか?
結論としては、おすすめできない保険といえます。メリットも無くはありませんが、それに代わる手段・デメリットがあるため契約へ繋がるものとは考えられません。また、保険とは10年以上に渡る長い付き合いになるだけに不正営業問題が本当に改善されたのかは大きな問題です。少なくとも数年は経過を見る必要があるでしょう。
かんぽ生命の学資保険を検討している人は、他社の保険も積極的に検討した方が賢明です。返戻率を重視するなら日本生命やソニー生命を検討すると良いでしょう。さらに高い返戻率を求めるなら外貨建ての住友生命・ジブラルタ生命の学資保険も候補に上がります。また、契約者(親)が心筋梗塞・がん・脳卒中になると保険料の支払いが免除される第一生命の学資保険も検討の余地があるかもしれません。