フィデリティ・USリート(UリトB)/ フィデリティ投信

フィデリティ・USリート(UリトB)イメージ
オススメ度:
4
運用会社:
フィデリティ投信
商品名:
フィデリティ・USリート(UリトB)
地域/決算:
北米 / 年12回(毎月)
対象資産:
不動産投信
基準価額:
4,254円(2017年7月現在)
手数料:
0%(申込※フィデリティ証券) 1.4%(信託報酬)

フィデリティ・USリートBは米国リートの中では最も優秀!?

この投信はアメリカのオフィスビル・商業施設・住宅などの様々な形態の不動産に投資し、賃料収入や不動産の売却益で収益を出している。その中でもオフィス・物流施設への投資比率が高めのため、オフィスの空室率や宅配・配送業(+ネット通販)の業績に影響を受ける。さらにアメリカへ円をドルに換えて投資しており、円安はプラスだが円高はマイナスの影響を及ぼす。その影響を排除した為替ヘッジありのUSリートAもあるが、純資産額からして明らかにBよりも人気は無いようだ。

フィデリティUSリート・チャート

まず現在までの基準価額の推移だが、過去10年を見ると2010年をピークにして下落を続けている。同時期に分配金再投資後基準価額との乖離が始まっており、そこがターニングポイントだったようだ。その分配金再投資後基準価額は現在ではリーマンショック前のピークを超えて、過去最高値まで上昇している。ただ、自ら設定したベンチマークに負けているのは如何なものか。。。

純資産は2010年から伸び続けてきたが、2016年末にピークをつけた感が強い。この投信は純資産から考えて米国リート型の投信では人気ナンバー1なだけに、この投信を筆頭に米国リートの人気は一巡した可能性が高い。後述する分配金の減配のタイミングで投資家の売りが進んだと考えるのが妥当だろう。

分配金に目を向けると、2016年10月に100円から75円に減配している。今後に一抹の不安はあるものの、時期によっては収益から分配金を捻出しており、さらに翌期繰越分の分配対象額(今までに溜め込んだ収益)が十分にある。1万口あたりで2番人気の新光投信の2倍以上はあるため、当面は分配金が維持される可能性が高いだろう。

フィデリティ usリートの上位構成銘柄及び業種比率

次に、この投信の組入銘柄だが、既述したように他社よりもオフィス・物流の比率が高い。数年前まではショッピングモールなどの小売・商業系の比率がトップだっただけに、米国市場を鑑みて転換を図ったのだろう。

個別銘柄では数年前までトップだったサイモン・プロパティー・グループが9位にまで後退している。同社はショッピングモールを中心に保有している世界最大の規模の不動産会社で、北米とヨーロッパに各々、300件程度のショッピングセンターを保有している。替わってトップになったのがプロロジスで、同社は物流施設に特化しており世界で7兆円近くの物流施設を保有している。日本でも展開しており、関東だと神奈川・千葉を中心にし、関西では大阪・神戸を中心に展開している。物流施設は今後もネット通販の拡大と共に需要増加が見込めるため期待が持てるだろう。

米国リートの不動産市場の状況・経済指標と見通し

次に米国リート・不動産の状況だが、各証券会社は概ね強気に傾斜しており、2019年あたりまではプラスの利益成長を見込んでいる。この投信は前述したようにオフィスの比率が高いが、そのオフィスは二桁の利益成長が予想されている。2019年には成長が一時期よりは鈍化する可能性があるが、それでも他のカテゴリよりも成長率は高い。この投信が小売からオフィスに組み入れ比率の変更したのはプラスに働きそうだ。

今後の注意すべき点としては、どこまでアメリカの金利が上昇するかだろう。アメリカの中央銀行(FRB)は利上げと金融緩和の縮小をしており、金利上昇は避けられない状況にある。リートは銀行等から資金調達をして不動産を取得しており、金利上昇による利息負担増加は収益の悪化をもたらす。負債の返済時期は2020年以降が大きく、85%が固定金利を採用している点で一定の安心感はあるが、固定金利とはいえ新規の資金調達となれば影響を受けるのは必定だ。どこまで金利が上昇するかは注視しておく必要があるだろう。

次に、純資産ランキング上位の米国リート型の投資信託と、基準価額・直近1年の騰落率・手数料・信託報酬・信託財産留保額・分配金額(手数料等を差し引いた金額)で比較した。分配金が運用による収益から捻出しているかを確認するため、日経新聞でも度々記載される分配金の健全度・健全率(分配金に占める利子配当収入等の割合)も過去6ヶ月の数字で比較した。さらに、この投信を100万円分だけ購入して3年後の解約時には幾らになるか?を、過去1年間の基準価額の騰落が今後3年繰り返すと仮定してシミュレーションした。最後に過去3年の騰落率と分配金を加味し、予想利回りのレンジと最終予想利回りを算出した。

製品名 フィデリティ
USリート
新光
US-REITオープン
愛称:ゼウス
ダイワ
米国リート・ファンド
ダイワ
US-REIT B
GS
US リート
トリプルエンジン
基準価額 4,254円 3,108円 4,182円 3,922円 2,827円
騰落率 -9.02% -11.1% -13.5% -10.5% -12.5%
分配金再投資
騰落率
11.4% 10.1% 11.2% 11.2% 9.5%
手数料 0% 2.0% 3.0% 1.5% 2.5%
信託報酬 1.4% 1.5% 1.5% 1.5% 1.4%
信託財産
留保額
0.3% 0.1% 0.3% 0% 0%
1年間の
分配金額
197,461円 193,050円 286,944円 244,773円 191,015円
分配金の
健全度
26.4% 12.0% 9.6% 10.8% 15.4%
3年間の
分配金額
547,384円 512,251円 782,232円 673,719円 505,146円
3年後の
100万
※分配金除く
753,074円 700,937円 647,215円 716,677円 668,086円
予想利回り 2.3%
(-11%~9%)
-1.0%
(-20%~6%)
-2.2%
(-19%~12%)
0.8%
(-13%~11%)
-2.9%
(-24%~5%)
米国リート型の投信の比較表(フィデリティUSリート・新光US-REIT 愛称ゼウス・ダイワ米国リートファンド・ダイワUS-REIT B・GS USリート トリプルエンジン)

上図の通りフィデリティ・USリートは、基準価額の下落幅は他社よりも小さく安定している。それなのに分配金再投資後基準価額ではトップの伸びを示しており、上図の中では優秀な投信といえる。さらに手数料はフィデリティ証券であれば0%で、信託報酬も他社よりは僅かだが安いのもポイントだ。分配金の健全度は最大値の100%には遥かに遠い26%で優秀とは言い難い。とはいえ、同じ米国リート型投信の中では優秀な部類に入る。

この投信を100万円で3年運用した場合だが、分配金が維持されれば3年で合計50万円の分配金が受け取れ、元手の100万円は75万円になるため、計算上は利益が出ることになり利回りは最大9%となる。ただ、直近の過去3年の実績値では、大きく基準価額が下げている局面もあり、利回りはマイナス11%まで落ち込む可能性もある。それでも他社よりは優秀だが、一応は覚悟をしておいた方がいいだろう。

最後に結論だが、この投信は米国リート(USリート)を検討中の人には第一候補になるだろう。分配金額だけで考えれば他社の方が良く見えるかもしれないが、分配金の中身や基準価額を考えれば答えは一目瞭然だ。さらに機動的に組み入れ比率を変えてきた過去があるため、仮にオフィス関連が今後伸びなかったとしても、新たな視点で運用してくれる可能性が高い。

ただし、冒頭でも既述したようにアメリカに投資している以上は、為替の影響を多分に受ける点は忘れずにおきたい。円安が完全に反転して円高傾向が続くようであれば、この投信に限らず非常に大きなマイナスを受ける。為替が円高傾向に入ったか否かは常に注視して、購入・売却を考える必要がある。