損害保険 解説・用語集

積立傷害保険の意味と利用価値とは?

積立傷害保険とは、国内外・業務中か否かを問わず、日常生活で偶発的な事故でケガをしたなら保険金は支払われる傷害保険の積立タイプの保険だ。補償は交通事故だけでなく、火災時の火傷、スポーツ時のケガなどの偶発的な事故を含んでいる。O-157などの食中毒、地震・噴火・津波は補償外となるが、これも特約を付ければ保険金支払いの対象となる。

傷害保険自体に、保険金調整などのルールが適用されないため、各種保険を補完するメリットがある。例えば、自動車保険の搭乗者保険、海外旅行中のケガを補償する海外旅行保険を契約していても、それらと重複して定額で保険金が支払われる。保険金が不足するかもという不安がある場合は元より、日常生活全般をサポートする保険として利用価値がある。特に高齢者・子供を補償の対象にすることで、日常生活のケガに備えられる(詳細は普通傷害保険の利用価値を参照)

それでは、積立にすることで何のメリットがあるのか? まず考えられるのは金銭的な負担が軽減される点だ。積立で満期返戻金が返ってくれば、掛け捨ての保険と異なり貯金としての意味合いが出てくる。ただし、積立傷害保険の場合は満期返戻金が払い込んだ合計保険料を上回ることはなく、保険料の総額の90%程度の額が返ってくる。

例えば、契約期間5年の積立傷害保険を100万円契約すると、5年後の満期返戻金は90万円になるといった具合だ。そのため、賢明な資産運用の手段とは言い難く(そもそも保険会社の資産運用の怠慢だが)、考え方としては5年間のケガの補償が10万円の保険料で済み、いざケガの際には最大500万円程度の保険金が受け取れる安心があると考えるべきだ。割安の保険料で保険に加入できる程度に考えておくのが妥当だ。とはいえ、掛け捨ての保険とは雲泥の差があり、金銭的な負担の軽減は間違いない。例えば、自動車保険などの搭乗者保険などの補償に金銭を割かず、積立の傷害保険にすることで保険料を削減する手がある。

さらに積立には精神的なプラス効果がある。契約期間中にケガをすれば満期返戻金が受け取れないため、保険契約者はケガを避けるように行動するはずだ。これは本来の保険の意義に近づく。昨今の保険各社の謳い文句「万一の時に安心」→「だからケガをしても大丈夫」ではなく、「ケガをしなければお得」→「だからケガをしないようにしよう」という思考パターンが働く。思考パターンの逆転は、日常生活の過ごし方に微妙な変化を齎すだろう。もちろん、満期返戻金が欲しいためにケガの申告をしないのは本末転倒になるが。

以上のように、積立傷害保険には金銭的なメリット以外に、精神的なプラス効果がある。金銭的なメリットも他の保険との組み合わせで、いかようにも増大させられる。他の保険の補完であると同時に、代用品として考えると相乗効果が見込める。その認知度に反して、積立傷害保険の価値は意外に小さくはないといえるだろう。