損害保険 解説・用語集

葬儀保険・葬式保険の必要性とは?

葬儀保険(葬式保険)とは、契約者の死後に死亡保険金を遺族(保険金受取人)が葬儀代として受け取れる保険を意味する。アメリカでは「Final Expense Insurance」という名称で知られ一定の利用があるが、日本では知名度も低く利用者も多くはない。

これは日米で葬式(葬儀)の形式の違いも起因している。アメリカでは香典のようなものはなく、参列者は献花かカードを添えるか、故人の意思でチャリティーのための募金を募られる程度だ。そのため葬式代は遺族が自費で賄うことになるが、平均予算は50万円と少額であり、保険は経済的に困難な人が利用しているケースが多い。その一方で、日本は葬式の平均予算は200万円と高額(冠婚葬祭は値引かない風習もある)だが、香典が参列者1人あたり5,000円~10,000円入る。そのため香典返しを考えても、葬式費用は貯金(生命保険)で賄えると一般的に考えられている。

確かに、最近は低予算を謳う葬儀社も増えており、香典と僅かな貯金か生命保険で十分にカバーできるのは間違いない。しかし、ケースバイケースで必要になる可能性がある。まず、ほぼ貯金が無いか生命保険に加入していない(持病で加入できない)場合がある。アメリカ同様に、こういった人は、高齢になっても掛け金が安い葬儀保険を利用する価値は十分にある。

もう1つは日本独自だが、一定の資産がある人で相続税の対象になる人は検討する余地がある。葬式保険が少額短期保険業者の場合には掛け金は保険料控除の対象とはならないが、遺族が受け取る死亡保険金は非課税限度額内なら相続税の対象外となる。生命保険を加入していても非課税限度額に数十万円の空きがあるなら、葬儀保険で穴埋めする手がある。

また、親族(遺族)の仲が芳しくないケースも想定される。この場合、現金で遺産を残せば法定相続分が遺族に相続されるが(そもそも相続する額で揉めるが)、葬儀代は宙に浮くことになる。生命保険で受け取り人を夫婦の何れかにして、生前に葬儀についての意思を伝えておく手もあるが、夫か妻に先立たれる(先立たれた)可能性もあるだろう。法的拘束力のある遺書を残せばいいが、その手間と管理を考えれば、わざわざ葬儀のためだけに書くのは現実的ではない。そのため相続で揉めることが想定されるなら、葬儀保険で葬儀代を明確にしておき、とりあえず葬儀は行われる体制を整えておくことは決して無駄ではない。

以上のように、基本的には不要となる可能性が高い葬儀保険だが、各々の資産・家族構成・環境によっては利用した方が良いケースがある。特に最後の遺族の仲に不安がある人は、面倒に感じたり、支払う保険料に対して受け取る保険金が少額でメリットが薄いと感じても、とりあえず1度は検討する意義は十分にある。