寡婦控除・寡夫控除と税金

夫・妻と離婚・死別した人は忘れずに寡婦控除・寡夫控除を!!

所得税は税引き前の年収(給料)に直ちに課税されるわけではない。年収から所得控除を差し引いて課税所得金額を算出してから、その額に応じた税率で課税される。寡婦・寡夫控除も所得控除の1つであり、寡婦・寡夫控除により課税される所得が減り節税ができる(所得控除については所得控除って何?を参照)

さて、所得控除の中でも寡婦・寡夫控除は、夫ないしは妻を亡くした人が利用できる。ただし、その条件は非常に細かく、男性・女性は元より子供の有無や所得額でも該当するか否かが分かれるため注意が必要だ。

まず、寡婦に該当するのは、夫と離婚・死別し再婚せずに子供(総所得38万円以下の扶養親族)がいる女性、もしくは夫と死別して子供はいないが合計所得が500万円以下の女性が該当する。例を挙げると、前者は子供がいる共働き夫婦で、妻が夫と離婚・死別した場合が挙げられる。後者は子供はいない夫婦で、専業主婦・パート主婦が夫と死別した場合が挙げられる。後者は離婚が含まれない点は忘れずにおきたい。

寡婦より控除額が大きい「特定の寡婦」は子供がいて、かつ自身の所得金額が500万円の女性が夫と離婚・死別した場合が該当する。例を挙げれば、子供がいる夫婦で、専業主婦・パート主婦が夫と離婚・死別した場合が挙げられる。

次に寡夫に該当するのは、妻と死別・離婚し再婚しておらず子供(総所得38万円以下)がいる男性で、かつ所得金額が500万円以下である場合に限られる。所得金額が500万円以下のため、年収600万円でも給与所得控除を差し引けば税法上の所得金額は500万円以下となり寡夫控除は利用できる。寡婦・寡夫の要件をまとめると下図になる。

寡婦控除・寡夫控除の条件(性別・離婚死別・子供の有無・所得額)と控除額

上図の1段目の寡婦の箇所で、子供が扶養親族か所得38万円以下の子に分かれている点だが、これは子供が相応の年齢になっても寡婦控除が受けられることを意味する。扶養親族の定義は6親等内の血族か3親等内の姻族かつ同一生計かつ所得が38万円以下かつ16歳以上の者を指す。イメージしにくいかもしれないが、夫の死別後も働く妻で、大学生の子供がいる場合などが当てはまる。他方で家計を助けるために高校生の子供がバイトをする場合、年間所得額が38万円を超えると寡婦控除が利用できない。子供がバイトするなら、控除を考えれば年間5~7万円以上は稼がないといけない。

また、上図では別れた理由が離婚・死別と記載したが、実際には夫・妻が生死不明であった場合にも利用できる。ただ、実務的には生死不明は単に最近帰ってこないというレベルではなく、警察への捜索願や家裁における失踪宣告などが必要になってくると予想される。

寡婦・寡夫控除の額の計算方法は前掲の図に記載した通りで、特定の寡婦のみが35万円で、それ以外の寡婦・寡夫は27万円となる。ちなみに年収500万円の会社員である妻だと、給与所得控除を差し引いた総所得は約350万円となる。寡婦控除で27万円が控除されると、課税所得は約323万円となる。他の控除を無視して寡婦控除だけで所得税は約5万円の還付になる計算だ。

以上が寡婦控除・寡夫控除についてだが、寡婦・寡夫・特定寡婦の条件に当てはまるかが厄介だが、控除自体は難しいことではない。ただし、夫・妻と死別して精神的にも日常生活の維持にも苦労している中で、慣れない税金について考える&手続きをするのは難しいこともあるだろう。もしも、夫・妻の離婚・死別で弁護士・税理士を利用したなら、その際に聞いておくか、利用していないなら無料相談ができる税理士や、自治体主催の無料の税金相談会・確定申告相談会を利用するのも手だ。