野村新興国債券投信Aコース(毎月分配型)/ 野村アセットマネジメント
- オススメ度:
- 運用会社:
- 野村アセットマネジメント
- 商品名:
- 野村新興国債券投信Aコース(毎月分配型)
- 地域/決算:
- 海外 / 年12回(毎月分配型)
- 対象資産:
- 債券
- 基準価額:
- 10,007円(2012年10月26日付け)
- 手数料:
- 2.0%(申込手数料 エース証券) 1.62%(信託報酬)
野村新興国債券投信Aコースは数々の危機を乗り越えてプラスだった!
この投信は、高利回りの新興国の債券に投資し売買益・利息で利益を上げて毎月分配金を出している。為替ヘッジの有無でAコースとBコースが存在している。具体的に、単一国の通貨でヘッジをかけているわけではなそうで、単一通貨建ての資産は5%以上は組み入れないと定めている。また、設定されたのが1996年と歴史があり、他社が2006年前後に設定されたことを考えれば幾つかの修羅場をくぐってきたことは確実だ。さて、過去1年の分配履歴では毎月80~100円を出している。2012年7月から100円から80円に減配された。状況は厳しいのだろうか?
まず基準価額だが、他社ハイ債型投信とは異なる動きを見せており、2004年から何があろうと1万円台をキープしている。これは驚異としか言いようがない。他社が大きく上下を繰り返し微減しているものが多い中では衝撃的なグラフだ。累積投資額(分配込みの基準価額)は過去最高値を叩き出している。減配したのは過度の円高でも影響したのかもしれない。また、ベンチマークであるJPモルガンのエマージング・マーケット・ボンドに連動しているが劣っている点は覚えておきたい。
純資産は長らく低迷していたが2011年から急増し、現在は設定来の最大の大きさだ。改めてパフォーマンスの良好さから買い入れがあったか、債券価格の上昇が起因したのだろう。
投資している債券は、国別ではメキシコがトップでロシア・ベネズエラ・ブラジルと続く。ロシアがトップの他社ハイ債型投信が多い中で珍しい。平均格付けもダブルBと他社のトリプルBよりも格付け上の安全度は高めに設定している。
上位の個別銘柄では、ロシア・ベネズエラ・コロンビア・ブラジルといった資源が豊富な国の国債と、自動車・電機製品等の製造業が経済を牽引するメキシコ国債が組み入れられている。他社と同様にフィリピン国債も含まれている。フィリピン経済は長らく低迷し汚職・内戦・テロ等の社会不安が蔓延していたが、外資系メーカーが安価な労働力を求めて進出してきたことから、電機製品・精密機器の輸出が伸びており、2011年の経済成長率が3.7%であったが、2012年は4.2%に加速する見通しだ。いつから組み入れていたかは不明だが先見の明があるのは確かだ。
今後の見通しだが、新興国経済は先進国とは異なり、高い経済成長率を維持している。財政状況も良好なため新興国債券の格付けは上昇しているが、依然として先進国よりも高い利回りを維持している。しかし、相次ぐ先進国の金融緩和を受けて債券人気に火が付いたこともあり、緩やかに利回りは低下しているのも事実だ。利回り低下=債券価格の上昇となるため、基準価額にはプラスに働くのだが、分配金の元となる運用益としてはマイナスに働いてしまう。何とも微妙な状況だ。また、各国の状況については、ロシアは「三菱UFJ新興国債券ファンド/レアル」メキシコは「三菱UFJ新興国債券ファンド/豪ドル」インドネシアは「SMBC・日興ニューワールド債券レアル」を参照してほしい。
次に、他社の新興国ハイイールド債型の投資信託(純資産ランキングで上位)と、基準価額・手数料・信託報酬・利益・分配利回り等を比較した。「利益=分配金-手数料-信託報酬-信託財産留保額」
加えて、基準価額の増減も加味して3年後に100万円が赤字か黒字か?を計算した。その場合、過去1年間の基準価額の増減が今後3年間も繰り返し、分配金も現状維持と仮定した。
計算上での考え方は「前年比で現在の基準価額がマイナス5%の場合、1年後・2年後・3年後も5%ずつ減額するとすると、3年分の分配金を足すと元金の100万円を超えているか否か?」※増減率は1年前の基準価額から現在まで何%下落したか?を表す。一般的な騰落率とは異なる数値。
商品名 | 野村 グロハイ債 資源国通貨 |
三菱UFJ 新興国債券 レアル |
大和住銀 エマージングボンド レアル |
新興国債券 ファンド 豪ドル |
野村 新興国債券投信 Aコース |
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基準価額 | 6,275円 | 7,836円 | 7,455円 | 11,213円 | 10,007円 |
増減率 | -5.0% | -17.6% | -13.0% | -1.8% | +7.6% |
手数料 | 4.0% | 3.0% | 0% | 3.0% | 2.0% |
信託報酬 | 0.78% | 1.52% | 1.48% | 1.52% | 1.62% |
信託財産 留保額 |
0.5% | 0% | 0.5% | 0% | 0.5% |
分配利回り | 18.3% | 29.1% | 16.2% | 19.9% | 8.0% |
3年分の 利益額 |
505,305円 | 843,236円 | 481,787円 | 566,512円 | 214,199円 |
100万で 3年運用 ※基準価額増減考慮 |
1,361,615円 | 1,401,780円 | 1,139,821円 | 1,512,616円 | 1,459,638円 |
最終予想 利回り |
10.84% | 11.92% | 4.46% | 14.79% | 13.44% |
上図で「野村新興国債券投信Aコース」を比較したが、基準価額が1年前からプラスに転じている唯一の投信だ。ちなみに1年前は9,301円で2012年10月現在の10,007円までプラス7%となっている。その間に上下はあったが、9,500円から9,800円を推移し概ねプラスに動いていき10月に1万円台に乗せた。手数料は他社よりも若干安価だが信託報酬は最高値だ。総合して最終予想利回りを出すと、13%前後で豪ドルでヘッジしている三菱UFJの新興国債券ファンドに及ばないが、ナンバー2の利回りと優秀な数字が出た。
結論としては、数字が優秀で十分に検討に値する投信といえそうだ。完全に利回り重視なら話は別だが、基準価額がプラスに転じるのに加えて、分配金も出しているのは運用での利益も確実に出ているはずで、本来の投資信託に近い形で運用できているといえよう。冒頭でも述べたが、1996年の設定と運用に歴史があり、その間のバブル崩壊からの失われた10年(日本国債格下げ・インターネットバブル・米同時多発テロ等)を乗り越え、その後の実感なき好景気にも過度に反応せず、サブプライム問題・リーマンショック・欧州債務問題と経済危機を乗り越えてきた実績がある。その間に新興国債券に注目が集まらなかったというのもあるが、数字でも運用面でも安心感があるのは確かだろう。単一の通貨で為替ヘッジしていないのも、安定という意味ではプラスだ。次なる危機を乗り越えられるかは未知数ではあるが、中長期での運用を考えているなら検討して間違いない投信といえそうだ。