イーストスプリング米国高利回り社債オープン/ イーストスプリング・インベストメンツ

イーストスプリング・インベストメンツ/イーストスプリング米国高利回り社債オープン
オススメ度:
1
運用会社:
イーストスプリング・インベストメンツ
商品名:
イーストスプリング米国高利回り社債オープン
地域/決算:
米国 / 毎月分配型(年12回)
対象資産:
債券
基準価額:
4,877円(2012年12月3日付け)
手数料:
2.0%(申込手数料 ※静銀ティーエム証券) 1.65%(信託報酬)

イーストスプリング米国高利回り社債は既に息絶え絶えの状況か?

この投信は、以前の名称は「PCA米国高利回り社債オープン」という名称であった。運用会社のPCAアセットマネジメントのイーストスプリング・インベストメンツへの社名変更に伴い、投信も名称を「イーストスプリング米国高利回り社債オープン」に変更されたため注意したい。ただ、中身に変更はなく米企業の社債で格付けの低いハイ・イールド債に投資している。

また、現在の分配金は20円だが、名称変更前の分配履歴まで振り返ると、2012年9月までは25円、2012年4月までは30円であった。さらに遡ると2011年9月までは35円、2011年3月までは50円と確実に減配している悪い流れだ。

イーストスプリング米国高利回り社債オープンの基準価額(基準価格)・純資産の推移チャート

まず基準価額だが、近々は一応は4,000円台後半を維持しているが、1年スパンで見れば下落傾向なのは間違いない。それよりも問題なのは累積投資額で、上昇こそしているが、度重なる減配で明らかに伸びが鈍化している。米国経済の情勢が良化してもパフォーマンスの大幅上昇は期待できない。

純資産も減少は止まらず、2011年の1,000億円超から現在の約600億円まで半減している。息絶え絶えという感じで、分配金が10円になるのにも長い時を要さないはずだ。

イーストスプリング米国高利回り社債オープンの上位構成銘柄・業種比率・格付け比率

上位構成銘柄(社債)を見ると、業種別ではエネルギー・サービス・メディアが高比率だ。他社と比較してヘルスケアの比率は抑え目だ。格付けはダブルBで約50%を占め、次いでシングルBの比率が高い。また、他社ではトリプルCの債券が20%を超える投信もあるが、この投信では1%程度とリスクはとっていないようだ。

上位の個別銘柄では、「インターナショナル・リース・ファイナンス」がトップで、同社はアメリカン航空などのアメリカ系の航空会社から、大韓航空・エアインディアといったアジア系、エアフランス・ルフトハンザといったヨーロッパ系まで幅広い顧客に向けて、ボーイングやエアバス社の飛行機をリースしている。

米国の製造業景況感・失業率・品目別輸出など

近々の米国経済は、全体としては復調気配にはあるが、本来の状態には程遠い。そのマイナス要因としては、製造業の景況感が好景気・不景気の節目である50を行ったり来たりを繰り返し、特に製造業のメッカであるフィラデルフィアの数字が弱い。さらに、輸出を見ても外部環境の影響が大きく、債務問題で揺れる欧州だけでなく、中国向けの輸出が明らかに鈍化している。かろうじて南米向けの輸出で保っているだけだ。

逆にプラス要因は個人消費が堅調な点で、2012年後半はハリケーンの影響で低迷しているものの、自動車と住宅・建物用の建材が好調だ。住宅価格も底打ちし、新築住宅着工件数も反転しかけているのも支えの1つだ。失業率も改善傾向にある。今まで就職を諦めていた人が、米政府の失業給付延長の期限切れを見越して、就職意欲を取り戻しているため、上下はあれど回復基調なのは間違いない。

次に、他社の米国ハイ債型の投資信託(純資産ランキングで上位)と基準価額・手数料・信託報酬・利益(利益=分配金-手数料-信託報酬-信託財産留保額)・分配利回り等を比較した。加えて、基準価額の増減も加味して3年後に100万円が赤字か黒字か?を計算した。その場合、過去1年間の基準価額の増減が今後3年間も繰り返し、分配金も現状維持と仮定した。 計算上は「前年比で基準価額がマイナス5%なら、1~3年後も5%ずつ減額すると仮定し、3年分の分配金を足すと元金100万円はプラスか?」※増減率は基準価額が1年前から何%下落したか?を表す。一般的な騰落率とは異なる数値。

商品名 フィデリティ
USハイイールド
ファンド
野村
米国ハイイールド
豪ドル
野村
米国ハイイールド
レアル
PIMCO
米国ハイイールド
レアル
イースト
米国高利回り
社債
基準価額 4,834円 11,192円 7,632円 6,787円 4,877円
増減率 +1.5% -1.4% -13.6% -11.9% +10.7%
手数料 1.7% 3.0% 3.0% 3.0% 2.0%
信託報酬 1.58% 0.88% 0.88% 1.60% 1.65%
信託財産
留保額
0% 0.5% 0.5% 0% 0.5%
分配利回り 15.8% 20.6% 22.7% 24.9% 3.3%
3年分の
利益額
456,907円 581,917円 646,147円 717,639円 73,132円
100万で3年運用
※基準価額
増減考慮
1,502,297円 1,541,748円 1,290,536円 1,400,305円 1,431,184円?
最終予想
利回り
14.5% 15.5% 8.8% 11.8% 12.69%?
米国ハイイールド債型の投資信託の比較表(フィデリティUSハイイールド・野村 米国ハイイールド豪ドル・野村 米国ハイイールド レアル・PIMCO米国ハイイールド レアル・イーストスプリング米国高利回り社債)

上図で「イーストスプリング米国高利回り社債」を他社比較したが、まずは基準価額が1年前の2011年12月の4,404円から10%近く上昇している点に驚かされる。ただし、前掲の基準価額チャートを思い出してみると、これがフロックであったと分かる。偶然にも凹んでいる箇所との比較となっただけだ。また、これだけ長期スパンで下落傾向にある中で、これから上昇に転じるというのも考えにくく、それを可能にするのは至難の業だ。前述の偶然性と、減配した分を基準価額に充当した結果の上昇といっていいだろう。分配利回りは減配により3%と低く、分配金を小遣い代わりにしたい退職エイジの人には厳しい。最終予想利回りでは12%と良い数字になったが、前述の通りの要因が重なっただけで、実情は1~2%を維持できれば御の字といったところか。

結論としては、さすがに今からの購入はオススメできない。もはや消え行く投信の1ついえよう。繰上げ償還(事前に定めた運用期間の前に、投資信託の運用を終了すること)は、総口数が20億口以下となるため、まだ時間はあるが、それも視野に入ってくるのは目に見えている。現在保有中の人は、自分の資産運用で区切りの良いタイミング(確定申告など)や、他に良い投信が見つかったタイミングで解約・乗り換えに移った方が賢明だ。