損害保険 解説・用語集

自動車保険の対人賠償の平均額は?

自動車保険の対人賠償の平均額だが、まず被害者が傷害に留まる場合は約60万円と考えていい。これは、損害保険料算出機構が公表している自賠責保険で支払われた額の推移(下図の折れ線グラフ)からして、ほぼ間違いはない。問題になるのは、死亡事故(重度の後遺障害を発生させた傷害事故)が問題となる。

自賠責保険で支払われた傷害に対する賠償金

まず、抑えておきたいのは、上図の死亡事故で支払われた自賠責保険の平均額が2,400万円という点だ。保険金の平均額が上限の3,000万円に達していないため、この点から平均額は2,400万円とも考えられる。しかし、自賠責は3,000万円以上は支払われないため、それ以上の賠償金額を加味した平均額とはいえない。

なぜなら、自賠責に限度額があるため平均で3,000万円は超えないが、任意の自動車保険を加算して2億円の支払い件数が多ければ、実質的なトータルの対人賠償額は3,000万円を超えることも考えられるためだ。そのため、死亡事故の認定額(治療・葬儀・逸失利益・精神損害の合算)、すなわち自賠責と任意自動車保険の合算で、死亡保険金として支払われた額の比率を考慮する必要がある。

自動車の死亡事故での賠償額の比率

上図の円グラフが、その比率を示している。自賠責でカバーされる3,000万円以下が約42%を占め、残りの58%が自賠責ではカバーできない4,000万円以上となっている。そして、それぞれの比率の最大値(円グラフで2,000~3,000万円なら3,000万円を採用し、5,000万円以上は1億円を採用)で平均値を出してみる。すると、その平均値は約4,800万円となった。そうすると、あくまで計算上の数字だが、任意の自動車保険の価値は、自賠責保険の3,000万円を差し引いた1,800万円の価値しかないように思える。

また、別年度のデータでは1億円以上が賠償額となるのは、死亡事故の賠償額全体の1.6%の比率でしかない。現在、自動車保険の対人賠償保険の契約台数の比率では、保険金額が無制限の契約をしている人が99%と大半を占めている。そこまでの価値があるかは数字上では疑問だ。自動車会社が無制限という被保険者には耳触りの良い文言を使いたいだけという憶測も立つ。

しかし、自動車事故自体が万が一の確率と言われている中で、自動車事故を経験した人は周りには多いはずだ。そう考えれば、確率上では僅か1%の確率でも1億円以上(2億円近く)の事故を起こしてしまう可能性は、実感では数字以上に高いのかもしれない。

また、死亡事故ではなく後遺障害を残す事故の場合は億単位になる可能性も高い。現に、高齢者が巻き込まれている自動車事故が増加している中で、後遺障害の対象となる事故は増加傾向にある。やはり、あくまで確率は確率として、やはり任意の自動車保険に加入するしかないだろう。。。